観劇・感想

観劇感想:万能グローブガラパゴスダイナモス西鉄ホール進出公演「この中に裏切り者がいますよ」

作/演出:川口大樹
会場:西鉄ホール
チケット料金:2,500~6,000円
上演時間:約130分

公演の説明
福岡の劇団・万能グローブガラパゴスダイナモスの初の西鉄ホールでの公演。2012年の同名タイトルの再演作品となる。福岡の他劇団からの客演、タレントなどが多数参加している。
あらすじ
とある田舎のお屋敷で、若者たちが右往左往していた。彼らはこのうらぶれた田舎を、盛り上げるために立ち上がった。ダメ元でメールしたらテレビの人も来た。バズりそうなエピソードも考え(捏造し)た。そう、一丸となり、全ては、秘密裏に進むはずだった。だが・・・。
乱れる団結、合わない呼吸、誰かのツイート『秘密の計画なう』。情報、漏れまくり。そして気づいた。この中に・・・裏切り者がいる?
次々明らかになる、本筋と全然関係ない真実!巻き起こる、起こらなくていいドラマ!ガラパがおくる、足並み揃わぬスラップスティックコメディ。10年ぶりの再演。全編、乱れに乱れた足取りでお届けします
※公式サイトより
キャスト
椎木樹人 友田宗大 古賀駿作 脇野紗枝 千代田佑李 
寺田剛史 原岡梨絵子 岸田麻佑 そよかぜましお 土居祥平 関岡マーク 杉山英美

以下:雑感

とても面白かった。終盤のたたみかけがすごい。ベテラン勢の作った盤石な地盤のもと自由に、しかし精密に積み上げていった流れが収束していく様は快感すらある。そしてやはり全体での”空気”の操作が上手い。コメディ要素も舞台空間まで余すことなく利用して味が濃い。からくり屋敷みたいなギミックがシンプルに楽しい。めちゃくちゃ笑いました。西鉄ホール進出に相応しい公演だったのではないでしょうか。

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舞台はとある田舎の屋敷。西鉄ホールのステージを縦幅目一杯立て込んだ巨大な日本家屋。一階は畳張りの広めの居間みたいな空間。2階には隠し部屋があり、普段は隠れている。シーンごとに壁が透けたり開いたりして中の部屋が見える。設定上は平屋なんだろうか?カミ手の押入れの中やシモ手の箱タンスは階段になっていて二階部分に上がれるようになっており、カミ手押入れの中も天井部分に穴が開いており上に上がれる(マリオ的な)。家の外、シモ手側には庭があり地蔵が置いてあり、屋敷と繋がっていたり…。その他忍者屋敷のように舞台各所に隠し通路があり芝居の進行に従って明かされていく。それがもう見てるだけでも楽しい。

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いやー楽しい。ガラパのコメディ観た〜〜って感じの充足感。なんかこう、「今のガラパ」がまた一段高まってきた感じありますね。役者間の信頼が強く感じられた気がします。フランクな会話ですが信頼関係から生まれる濃いエネルギーが充満していて素敵です。後半事態が転がっていくにつれ上がっていくボルテージが心地良かった。全員がその場の空気をしっかり意識してるのがとても良い。

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キャラクターとしても全員が全力でスレ違い空回りしていく様が面白い。客席の笑いの圧もすごい。ギャグとしては時羽(杉山英美さん)の地蔵周りが一番好きでした。ほっぺた痛くなりました。ケイタロウ(椎木樹人さん)のちょっと柔らかい性格が好きですね。椎木さんは圧の強い人物の時より好みでした。コズエ(古賀駿作さん)の必死さ、真剣さ、誠実さがいい。応援したくなります。結果諸悪の根源(?)だったり、ちょっと抜けてるところも愛おしい。そして何より藤倉(寺田剛史さん)めちゃくちゃすきでした。低いトーンで出てくる様々な音色がとても魅力的でした。
ケイタロウもですが、生存のための仕事と生きるための仕事って違いますよねぇ。自分が大事にしてる所が認められて嬉しくて、言葉に出来ず高まっていく感じ凄いよくわかって。こっちまで「あ〜〜〜〜〜〜!!!」ってなりました。”まだ名前のついてない感情”ってすごい素敵なセリフ。ここだけで満足感の半分は担ってくれているくらいキました。個人的に。「人生の雨宿り」も良い。
今回は「笑い」が特に強力でしたが、この辺りのテーマがガチガチに決まってたのもあるかなと。骨組みがしっかりしてて安心して笑えました。

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やはり”クツワダ”だ。
この街が出てきたのは近年からだと記憶しておりますが初演時もこういう設定だったのでしょうか。スターシステムじゃないですが、世界観の繋がりは気づくと楽しいですね。ガラパ・バースとでも呼ぶべきか。否か。

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とてもおもしろかった。けど…。
「けど」が最後まで拭えない公演でもありました。130分は長い。マジで。よく言えば丁寧。悪く言えば悠長。団体や出演者のファンなら問題ないのでしょうが、序盤からの緩やかなエンジンのかかりでは観る側にかなり集中力が求められますね。寝てる人もチラホラ…。頭から終わりまでの、散らばったラインの収束がこの手の話の肝だと思うんですが、裏を返せば最初に掴み損ねた人は復帰が難しい。中〜終盤の盛り上がり方は最高なんですがすごく疲れました。「あっというまの2時間」とはいかなかったです私には。
あとこれはガラパさんでいつも思うんですが、終演後カテコでのゆるゆるの物販宣伝コーナーはなんとかならんのでしょうか。あのアットホームな空気が好きな方もいるんでしょうけども、芝居の素晴らしさに比例してガックリがすごい。文字通りの興醒め。毎度探り探り感が出ててキツくなってしまう。瞬間で現実に引き戻されて辛い。素晴らしい余韻に浸ったまま帰りたかった。
しかしグッズは全部可愛かった。

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17年にもなるガラパさん。ここにきてまたひとつ熟してきた感じですね。そして次回は川口大樹さんの完全新作。これまた期待大。これまでを全部過去にするくらいの傑作を楽しみにしてます。はー面白かった。