作/演出:穴迫信一
会場:枝光本町商店街アイアンシアター
チケット料金:2,000円 ~ 3,000円
上演時間:約75分
公演の説明
北九州の劇団「ブルーエゴナク」の2021年度新作本公演。文化庁「ARTS for the future!」補助対象事業。
団体公式サイト
あらすじ
父が帰って来る。三姉妹と母は記憶を振り返りながら父の帰宅を阻止する。
数十年会っていない父は記憶と実体の中間、すなわち幻で、それはないものが見えているのか、あるものが見えていないだけなのか、もはや誰も定かではない。
だとしたら、この記憶の一粒を、さてわたしたちは、どう振り返ろうか。
過去と未来と幻によって多層化する個人の記憶が映し出す家族喜劇!
キャスト
平嶋恵璃香、小関鈴音、溝口竜野、隠塚詩織、なかむらさち
以下:雑感
面白かったなぁ。脚本の、というか演劇づくりのレベルが高い気がする。
以前何度か拝見したブルーエゴナクですが、洗練された確かな力強さを感じました。
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舞台は枝光本町商店街アイアンシアター。客席は40くらい?前売り完売増席しただけあって満席。すごい。
古〜〜いどこかのアパート?一軒家かな。の玄関口。
結構しっかり作り込んであって雰囲気は十分。昭和の残り香が漂っていそうなノスタルジックな空気がありました。
中盤それが二つに開いて内側の空間が出てきて大きな書き割りだとわかる。
ギミックも、操作は単純だけど劇場いっぱいの巨大な壁が動くだけで視覚的にも楽しい。迫力もありました。
開いた中は何もない黒い空間に緑の草っぽい敷物。上にダイニングテーブルが一組。お家の居間なのかな。
その後“モグラ“が出てきて抽象的な劇空間になったり。
現実なのか虚構なのかの境目も曖昧な感覚が、夢を見させられてるような、物語の中にいるような感じで楽しかったです。
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物語はあらすじ通り。
音信不通の父から電話がかかってきて突然の帰省に戸惑う家族たち~~、というよくありそうな展開からの。
父は実は亡くなっていて、実は幽霊からの電話だった。
生前からろくでなしで死んでからもトラブルの元になる父との思い出を妻と3人の娘たちのそれぞれの視点で振り返っていく。
みんなそれぞれ恨み、っていうか文句というか。不平不満たらたらの嫌な思い出が多い感じですが、
どこかに父親に対してとか、姉妹それぞれに対しての、なんでしょう。「愛情」というにはそっけないけど他になんて呼んでいいのかわからない感じのほんのりあったかい感情が感じられる一幕でした。
こういう名前のつけがたいエモい感じなんて言ったらいいんでしょうねぇ。
世はクリスマス。寒かったけどあたたかくなれました。
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しっとりとした空気感。脚本の言葉選びだろうか、俳優の発声だろうか。
台詞回しが聞いていて心地よい。目を瞑っていてもしっかり聞けて眠くなりそう。悪い意味でなく。
レベルが高いなぁ~と思いました。レベルっていうか練度? 一緒か。
芝居も演出もすごいたくさん
ビックリするような展開がちょこちょこ起きますが、大げさな演出はなく、日常会話の中にぽろっと混ぜてくるのが
逆にドキドキしました。
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モグラのお話。
童話感があって好きだったなぁ。あの空気ってシュールって言ってあってるんでしょうか。シュールですよね。
ちょこちょこ歩きが可愛かったし、響く足音がまた笑いを誘ってくる。
音と言えば、地味にかなりBGMにこだわっているなと思いました。
劇中ほとんどのシーンでかかっていたと思うんですが、音響効果もお話に入り込むのにすごい役立った気がする。
台詞が全部聞きやすくてノリやすかったのも音楽関係あったのかなとか。
オリジナルでしょうか。サントラとかあるかなぁ。
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家族のこととか、夢のことか、いろんなことが上手くいったりいかなかったり。
そして同じことを体験していてもそれぞれで覚えていることが違ったりとか。
思い出や感情の在り方とか、じっくり考えたような気がします。
言葉も感情も乱雑なところもある姉妹だったけどそれぞれに大事なものがちゃんとあるのかな。とか。
他人の大事なモノには寄り添えるような生き方をしていけたらいいですね。
ラストのカーテンコール時の拍手の長さも納得。
とても良い時間を過ごせました。
次回も観に行きたい。