観劇・感想

観劇感想:ZILEMMA THEATER FES「山笠キックボーダーズ」

作/演出:浅野康之 音楽:オレノグラフィティ
会場:西鉄ホール
チケット料金:3,500~4,900円
上演時間:約130分

公演の説明
福岡出身、劇団鹿殺し・トイメンの浅野康之氏によるプロデュース公演。俳優を始め、アイドル・お笑い芸人など福岡の多種多様なアーティストが集められた3日間の大エンタメイベント。12/8にはライブステージ。公演は12/9、10に西鉄ホールにて行われた。
あらすじ
天神ビックバンにより再開発途中の福岡の街並み。馴染みのあった建物は取り壊され、跡地に吹き抜ける冬本番の風は一層街を青く染める。博多祇園山笠の一大イベント「追い山」をこよなく愛する中村霞は悪性リンパ腫を患い人生最後になるであろうクリスマスを迎えようとしていた。山笠の舁き手で霞の父でもある一茂は娘のために何ができるか思案していた。時を同じくして福岡に舞い込む謎の集団「キックボーダーズ」からの襲撃予告。様々な想いを抱きながらも行動を共にする「キックボーダーズ」の目的とは………。
個性豊かなキャラクター達が福岡と博多の街を駆け抜ける‼︎可笑しくも悲しい「季節外れの山笠、人情群像劇‼︎ ※公式サイトより
キャスト
田島芽瑠 椎木樹人 大神拓哉 高雄さやか 上瀧雅大 中村豪志 友田宗大 山本由貴 清水淳平 脇野紗衣 心乃音 樅山幸音 八坂桜子 坪内陽子 松尾悠花 塚田リョーヤ 黒河総司 SHO-TA

以下:雑感

いまいち盛り上がりきれなかった。物語としては結論ありきの粗い展開だったように思いました。音楽とドタバタの勢いで無理やり楽しくさせられた感。ダンスや歌など個々のパフォーマンスはとてもよかった。これだけのバリエーション豊富なメンバー・セットで企画をまとめる企画力、構成力はすごい。季節外れの祭りを楽しませていただきました。第二弾はあるかしら。

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西鉄ホール。舞台と客席の高さに差はなく、黒パンチで半円状に堺が引いてある。「inher」と同じ感じですね。天井からは提灯が沢山。カミ手に高さ違いの矢倉が二つ。奥の高い方の上には病院のベッド。手前の低い方は移動式になっていて裏返すと山笠になっている。下手にバンドセット。出演者も兼ねている「Theコットンクラブ」による生演奏が行われた。舞台カミからシモまで貫いて大きな橋のようになっている。出会い橋みたいな。台詞からリバレイン下川沿いの公園のイメージなのかな。大きなスロープがあったりトンネルがあったり、大きく立体的で見るだけでワクワクする迫力のあるセットでした。
思ったより客席まばらだ。この回だけかな?

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物語の主軸、”クリスマスに山笠を走らせる”ということに対しての描写が薄かったような気がします。

ゴリゴリの犯罪に手を染めながら強行するラストランは正直「なんでこいつらここまでやってるんだろ」という気持ちで見てました。発起人であるオジサンと動機である娘の山笠にかける思いの描写こそ尺を割いてほしかった感じだが、周辺のエピソードが多すぎて感情移入する箇所を見失ってしまった。特に中洲の女周りはそこまでいらなかったように思う。”夢は叶う”、”どこにでもいける”みたいなこともテーマのひとつではあったのではないかと見たが、散らばりすぎて全てが薄かった。

プロデュース公演にありがちな、全員に見せ場を作ろうとして結果全てがフニャフニャになるいい例だったのではなかろうか。おかげで舞台上と客席の温度差がすごかったです。

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肝心の山笠がショボすぎる。舞台装置あんなにカッコよく作ってるのに肝心要の山笠が……。出てくるまでの描写的に納得のいく出来栄えではあったのだがタイトルに冠してるほどの物がいざ出てきてアレでは拍子抜けもいいところ。とても”福岡の山笠”をリスペクトして作ったとは思えなかった。「変わりゆく街の中でも遺したい文化がある」ということも言っていたと思うけど、あの程度ならやらなくてよかったのでは。娘や奥さんへの想いとかの集大成があれでは気持ちもそんな程度かというように感じてしまった。そらヤクザもキレるわ。

