観劇・感想

観劇感想:福岡・九州リージョナルシアター2022 FPAP✕ZZBプロデュース 『かみがたりぬ』

作/演出:到生
会場:福岡市立南市民センター 塩原音楽・演劇練習場 大練習室
チケット料金:2,000~2,800円
上演時間:約110分

公演の説明
福岡のNPO法人、福岡パフォーミングアーツプロジェクト(FPAP)が主催するプロデュース公演。昨年から引き続き2回目。
脚本・演出に劇団ジグザグバイトの到生氏を迎え、九州各県からも様々な俳優が顔を連ねる。公演特設サイト
あらすじ
歴史上最大の内覧が終わり新たな国の統治者となった大王は、先代よりの夢であった国の成り立ちを記した歴史書を編纂することで自身の力を世に示そうとしていた。命じられたのは、内戦で武功を挙げた兵士ヤスマロと国の筆頭学者トリキ。大王は、より優れた歴史書を作ったものをこの国の学問の最高峰「学問の君」の任に就けると告げる。兵士であるヤスマロは乗り気ではなかったが助手として就けられた学者のオスマに諭され作業に取り掛かる。しかし先の内乱により歴史が書かれた資料は全て燃えてしまっており作業は難航する。そんな二人の元にある噂が入ってくる。ヒエダノアレとうい人物が国の成り立ちを全て暗記しているという。不審に思いながらも早速アレを呼びつける二人。そこに現れたのは踊り巫女の集団であった。ヒエダノアレとはこの国の歴史を代々歌い踊ることで後世に伝えてきたとされる「踊り巫女の集団」であったのだ。「失われたとされるこの国の成り立ちを私どもが歌い踊り伝えます。どうぞ、それを書き記してください。」
我らはヒエダ一族。歴史を刻む踊り巫女。これより舞うは国のあらまし。我らが舞を書き記せ。
公式サイトより
キャスト
足立万実(劇団ジグザグバイト) 岸里美(劇団ジグザグバイト) 河野芽依(劇団水中花) 心乃音(anomaly) 鷹巣将弥(劇団佐賀さわげ) 高橋力也 立花恭平(FOURTEEN PLUS 14+) テシマケント(劇団ジグザグバイト) トクトミヒロタカ(DO GANG) 鳥野まる(劇団怜) 中村公美 奈月(エレガントプロモーション) 西山太一 萩尾ひなこ(SPARKLE PROMOTION) 平島卓 ​弥坂勇典 水上初佳(楽描-Rakugaki-) 八坂桜子(劇団ジグザグバイト/anomaly) 柳瀬史子(長崎県新演奏家協会/西日本オペラ協会) 大和屋満福(劇団ジグザグバイト)

以下:雑感

素晴らしい!!最高のエンタメでした。シンプルな一本道に飾られた色とりどりのアトラクション。豊かなキャストたちの個性が潰し合わずに調和しあっていた。構成、調理がうまかった印象です。歌とダンス多めのコンサートのよう。観客参加型ですごく楽しかった。OPEDの演出が粋。最高でした。

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舞台は福岡市南市民センター。練習室に建てたステージ。パピオの地下練習室みたいな。ジグザグバイト通例の真っ黒い素舞台。今回はアオリ気味の高い舞台になっていて、2段組で上段にもカミシモに抜けて通路あり。奥ハケ口は少し下がっているようだ。シモ手側に面に向けて少し張り出して小さな花道のようになっている。

照明がビカビカで数がすごい。新感線ばりでライブ会場みたいだ。

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題材がよかったですね。日本神話大好き。

構成がすごくよかったと思う。「古事記」という完成された各エピソードがあしがかりにもなったんでしょうか。物語の芯がブレずに飲み込みやすかった。また、あの大人数の個性を殺さずキャスト毎にしっかり活かして効かせてきたのがいい。昨今”プロデュース公演”は各人に見せ場を作ろうとするあまりとっ散らかることが多い印象でしたがしっかりまとまっていたように感じます。古事記各エピソードもわかりやすかった。端折ってはいましたが。これで興味持つ方とかいるのでは。

