観劇・感想

観劇感想:椿エンタープライズプロデュース公演 音楽劇 椿版「三人姉妹」

原作:アントン・チェーホフ 潤色/演出:玄海椿
会場:シアターカフェ愛と青春のふる~れ/ふくふくホール
チケット料金:3,000円
上演時間:約150分(休憩10分含む)

公演の説明
福岡の演劇団体「椿エンタープライズ」のプロデュース公演。自営のカフェ「愛と青春のふる~れ」でのカフェ公演なども行っている。今回も子役から若手、ベテランまで幅広く起用している。
あらすじ
独身の長女オリガ、夫に幻滅を感じ始めていた次女マーシャ、人生を歩み始めたばかりの三女イリーナ。高級軍人の一家として過ごした華やかな生活も、父親を亡くしてからはすっかり寂れてしまった。モスクワへの帰郷を夢見ながら、次第に出口のない現実に追い込まれていく三人姉妹の恋愛模様を、音楽の調べにのせて、今あなたに!
キャスト
玄海椿 心乃音 ソフィア 平野百音 江口鮎香 安部七波 前田希実 平田向日葵 井口紀子 中村恵理華 菜見 甲斐杏奈 ミズキ 百武直紀 前田直紀 朝部聡 上野直人 佐藤元気 黒木スザンヌ 富崎慶介 オリバー 前田寛輔 真名子龍斗 長澤昭 東条柳

以下:雑感

しょっぱい芝居でした。リハーサル観に来たのかと思った。おじさんおばさんの自己満に若手が付き合わされてるような感じ。音楽劇なのに音楽の使い方下手では?名作のパワーと数名の熱でなんとか盛り上がった印象。前半とカテコのグズグズがなければ…

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舞台は福岡市のふくふくホール。

箱馬と平台で凸方のひな壇のようになっている。カミ手にスタンドテーブル。上にワインや花。バイオリンが置いてある。シモ手には電子ピアノ。びっくりなのがこれら一切になんの飾りもない。剥き出しの板張りに木の色のひな壇。予算ないのか?その癖衣裳のドレスやジャケットは豪奢っぽい。いかにもひと昔前の貧乏小劇団か市民劇って感じの安っぽさだ。チラシや歴から受けてた印象からはかけ離れていて面食らいました。

いや、安っぽくても、実際安くてもいいんですよ。しっかり演出の好みというか、コンセプトに沿ってカッコつけてもらえれば。舞台なんですよ。演劇なんですよ。その気取った衣裳で踏むステージ本当にそれでよかったのか?手抜きでは?もっと魅せ方があったでしょう。

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まず最初に驚いたのが、長女。絶対配役間違ってるでしょ。次女マーシャ21歳(ソフィアさん)、三女イリーナ20歳(心乃音さん)、と来て

長女オリガ28歳(玄海椿さん)!!??

実年齢存じ上げませんが、どう見ても60手前の見た目。よく若手二人と並んで三姉妹になれましたね…。度胸や勇気を通り越して厚顔無恥と言っていいのでは。アンフィーサだろキャストするにしても。その見た目で成立する姉妹の両親は何歳なんだ。普通に寿命で亡くなってるでしょ。

なんで自分で若手たくさん呼んでるのにそこにしたんだ。主催者のエゴが良くない形で発揮されてますね。どおりでアンフィーサ追い出すところ違和感すごいと思ったんですよ。

先述の舞台の作りに関してもそうですが、ビジュアルから受ける第一印象というか違和感に無頓着すぎるのでは?如何に芝居がよくても足枷になってしまいます。そしてその足枷を外すには芝居作りもお粗末でした。

一箇所のミスマッチが色んなところにガタつきを起こしてました。自分で脚色演出した舞台にメインキャラとして入るには相当自信ないとあかんですよ。あかんかったです。

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芝居にしても演出はしっかり効いてたんでしょうか?正直観ていて全体の統一感が感じられなかった。おじさんは言わずもがな、数人の若手も自分の気持ちよさだけで喋っていたように見えました。そしてその手の芝居は総じて聞き取りにくい。ただでさえ聞き慣れない古典ではかなりストレス。客観視して修正する人はいなかったのか。最終日までこの調子だといなかったんだろうな…。ていうか最終日なのにみんな噛みすぎ。

