観劇・感想

観劇感想:今夜、アラビアータの横でペスカトーレ「本とはね」

作/演出:川口大樹
会場:SRギャラリー
チケット料金:2,000~3,000円 ※配信チケット:2,000円
上演時間:約70分(各短編約20分)

公演の説明
福岡の新しい演劇ユニット「今夜、アラビアータの横でペスカトーレ」の旗揚げ公演。作・演出に万能グローブガラパゴスダイナモスの川口大樹氏を迎えて上演される。コロナの影響で一度延期したうえでの再上演となる。→団体Twitter
あらすじ
各短編ごとに記載
キャスト
三好美優 清水淳平 マコヒト

以下:雑感

つまらなかった。作演の川口氏はメチャクチャ面白い時との落差がデカい。そもそも台詞噛み過ぎ。旗揚げ公演ってもっと気合入れて臨む物じゃないのか?所々イントネーションもおかしい。キャスト陣は各々芸能歴は長いはずだが、稽古にはあまり身が入ってなかったんだろうか。どの短編も空気が浮ついていて締まりが無い。Twitterで見受けられるような軽いノリのまま稽古していたのだろうか。

テーマが「本」と「読む」ことだからだろうか。ドラマチックな設定や展開も口頭説明に頼り切ってる結果、観ていてなかなか入り込めない。リーディングでやったほうがよかったんじゃなかろうか。役者の未熟さも相まって、舞台上と観客で温度差が生まれている。

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舞台は大名のSRギャラリー。狭い空間に脚の長い丸テーブルが三つ。椅子が三脚。衣裳なども舞台上に掛けてあって転換や着替えも観客に見せていくスタイル。テーブルの配置が変わるだけで基本的に座り会話劇。

『あいつ』

あらすじ
浮気相手の男は身長3m20㎝!?友人からの相談にはどうにも違和感がある…。ついには探偵にまで依頼して恋人を調べる友人だが「3m20㎝」は全然気にしてない。知らない間に常識が変わったのか。どうやら異世界にでも迷い込んでしまったようだ……。

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初っ端の3メートル。のところで笑いが全然起きてなかった。空気全然あったまってない序盤から地味に差し込まれたので、「これ笑っていいのかな」みたいな空気。全体観終わってから思いましたが、掴みの身長ギャグが刺さらなかったら地獄だなぁこれ。

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カタい。空気が。芝居もカタい。妖怪?異世界ジョーク。理解するのにもある程度事前知識というか、教養が必要な類の話で、ほぼ”ナチュラル風説明セリフ”で構成されている。飲み込むのに1クッション2クッション脳内で挟まるので構造的に没入が難しい。演技力が未熟なこのキャスト陣では尚更のこと。妖怪のことみんなそんな知らんではないか。
ドラマとか漫画向きのお話しなのでは。ビジュアルで明確な違和感を表現できてこそ、強みが活きてくる物語だった気がします。演劇での言葉だけでは難しい。狙い通りの笑いは全然起きてなかったのではないでしょうか。

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大きな的を狙いすぎて目の前のツッコミどころを逃してしまっている。ギャグにならない違和感が残されてしまって余計冷めてしまった。特に「砂かけるぞ!」という返し。「3m20㎝」にツッコむ主人公ならスルーするわけないと思うんですが、構成で決まってるところまではノータッチ。なんで?尺の制限があるでもなし。

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拙くて恐いまで行けない中途半端なホラーでした。台詞を噛むな。

「隙間」

あらすじ
死んだ小説家の妻が持ち込んだ新たな一冊の本。平凡な新作かと思いきやそれには死んだ先生の本当の人生、そして小説家を取り巻く人々の今後の展開が全て書き記されていた。

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暗い。暗いのになんか悲壮感はないというか、俳優たちが暗そうな音色を出してるだけでこれまた上っ面な芝居に見えた。一作目同様、驚きや恐怖が全て説明されるので感じるより考えてしまう。というか余計な言葉が多過ぎるのでは?持ってる知識を活用したいんだなというのは伝わるんだが小説読んでるのではなく演劇を観にきてるので思い切って略してもらったほうがよかったかもしれない。私の感覚的なことだが、どこに焦点が当たった物語なのかピンとこなかった。

細かいが、ドアを開けたら雨音が入る。みたいな部分は徹底してほしかった。その辺の細かなルールにこだわるか否かでかなり完成度変わると思うんです。役者は台詞を噛むな。

「本とはね」

あらすじ
天使たちの仕事場。生まれる前の人間になんらかの才能「ギフト」を与え、その一生を得点化。天使たちはその結果で評価される。高得点を目指す三体の”Sランク”天使たちの空回りと、それに振り回される人間のドタバタ輪廻転生コメディ。

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なんだあのリアルクッキングは。全部持っていかれたわ。普通にわからない。妙に尺とるし。「本とはね」っていうか「生姜焼き」って感じだ。どういう効果があったのよあの時間。本だろ。どう考えても使うのは。点数書いてあっただけで全然印象に残ってないぞ。よしんばなにか出すにしてももっとあったんじゃないか?あの4人の間で何生分も積み重なったものが。天使の輪っかとかランクのバッヂとかしょうもないところにこだわりすぎて見失ってないか。

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高慢な天使を人間に近づけて堕落させるのが目的?考えすぎですね。

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ギャグも、出してから笑いまでが長すぎる。冗長とはまさにこのことか。三作品全て語りすぎてる。そして役者陣は噛むな。もう、こんなアホみたいなこと思わせないでほしい。金払って観劇しに来て短編三つ全部台詞噛み倒すとは思わなかった。一個も完璧にやり切らないとは。恥ずかしいと思わないのか?延期してまで行なった旗揚げ。期待して観に来てとんだ肩透かしでした。