作/演出:到生
会場:甘棠館Show劇場
チケット料金:1.500~1.800円
上演時間:約120分
公演の説明
福岡の劇団ZIG.ZAG.BITEの旗揚げ5周年記念公演。昨年11月公演予定だったが主演俳優の骨折によりやむなく延期。約1年の時を経て2021年9月に約一か月、トリプルキャストで全23ステージを上演。
あらすじ
「ヒーロー×九州×演劇=最強」時は2XXX年―。福岡県福岡市警固神社に封印されていた禍々しき神“マガツ”が復活した。
未曽有の大災害を引き起こし、九州を恐怖に陥れるマガツ。
その最中、福岡博多のラーメン屋台店主“長浜馬介”、熊本県菊池の林業職員“菊池開”、
長崎県五島のご当地アイドル“甘夏みかん”の3人は福岡県志賀島にある龍神たちが集う神社に招かれる。
そこで3人は神社の主である“龍神”より、かつてマガツの脅威から九州を救った戦士
「九州戦風カミカゼバイト」へと変身する力を与えられる。
戦闘傀儡“ガラワリ”を率い九州をさらなる恐怖に陥れようとするマガツと対峙する3人は
「カミカゼチェンジ」の掛け声とともにカミカゼバイトへと変身する。
マガツたちを退けたカミカゼバイトは一躍時の人となる。
連日メディアに取り上げられることですっかり調子に乗ってしまう開とみかん。
楽観的な2人に対して気を引き締めるようにと伝える馬介。
そんな馬介もまた半人前の一人息子“斗馬”との関係に頭を悩ませるのであった。
ある日、いつものようにガラワリ達と戦うカミカゼバイト。余裕の戦闘に油断した3人はあろうことかガラワリに人質を取られてしまう。
身動きの取れない馬介たち。そのとき1発の銃声が鳴り響き“干潟善治”と“別府依織”の2人が現れる。
人質を救い出しガラワリ達と戦う善治と依織は突如、カミカゼブルーとカミカゼピンクに変身する。
同志の出現に喜ぶ馬介、開、みかん。しかし善治と依織は「お前たちもこの時代も認めない」と3人との共闘を断るのであった。
一方、カミカゼバイトに退けられたマガツは2XXX年の進んだ文化に驚いていた。
完全に対策された現代の九州でいくら災害を起こそうとも無駄であることを知ったマガツはガラワリ達に現代のことを調べさせ、
どうすれば現代の九州を支配し禍々しき神として人々に崇められるのか思案していた。
ひょんなことからガラワリの扱うスマホとSNSの存在を知ったマガツは“この世の人の穢れ”に気づき、いよいよ九州侵略に向けて本格的な侵攻を開始する。
果たして、カミカゼバイトはマガツの脅威から九州を守ることができるのか。劇団ZIG.ZAG.BITEが送る新たなヒーロー誕生の物語。
「この地に災い起こるとき、払うカミカゼ吹き荒れる!」
公式サイトより
キャスト
大和屋満福 西山太一 心乃音 下枝聖治 髙橋来人
萩尾ひなこ 濱野貴将 稲葉幸平 堀初音 岸里美
八坂桜子 紅月まき 有田涼哉 市丸詞歩未 岩瀬巧
川口卓哉 北島一寿 古賀佑斗 田中文萌 土井拓美
鳥野まる 野田敢 早見あまり 到生 足立万実
以下:雑感
とても楽しかった!往年の新感線のようなノンストップ破茶滅茶アクションコメディ。すごい勢いとゴリ押しのパワー演劇でした。元気が超出ます。
変なひねりの少ない、ストレートに熱くなれる物語でした
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よくある(無いか)戦隊ヒーローもののお話。
封印されていたヴィランが現代に蘇り災害を引き起こすのを、太古の龍神(マスコット兼巨大ロボ)の力を受けついだ若者たちが食い止める。みたいな。
遊園地などでやってるヒーローショーを丸ごと持ってきたような感じ。
舞台は甘棠館show劇場。セットは基本的には無し。
床は全面黒色のパンチ張り。奥は真っ黒のホリ幕が引いてあって、ステージ上は黒一色のシンプルな素舞台。
場面に応じて必要なものが出てくる(石段とか、屋台とか)が、それもほぼ最小限。
持ち道具などは多彩だったがそれでも多くはなかった印象。
ほぼ俳優の芝居やセリフ、音響照明で(強引に)場面を作っていった。それが全然苦ならず成立していてすごい。
ハケ口は舞台上カミ手シモ手に加えて、客席側に花道が2本伸びている。ツラと奥に向けて立体的な構成。
加えて、舞台上の真ん中をカミシモから真っ白いパーテーションが横からせり出てきて閉まるようになっていた。
単純な場転の他に、映像を映すスクリーン代わりにしたり、
ヒーローに変身するときなどに、一旦閉めてから役者の入れ替えをするなど、変身演出としても機能していた。
グリーンランドのステージなどのギミックと同じようなイメージだろうか。
「変身」という恐らく1番ネックになる工程もかなりスムーズに演出されていてストレスにならなかった。
特にレッドの息子・斗馬が変身するシーンでは入れ替わったのに本当に気付かなかった。シンプルに布で隠していただけだったんですが驚き。そして熱いシーンだった。
シンプルな作りながらも平坦さを感じさせない物語、演出で奥深さを感じた。
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とにかく「詰まって」た。
冒頭から怒涛のセリフ、場転、俳優の入れ替わり立ち替わり。息つく暇もない展開で「これこれこういう世界でこんな事件が起きてこいつが悪い、のを僕たちがぶっ飛ばして世界を守ります!!!!!」ドンっ!