若手だとニコライ(東条柳さん)がその辺カバーしてたように見えます。自分勝手でサムくなりがちな空間をなんとか笑いで保たせようと苦心してたように思えます。裏を返せばそれがわかるくらい浮いてたということですが。あのメタなノリは多分アドリブですよね…。

しかしイリーナとの最後の会話はよかった。

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若手の中でもやはり三姉妹、マーシャとイリーナはとても良かった。

心乃音さんは「カミカゼバイト」などでも拝見しましたがある種安定感が出てきたような気がします。声もとてもよく通るし、いい俳優さんですね。

マーシャ役のソフィアさん。芝居も良かったですが歌が特に良かった。この芝居の満足度の半分くらいあれで持ってかれた気がする。目が覚めましたもんね。

お二人とも今後の活躍が楽しみ。もっと観たくなりました。

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とはいえ音楽劇と銘打っておきながら音楽の入れどころの意味がよくわからなかった。

好き勝手歌い出すおじさん。謎に一音だけ鳴らすピアノ。あんな風に触ったら境界がぼやけてわけわからんのですがどう観たらよかったんだろ。ずっと置いてあるけど一回しか使わなかったバイオリン。持って出てきたらよかったのでは。

やれる楽曲ををテキトーに配置しただけで統一感もなく。というかあんなに歌が素敵な俳優揃えて、舞台上にピアノ出しっぱにするなら生演奏したらよかったのに。なんで印象的な歌のシーンは普通にM流してるんだろ。勿体無くない?こだわりが感じられない。

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これ言うと四方八方から嫌われそうですが、下手くそな子役が出てきてすごい嫌でした。老若男女問わず下手くそは大嫌いですが。もう台詞言い切っただけで年配のお客さん大喜びで声上げてました。めちゃくちゃ棒読みでしたが。だと言うのに相対してた若手俳優は熱入れて受けちゃってるから死ぬほど気持ち悪い空間になってましたよ。一種の感動ポルノですわ。もうげんなり。日本だけじゃないのか下手くそな子役が舞台に上がるのって。私が知らないだけで私以外の世界では許されてるのか。

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カーテンコール後の挨拶も酷かった。余韻とか台無しすぎる。名作文学をお借りして作ってるのに、いきなり令和の人間に戻られて急速に冷めました。もっと自分達の作った世界を大事にしてほしい、なんか喋るならちゃんとまとめて事前練習してほしい。何が悲しくて2時間半もしょっぱい芝居観てグダグダのトークを聞かなきゃいけないんだ。10日間も公演打ってきたのに洗練されてなさすぎる。

ウクライナへの支援募金など。志は本当にご立派ですがとりあえず目の前のお客さんのお金と時間にもっと意識を向けたほうがよろしいかと思いますね。細かい部分に自意識過剰と自己満足が漏れ出しててきてて居た堪れない気持ちになりました。これに付き合った若手は大変だなぁ。何か意見できるような環境になかったんだろうなというのを作品を観て察してしまう。気の毒だ。

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果たして脚色されたこの舞台は成功したのかどうか。そもそもの構成や物語性、一部の若手の熱量によってなんとか悪くない演劇になっていたような気がしますが、自分の言いたいことがあるなら自分で書いたらいいのでは。三人姉妹って戦争の悲惨さとかがテーマだっけ?現実とも向き合って生きていかねばならない、というところからはズレてはいない?

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次回は「ロミオとジュリエット」で玄海さんはジュリエットを演じるそうですが、原作設定って13歳じゃありませんでしたっけ?

もはや一周回って観てみたくなってきたな…。魅力ある若手をたくさん集めるパワーはあるのだから育成に力を注いだ方が良いものができるのでは。なんて余計なことばかり考えてしまう公演でした。