会場:パピオビールーム 大練習室
チケット料金:チケット料金:2,800~700円
上演時間:約90分
公演の説明
キビるフェス2021の参加作品(https://kibirufes-fuk.localinfo.jp/posts/11268334?categoryIds=3687747。)
福岡の劇団、モノクロラセンが東京の劇団・時間堂の作品を作者:黒澤世莉氏を演出として招き、昨年9月からのWSを経て選ばれた福岡の俳優のみで構成されたプロデュース公演。
あらすじ
1963年1月1日、日本で初めての国産TVアニメ「鉄腕アトム」の放映がはじまる。
原子力で戦うロボットの活躍は子供たちの心をつかみ、最高視聴率は40%を超えた。
1963年3月30日、新幹線は試験走行で256km/hの国内最高速度記録を達成した。
科学は人類の進歩の証であり、平和をもたらす万能薬だと思われていた。
1963年10月26日。日本で初めて原子力による発電が始まった。
感情さえ制御できない程度の論理で、核分裂を制御しようとする人間たちの喜劇。
キャスト:
五十嵐晴香(ジャカっと雀)
進藤祐行(劇団ひまわり)
すすみななみ(演JOYユニット Hungry)
戸塚有輝
富田文子
一凜
東亜由美
森唯美(劇団言魂)
大城真和(Aプロ)
上条拳斗
篠田昌人(ピロシキマン)
立石義江
東沙耶香(劇団ショーマンシップ)
以下:雑感
とてもおもしろかった。
初モノクロラセン、初時間堂の作品。事前情報なしでまっさらな状態で見れました。とはいえプロデュース公演なのでモノクロさんの作品見たかと言われると微妙ですが…。
2014にぽんプラザに来た時は見逃したんですよね。惜しいことをしました。
舞台は大練習室のど真ん中に黒パンチでエリアを作って、その上に一辺3メートル、高さは1メートルくらいかな(?)の立方体が置いてある。ちょうど菱餅みたいな。
基本のアクティングはその立方体の上。その大きな箱の頂点が一つこちらに向いている。
立方体を囲んでイントレが4本くらいあったかな。
出はけ口は立方体のカミシモ。主に下手側だけ使っていて陰に階段。そこから降りて後方にたまりがあったようです。
アクティング上には大小・形さまざまな箱はたくさんあって、芝居中はそれらを組み合わせてテーブルやパソコン、計測機器などに見立てる中小舞台。
カラーリングは全体的にグレー。
舞台の最後には積み木のように重ねてタワー、核融合炉の制御装置かな。結構な高さまで作って天辺まで役者さんが登ってました。
クライマックスは視覚的にも盛り上げていってくれて最高でした。
過去の上演でもこうだったのかな?
*****
通夜から始まるある老人の昔話。「わしは日本を救ったんじゃ」という彼の一言から、舞台は彼の若いころ、1960年代の原子力研究施設へ移る。
そこで起きた事故の公表をめぐって研究チーム内で意見が割れてしまう。
「原子力」というテクノロジーの是非、日本人の気質、エネルギー問題、人間の善悪とかモラルとか。などなど。
研究チーム・人間同士の衝突、研究者と一般大衆の分裂、それらを乗り越えて目指す融和(融合)などと、
原子力関係の粒子の衝突、現行の核分裂発電、主人公の目指す核融合などとが
ダブルミーニングになってタイトルになっているみたいですね。素敵タイトル。
*****
研究チーム6人と近所の小学校の先生、胡散臭い国会議員で喧々諤々言い合ってる会話劇。
キャラクター一人ひとりの意見や主張というか、信条がくっきりしていて聞いてるだけで楽しい。
原子力関係の専門用語や普段聞きなれない単語もポンポン出てきますが、登場人物同士の立ち位置や目的もわかりやすいのですんなり入ってきました。
俳優さんたちの技量もあるでしょうが、脚本のパワーが大きいかなと感じました。
これを書き上げるのにどれくらいの準備があったんでしょうか。
ドウモト役の上条拳斗さんやナマリ役の富田文子さん、ギンザ/キンシロウ役の大城真和さんの三名が特に好きでした。
熱が入っていく議論が見てて楽しく、段々と見入っていってしまいました。「七つの会議」とか思い出しました。
客席位置的にキンシロウと話していらだっていくドウモトの反応の推移が面白かったです。細かすぎるけど。
結局いくつかある議題(テーマ?)の結論は作中では明確にはされなかったけど、沢山考えることができてよかった。
なんとか現実にもこの議論を持ち込めたら、我々の世界も何かが変わるんでしょうか。もう色んな人たちがしてるんでしょうが。
もっとたくさんの人に見て感じてほしい作品だと思いましたね。
作者さんは本当に色んな視点を持ってらっしゃるんだろうなぁ。
楽しい観劇でした。
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プロデュース公演だけあって俳優さんたちのスキルにバラつきがあったのが少々辛かった。
9月からの企画で稽古不足ということもないでしょうが、会話劇になると俳優同士の地力が露骨に見えてきますね。
特に後半昂ってくると、なんと喋ってるかわからない方もチラホラ。台詞の応酬の中で一人いると気になってしまいます。
全体的に台詞の噛みが多かったです。1人一回は噛んでたんじゃないでしょうか。それが結構集中を妨げることが多くてキツかった。
プロデュース公演の弊害というんでしょうか。場転時のボックスの移動一つ取っても、意識してる人としてない人とでキレの違いが見えました。
脚本・演出・俳優。全体のレベルが高かった分、小さな粗が目立ってしまったような感じでした。
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しかし9月からの長いスパンの企画で、これだけのメンバーを集めて公演をやりきったのは素直にすごいですね。
HPを見たところ、モノクロラセンさんの正規メンバーさんはほぼいないようですが、また似たような企画があれば追ってみたいと思います。
久しぶりの観劇でしたがとても良い時間でした。
今月末は公演数も多く、喜ばしいですね。これからもまた盛り上がっていってほしいです。