登場・変身・見栄きり・アクション・主題歌・タイトルコール!!はい、今からこんな感じでやってきます!!!
いやーシンプル。THE・エンタメ演劇ですね。大好きなやつです。
終盤まで大体この調子の勢いと圧力で 余計な情感や間は差し込まず。必要な説明とイベントに集中した脚本。
観る人によっては情緒がないとか雑に見えるものと思いますが、必要最小限に絞った結果なんでしょうと思います。
取捨選択がしっかりできていると言うか。
見せるもの、現すことをしっかり選んでいていきあたりばったりではない熱意を感じます。
観客側に迷いがなくなるのもいいですね。
「予想通り、期待以上」というか。
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その上でベタベタな展開もしっかり裏切ってくるので面白い。
特にラストの”脚”はビックリ。「そう来たか〜〜!」ってなりました。思いついてもしませんよね。思い切りがよすぎる。というかなりふり構ってない、のほうが正しい?
突き抜けたバカらしさがすごく好きでした。
あんまりいい言い方ではないかもしれませんが、”小劇場”!!って感じ。いいですねぇ〜〜福岡でもこういうの観られるとは。
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みんな特撮好きなんだろうなぁというのが伝わりますね。
オープニング映像や小道具、演出の端々から感じます。自分たちの「好き」に迷いのない感じも好感が持てます。
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構成として戦闘シーンには割合力を注いでいなかった印象。
沢山戦ってきて、キメのシーンでは盛り上がってましたが
一連のアクションの”ここがカッコよかった”と覚えている場面はない。
甘棠館の狭さであの大人数でのアクションをやりきったのはすごいの一言だが、アクションそのもののカッコいいところも見たかったかも。
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勢いが強い。それが大きな魅力に感じますが、細かく観ると荒さが目立った気がします。「粗」でなく。
ダムの決壊のようなパワーがあるんですが洗練されていないというか…
「若者が頑張ってる」という感想が散見されましたが、そこから脱せていない面もあるかも。このロングラン期間中に磨かれていくんでしょうか。
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物語の派手さに比べて衣装、装置がかなり簡素だったなぁ、と。
ヒーロースーツだけにかなりパワーを使った感じでしょうか。全体的にのっぺりしていたような、「必要」だけ揃えた感。
もっと遊びが見たかったかも。ダンスの時とか。
でもヒャッハーの人たちのところは適当感がすごくいい味出してて好きでした。キャスト陣は厳選されたんでしょうか。お腹のダルダル具合がよかったです。
前述のように、取捨選択がしっかりできる団体さんなんだろうな。
新感線や、鹿殺しもそうでしょうか。全ての要素に莫大なエネルギーが求められるこの手のエンタメ。
もし選ぶことなく満遍なく高められたらどうなるのか。期待が膨らみます。
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長くなりましたが、「九州戦風カミカゼバイト」とても楽しかったです。
目まぐるしく飽きる暇のない抜群のエンタメでした。
労力は計り知れませんが、劇中でも言ってた通り、いつか大劇場でめちゃくちゃ予算掛けてやってみて欲しいですね。
これからますます楽しみ。別のチームも観にいこう。