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ダンスすごい。いや、すごいわ。多すぎ。しかしどれも完成度が高い。知識がなくて語れないけど全て楽しかった。音楽灯り演出も含めて。あんなに踊って芝居もしてたらヤバい。鬼体力。

キャラ毎のソロパート(?)もよかった。ドレド役・岸里美さん、八坂桜子さん。同じ役同じダンスでもそれぞれの魅力が出ていて素敵でした。(予定あったのに続けて2回観てしまった)思春期の、頭ではわかってるけど口をついて反抗してしまう感じよかったです。”天岩戸”のシーン、客席巻き込んでの盛り上がりも勿論音ハメが気持ちよかったですね。

イザナギ・イザナミ。立花恭平さんと中村公美さん。古事記でも特に好きなエピソード。明るく楽しく、かと思えば切なく辛い。急転直下の物語を見事に演じてました。また推しの新たな一面を見てしまった。追いかけっこダンスもよい。

ソレソ・柳瀬史子さん。声すごい!!オペラ歌手さんなんですね。技術がすごいとそれだけで笑ってしまう。悪い意味でなく。すごくいいアクセントになってました。歌声も最高。

ヒエダノアレ・足立万実さん。すごくいい。声色の数が豊富。大きな陰を抱えながらも使命感と責任感、罪悪感もかな。を抱えながら時におどけて時に厳しくみんなを導く、複雑な人間性を見事に演じられてました。そしてやはり歌が上手い。牢屋の独唱は胸にキマした。

オスマ・西山太一さん。最初イジられポジのコメディリリーフなのかと思ってましたが実はこの一件に誰よりも熱い情熱を持って臨んでいたキャラだったのでは。最後の長台詞アツかったです。ギャップがすごい。

そしてなにより主演ヤスマロ役・高橋力也さん。

またすごいイイ若手が出ましたね。荒削りながらとてもエネルギッシュで素晴らしい。ラストの演舞は素直にカッコいい。100分間のエネルギーを見事にまとめ、昇華されてたかと思います。

イケメン。物凄い「主人公!!」って感じ。若手のジャニーズとかにいそう。先が楽しみな俳優が増えましたね。

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強いて言うなら悪役が弱かったかな。「悪」的な存在が1人であとは兵隊だったので脅威度がいまいちピンとこなかった。”イコク”、”カノクニ”など他国の存在(ネーミングセンスは好き)が出ているが舞台となっている国の名称が不明なこと(ヤマト?)。中心人物である”大王”の存在が不明瞭だったこと。

などでこの企みがどんだけヤバいのかもボヤけていたかも。引き際もあっさりでやっつけたことによるカタルシスは薄かった。事件のキーマンが名無しの兵士だったのも原因?死に様(生きてたけど)は凄まじかったが。テリヒト(水上初佳さん)

トリキvsオスマ(ヤスマロ?)の対立のようにクレバに相対する存在がいたらもっとスカッとしたのかなぁ。でもそんなに描いてたら多分3時間ものくらいになりますよね。歌と踊りのエンタメに重きを置いたが故のチョイスなのかも。

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OP。シブい!!「カミカゼバイト」の時の派手派手なスタートとは打って変わってシマった始まりからここまでの盛り上がりとは想像もつかなかった。

ED。幕の振り落とし。そして大団円。カッコ良すぎる。幕にあった短歌「八雲立つ〜」はスサノオが詠んだと言われる日本最初の和歌ですね。荒々しかったスサノオがクシナダを助けたように、戦うことでしか自己を守れなかったヤスマロがアレやヒエダ一族、ひいては歴史という大きなモノのために戦うことを決めた。スサノオとヤスマロを重ね合わせたんでしょうか。粋すぎる。あの短歌のようにこの後恋に発展するんでしょうか。これは野暮ですね。そうなったら素敵だが。

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とにもかくにも最高でした。もっと書きたい人書きたいこと沢山ありましたが時間が足りないのでこの辺で。終わってからも出演者さんがTwitterなどで語り合っているのを見るに、とてもよい座組みだったんだろうな。ダブルカテコも納得。

めっちゃよかったけどまだまだ進化していくんだろうなというのが自然と期待できる。関わった全ての人のこれからの活躍が楽しみです。まだまだ大!期待。次回も楽しみにしてます。