観劇・感想

観劇感想:劇団HAっHAー‼︎ Presents OTONAHAHHA-「【START】ー30minutesー」

演出:後藤香 【劇団GO TO】
会場:リノベーションミュージアム冷泉莊
チケット料金:1,500~2,500円
上演時間:各約30分

公演の説明
登場するのは男女二人だけ。 場所も時間も移動しないワンシチュエーションのドラマ。時間は30分。 短い時間の中で 『愛』をテーマとした男と女の微妙な心の動きが交錯する――。三島ゆき・サタケミキオ(宅間孝行)・蓬莱竜太による大人の恋愛脚本を演出家の後藤香が創造し緻密に織り上げる。30分、3ストーリーの大人なオムニバス。いつもと違う少しOTONAな劇団HAっHAー!! をお楽しみください。
公式サイトより

冷泉荘。L字型のギャラリーの曲がり角の区画がアクティング。黒パンチに黒カーテン。各演目毎に装置は入れ替えていた。L字の両端が客先で、アクティングエリアを挟むように観る形。30〜40席くらい。ほぼ満席。

1『スパイス・イン・ザ・バスケット』
脚本:三島ゆき
あらすじ
画家志望と作家志望の夫婦。別れた二人は3年ぶりに再会を果たす。それぞれ新たな関係を築いたり壊したり。あの日失くしたものと残ったものを二人で料理をしながら語り合う。
キャスト
梶川竜也 【劇団風三等星】 水谷文香

以下、雑感

グレーの装置でバーカウンター風の対面式キッチン。スパイスがたくさん入っている食器棚。CDの置いてある戸棚。そして空のイーゼル。

*****
ベースの喋りや言葉がちょっと「演劇クサさ」がすごくて苦手だった。見る演技も脚本の筋道を辿るために生理的な反応が遅れたりとか”嘘”が目立って私にはすごくノイズになってしまったな。ワイン開けたりとか。絶対もっと早く止めたよね性格的に。脚本に動かされてる部分がちらほら見えて嫌だったな。
そんな感じの少し違和感の残る会話のせいで、決め手のスパイス周りのクダリもちょっと際立たなくて入ってきにくかった。二人とも芸術家だからちょっとずれてるのかな。

お互いがお互いをわかってるようでわかってない。わかってないようでわかってる凸凹感がいい関係。旦那の方もめっちゃキレてるけど追い出しきれないのも、ほかに頼る所の無い元妻の甘えを受け入れてるが故なのか。わかりにくい優しさがいいですね。

2『結婚相談所』
脚本:サタケミキオ(宅間孝行)
あらすじ
結婚相談所に努める女性。相談に来たのは高校の時憧れていた先輩だった。しかし職務上思いを告げるわけにもいかず、「心の悩み相談室」に電話をかける。しかしなんとその相談員は先輩だった。お互いをお互いと知らず再び惹かれ合っていく、すれ違いラブコメディ。
キャスト
角野優子 【劇団 96 文字】 川嵜圭太

以下、雑感

白カーテンでテーブルが二つ。一転清潔感のある感じ。テーブルが二つ。

*****
細かいギャグが楽しい。が、いまいち爆笑までいききらないのももどかしい。二人の恋のようだ。
もっとテンポが速い方が全体のめり込めたんじゃなかろうか。二人のすれ違いが構成のキモなわけで、入れ替わり立ち代わりがもっとスピーディになったほうが好きだったかも。移動のタイムラグは仕方ないだろうか。

高校の学年違いのわりに二人の見た目年齢に結構差があるように見えたのも違和感あった。「あんなに素敵だった先輩が~~」というギャグにするには見た目ちゃんとしてて振り切れてなかったかも。三作品の中では一番コメディに振ってたから笑いの部分でもっと突き詰めてもらった方が好きだったかも。

3『 兄への伝言』
脚本: 蓬莱竜太
あらすじ
弟の葬儀に東京から駆け付けた兄。幼馴染でもある弟の妻との昔話。
キャスト
本多陽彦 清水さなえ

以下、雑感

葬儀が終わった夜だろうか。並べたパイプ椅子と仏壇。お茶などが置いてある小棚。

*****
一番良かった。ナチュラルな会話と雨の空気感でしっとり進行するお話。二人の雰囲気も良い。一番「大人」な空気感だった気がする。敬語からため口、また敬語と変わる口調と心情がもどかしくてかわいい。
すごく上質な会話劇を観た。自分の語彙が無さすぎて良さを言いきれないのが悔しい。

*****
三作に共通するテーマは「愛」というより「喪失からの立ち直り」とかの方が私はしっくりきたかな。どれもしっとりした質感。見応えがありました。
それぞれが今と向き合うことで、過去の意味が変わり、未来へ向かっていく。企画構成がとても美しい良質な短編集でした。