原作:太宰治 作:大谷豪 演出:こぺし(サンピリ)
会場:末永文化センター 2Fギャラリー
チケット料金:1.000~1.500円
上演時間:約60分
公演の説明
太宰治の命日、桜桃忌に合わせて製作された演劇。福岡の映像製作団体・NPO法人博多映画道場の公演。
あらすじ
羊飼いメロスは、人間不信のディオニス王を怒らせた罪で処刑されるまでに三日の猶予を申し出て城を出る。
戻らなければ代わりに処刑されると知りながら人質となった親友の固い友情に応え、
王に信頼することの尊さを悟らせるためメロスは走る。
太宰治の短編小説「走れメロス」創作のきっかけとして、熱海の宿での壇一雄と井伏鱒二との逸話がある。
太宰から宿代のカタに置き去りにされた壇が東京に戻ると、太宰は呑気に井伏と将棋を指していた。
怒った壇に詰め寄られた太宰は、「待つ身が辛いかね。待たせる身が辛いかね。 」と逆に問答を吹っかけたという。
キャスト
大谷豪
中島信和(兄弟船)
横山裕香里(万能グローブガラパゴスダイナモス)
以下:雑感
面白かった。けど…、結構独りよがりな芝居の作りだったように思いました。
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舞台は福岡市城南区にある末永文化センターの2Fギャラリー。
劇場などではなく、普段は絵画の展示などを行っているスペースのようです。
床面は備え付きのカーペット。会場に入って奥側に四畳半くらいの広さのゴザ。
上にはテレビや文机や屏風などが置かれ、太宰治が逗留していた宿の一室を作ってある。
会場手前側には、白い高さ一間くらいの屏風。その前に緑色のちゃぶ台と、足元に紫の布がかかった箱がある。
ディオニス王の登る台座になる。
傍らにカメラが仕込んであり、ディオニス王(=政府)の演説がそのまま太宰の部屋のテレビに映される。
アクティングはそれらの装置で挟んだ部屋全体。
出はけ口は会場入り口と、太宰の部屋の更に奥にパーテーションで区切られたスペースがあるようだ。
客席はそれらを囲むようにギャラリーの壁沿いに設置されている。30席ないくらいの囲み舞台となっていた。
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物語は太宰治の代表作「走れメロス」のストーリーと、太宰がそれを作り出すまでの逸話。
それに現代日本の世情(コロナとその対策に関して。とか。)。
少なくとも3つ以上の筋が綺麗に纏められていて見ごたえのある演劇でした。
俳優さんの芝居も素晴らしい。没入型なんでしょうか。
独り語りのくだりなどは堂に入っていて迫力のあるものでした。
しかし前述のとおり。自分の演技・世界に入り込んでいて、それはすごくイイと思うんですけど、
観客に「伝える」という意識は薄かったように感じました。
置いていかれているというか…。
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冒頭からかなり聞き取りづらい台詞が続き、「あ、こりゃミスったかな」と思ってしまった。
途中の会話も完全にキャスト間”のみ”の意識で終わっていて、この劇場の間合いじゃなかったらさっぱりでしたね。
この人たちこっち見てないなというのがそこで悟ってしまい、その後はもう冷めてしました。
明らかにセリフ入っていない方もいましたし。
先程の堂に入った演技も、熱が上がっていってるのは俳優さんだけで、向かい側ではウトウトしているお客さんもいました。
脚本も構成は上手く、太宰に対するリスペクトも感じ、好印象でした。
しかし、観客側の事前知識に頼りすぎなのではないかなと思いました。もし自分が太宰もメロスも知らなかったら全然楽しめなかったでしょう。
観客に子供も何人かいたようですがちゃんと楽しめたんでしょうか。
劇場では笑いも起きてましたが、終演後のやり取りから察するにほぼお知り合いの方のみだったのでは。
というかコロナ禍の現在、あの距離感でお客さんと交流するのはいかがなものか(これは内容関係ないですね。)
とまぁ色々と。モヤモヤが多かったです。
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作り手の熱量の何割をお客さんと共有できていたんでしょうか。些か疑問の残る観劇でした。