観劇・感想

観劇感想:78-spirit performance#3 音楽劇「魔女のおっさんの宅Q便」

作:川津羊太郎 演出:椎木樹人
会場:ぽんプラザホール
チケット料金:3,300~6,000円
上演時間:約120分

公演の説明
78-spiritの第三回プロデュース公演。今回も福岡の若手からベテランまで多数出演している。演出は万能グローブガラパゴスダイナモスの椎木樹人氏。
あらすじ
「なあ知ってる?あのおっさん、魔女らしいぜ」
そんな噂を風にきく。ある日、某ECサイトの巨大倉庫の密林で遭難したおっさんたち。自立駆動する収納棚、暴走する人工知能、崩壊する街、そして謎のモールス信号!マジョハダアレダ?戦力外の烙印を捺されたおっさんたちの脱出劇がいま始まる…かも!?   ※チラシより
キャスト
手島曜 小沢健次 到生 石村英美子 ともなが舞 落合涼香 立花恭平 手嶋萌

以下:雑感

とっても面白かった。俳優さんたちがかなり自由に遊び回っていて観てて楽しい。分類的にはシットコムになるのかな?ゆるめの雰囲気にホラー要素も含んだしっかりしたSFコメディでした。AIと人間の情。テクノロジーとシンギュラリティ。細かい映画ネタも個人的に刺さりました。

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舞台は架空の流通企業の巨大倉庫。イントレで組まれたアスレチックのようなモチーフと、カミ手には三段組の巨大なシェルフ(棚)。幅一間くらい高さはぽんの床から天辺まで。下2段には木組のコンテナが積まれていて、最上段は役者が上がる小さなステージになっている。シモ手側奥には一際大きな赤いコンテナが置いてある。床面はリノリウム。

まさしく崩れかけた巨大倉庫って感じ。IKEAとかのアレのイメージ。木箱は原色が多くてLEGOブロックみたいでかわいい。装置もこだわりが見えてグッドです。

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なにより役者が楽しそうで最高。導入から中盤までのしっちゃかめっちゃかな掛け合いがとにかくおもしろい。ずっと見ていたくなる仲間たちでした。私見ですけど、みんな”わかって”ふざけ合ってるのが心地いいですよね、演劇として。全員がちゃんと空間を作ろうとしてるというか。

ちょっとダメ寄りのそれぞれの個性も光っていてキャストにドンピシャ。当て書きかと思うくらいバッチリなキャスティングでしたね。

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小沢さん最高ですね。パワフル!掛け合いではツッコミが超重要。大騒ぎして舐められてる風のキャラでしたが、勤め人としてのクールさも垣間見えてとてもいいおっさんしてましたね!

ともなが舞さん。傍若無人っぷりがとてもいい。極めて個人的な尺度ですが暴言をちゃんと言える俳優さんは大好きです。吠えられる女優最高。最近女優に言えてない汚い言葉を吐かせる芝居ばかりだったので余計に良かったです。歌もダンスも素敵でした。

到生さん。一番フリーダムっぽくて一番周りや空気を読んでいたような印象です。目立たないフォローのようなものがあったのかも?

立花さん。ラップもできるんですね。また新たな魅力を知ることが出来ました。

手島曜さん。ふわふわしてるようでなんだか怖さもある芝居でしたね。

手嶋萌さん。笑い声怖!この芝居で唯一の人外にしてキーマン。不気味でキュートなビジュアルも良きでした。

ガチャガチャな個性が全員活きていて自然とキャラクターを飲み込めたのも、キャストそれぞれの技量と演出の調整のおかげでしょうか。少々難解なSF設定もわかりやすくまとめられて見やすかったです。所々役者パワーで無理やり(?)乗り切っていたのも好感が持てました。道具や装置に頼り過ぎない手法、大好きですね。シェラフとか仮想空間とか。

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会話のテンポも熱量も申し分ない。とはいえ欲を言うともう1段2段ギアが高くてもよかったのではないだろうか。何人か喉にキテたようで、それもあってか細かいブレーキがかかっていたように見えました。この熱量の音楽劇をゲネも含めて何度もやっていれば無理のないことかもしれませんが…。

中盤の説明パート。構成上仕方ないことだと思いますが、明らかな中だるみを感じました。前半の盛り上がりの余熱でなんとか滑ってきた感覚でしたが冷めた(しらけたわけでなく)瞬間が自分の中で明確にありました。その後もなんか、うまく言えませんがもっと上げることができたんじゃないかという。いやホントに面白かったんですけど、面子や物語を考えたらもっといけたんじゃないかななんて。

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脚本が強いな〜。とても面白い。しかし、かなりキャストと演出を選ぶ脚本だったなと。物語の構成やテーマが素晴らしいのはもちろんなんですが、誰がするか。どう見せるかで180度印象が変わることもありうるなと思いました。

今回かなりハチャメチャ楽しかったんですがこれ無難に作ったらめちゃくちゃ辛気臭くなりそう。当て書きしたんでしょうか?

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中盤「Q」による欲望勾配の具現化世界(VR?)の表現。あそこ上手いですねぇ脚本構成が。びっくりしましたよ。

前4人で”入る”ところを見せておいて、究太郎のターンでは既に入っている。遡ってこの物語のスタートから実は…な展開。

観てる世界の枠組みの拡大、縮尺する感覚が気持ちいい。立っている足元が揺らぐ感覚。「インセプション」みたいな。入れ子構造ですかね。急にワープゲートにぶち込まれたみたいになって変な快感があります。

作家の川津さん、映画などなど色んなことに造詣が深いんでしょうか。序盤の彷徨うシーンでも「ビバリウム」の名前が出た時はちょっと嬉しくなりました。めちゃくちゃわかりやすかったし。面白いですよね、「ビバリウム」。

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音楽も全部よかったですねぇ。音楽劇って配分とかかなり難しいと個人的に思ってるんですがちょうどよかった。やりすぎるとミュージカルになっちゃうし(違いはわかっていない)

手島曜さんはかなり音楽にこだわりがあるようですし、ラストの熱唱も胸にきました。音楽劇もっと増えていいな福岡。難易度高そうですが。

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終わってから関係者さんのコメントなど拝見しましたが、脚本読んでみたくなりました。78-spirit、夏から続いてクオリティが高い演劇が続きます。「おっさん」と自嘲されてますが、まだまだ見せてほしいです。次回も大変楽しみにしてます!