そしてキックボード。これも流行ってんのか?申し訳程度に今流行してるという台詞一言だけ。「キックボードを使いたい」という結論ありきで過程がおざなりで説得力や物語における必然性を感じなかった。こんなにエンタメに振ってるんだからもっと大袈裟に嘘ついて流行っててよかったのではないだろうか。あの世界なら普通にチャリやバイクでよかったでしょラスト。

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最後の馬鹿騒ぎ。あそこまでやったら全国ニュースだと思うんですがたかが一年でみんな何事もなく生活してるし。この嘘は雑すぎてスルー出来なかった。フリーターがあんなことして一年で車掌にはなれんでしょうよ。

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暴力がエグすぎる。そしてカラッと忘れすぎてる。やった方もやられた方もサイコパスかよと。全然反省も制御も出来てないじゃないのよ。パンチ一発程度ならまぁまぁ理解できたんですけどあれだけ殴って膝踏み壊しといてよく戻ってこれたな。そしてよくすぐキックボード乗れたな。

この人が暴走族なんだろうなって言うのは察せられてたのに散々引っ張った結果雑なパロネタと適当なアクションで盛り上がりどころもない。あの熱の上がり方でケツ向けてハケさせたら駄目なんじゃなかろうか。暴力が変に生々しい割に切り替えが急勾配すぎてびっくりした。そこはエンタメにせんのかい。

オジサンも奥さん轢き殺した相手の顔知らんとかあるのか?あるのかなぁ。葬式にも謝罪にも来なかったのか?

あの社長は何があってあんなに庇ってるんだろう。横道を沢山描いたおかげで細かい疑問が残ってしまい消化不良。

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ギャグが軒並みつまらない。というか全然聞こえなくて効いてこなかった。東リべのパクリはわかるんですが、旬を逃してるし「へぇ」ってなって終わった。

ところどころ挟み込んでくるワンピースネタが聞き取れない上に意味わからなくてイライラした。なんの勝算があって入れたネタなんだろう。

「あ、大谷翔平」「どこどこ?」って身近に大谷翔平がいる人たちがなるのかなぁ?船乗ってて分裂もよくわからんし。

響かなすぎてもはや差し込んでくる福岡ネタですら嫌。

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アイドルのひとり。芝居がシャバすぎる。ていうか声がちいっっっせぇ。これだけ上等な俳優陣を集めておいて1人だけ全く基準値に達していない。俳優の能力や魅力って演技力だけではないのは承知しているつもりですが、今回は客寄せパンダ以上になっていなかった。パンダ目的じゃない私にはたまらなかった。この座組みがあのクオリティで許容・妥協したという事実だけでもうシラけてしまう。ジレンマってそういうこと?

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バンド演奏やダンス、楽曲は本当によかった。音源ほしい。ラストは台詞と相殺し合っていたけれど生演奏はいいですね。「Theコットンクラブ」さん。初見ですがすごい好きでした。

『ヘキサグラム』はオレノグラフィティさんの曲なんでしょうか?かっこいいですね。5人なのにヘキサ。シンプルですがグッときました。ダンスは全員ほんと上手い。ライブパフォーマンスとしてなら申し分なかったな。いつか個別で観に行きたい。ライブも行けばよかったかしら。

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俳優陣では中村豪志さんと心乃音さんが好きでした。

椎木樹人さん、山本由貴さん、友田宗大さん。流石の安定感でした。

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企画、宣伝、プロデュース、フライヤーや物販とか”ガワ”の整え方がすごいのになぁ。メインディッシュが雑でした。これはすごく個人的な感覚的なものなんですが、出演者の皆さん。私の推しも何人もいらっしゃったんですが、いつも他所で拝見してる時より楽しくなさそうに見えました。役柄もあるとは思うんですがめちゃくちゃいい時を見たことある身としては、舞台上のエネルギーが明らかに足りないように感じました。

まぁ私が偏りすぎてるきらいもありますので的外れな感想かもしれない。

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上半期から期待値が高まりまくっていただけに肩透かしを食らった気分。

しかし前述の通り、この規模の企画をまとめ上げ走り切ったのは本当にすごい。まだまだいくらで高めて駆け上っていけそう。これから福岡にもエンタメにも様々な変化が起こっていくことでしょう。さらなる進化に期待します。