観劇・感想

観劇感想:陽project第10回公演ラブコメロックミュージカル活劇「新撰組ロッケンロール 熱血編」

作/演出:シマハラヒデキ
会場:福岡市科学館サイエンスホール
チケット料金:2,000~15,000円(配信チケット3,000円)
上演時間:約130分(休憩15分)

公演の説明
陽projectの第10回公演。 公式サイト
あらすじ
ひとりの少女がその才能からイジメをうけ、自殺を決意する。しかし、ふと目覚めるとそこは血風吹き荒れる激動の時代幕末。ゆくあてのない少女は、目の前の殺りくに待ったをかける。「なんで殺すんですか?殺すことで時代を作ろうとしていた若者立ちに少女の言葉はぐさりと刺さる。そして不殺を誓い、京都守護職として守る戦いを始める新選組。ひとりの少女がもたらした未来の知識によって事件は未然に防がれる。そして次々と明るい明日を作るための戦いを制す新選組であったが。来る8月18日の政変。新選組が歴史に名を残す革命で事件は起きる。──。時を同じく、幕府や外国を滅ぼそうとする天誅組が京都を支配し、天皇を手中に収めていた。長州の高杉晋作・土佐の武市半平太が筆頭を務める天誅組ではあったが、その中にいて、殺すことに疑問を覚える桂小五郎は、殺りくの世で出会った一人の少女に深い感銘を受ける桂は、同じ明日を夢見る高杉に天誅ではない新しい形を模索するように提言するが、高杉は何かにとりつかれたかのようにひたすらに殺りくを繰り返す。そしてそのそばには不敵に笑う武市半平太の姿があった。高笑いをする武市半平太。8月18日の政変によって今まさに京都から締め出されようとしているその人物の手元には……一冊本が──『日本史』の本があるのであった。殺す天誅組に止める友、守る新選組に全てを知る少女、全てを理解し高らかに笑い続ける一人の志士。そのすべてが絡み合うとき未来は……いや、ちょっと待ってくれ……やり直しさせてくれ、あらすじなんてどうでもいい、ストーリーも歌もどうでもいいんだ。この舞台にはお客様に「明日を生きる力」を届けるために汗水流して、苦しい生活の中でも決して明日の希望を忘れない輝かしい若人の命の輝きがあるのだ。だから見に来てくれたら絶対元気になる、絶対笑顔にさせる。だからどうか……※公演チラシより
キャスト
シマハラヒデキ リーピン ソフィア 三戸雄太 桑野イドリス 小松幸翔 前田俊朗 大國千緒奈 今中智尋 宮﨑美光 窪津りの 山本双葉 堺利菜 藤柚花 鍋山和弥

以下:雑感

いやほんとどうしようもないくらい予想通りのがっくり芝居。わかってたのにどうして買ってしまったのか。前回公演がたまたま偶然大失敗していたかもという可能性を捨てきれなかった。後悔すごい。
前回と評価が1ミリも変わらない。どころか加速して下回ったオナニー芝居でした。空気感じてもっと…。

ていうか「幕末純情伝」のパクリじゃねーか?これを自信満々に板に乗せられるの凄い。凄い神経してるわ。代表の人つか劇団出身ってプロフにも書いてるのに恥ずかしいとかないんかな。オリジナルで死ぬほどつまんないのはまだ許容できるけど、パクリ隠せないレベルでつまらんのはもうダメだろ。
物語も芝居も歌も殺陣も舞台もテクニカルも全てが低クオリティで洗練されていない。声を張り上げて気持ちよくなっているだけの学芸会でした。全然値段と釣り合っていない(もちろん悪い意味で)。酷い観劇でした。決してオススメしません。

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舞台は六本松の福岡市科学館サイエンスホール。陽projectさんはよく使ってるようですね。
床面はパンチ張り、全体的に黒い。カミシモは袖幕でハケ口を分けている。中央に2メートルくらいの屋台があって上下段ともに障子で奥にハケ口がある。屋台のカミシモ両端には幅2メートル高さ4メートルくらいの柱。つるっと白化粧してあってマッピングが投影される。屋台の前には上段に上がれるスライド移動式の大階段は2基。場面によってくっついたり離れたり。「池田屋」みたいな雰囲気かしら。

しかし階段の蹴込汚ねぇッッッ!!!!!!

4,500とか取っててなんのつもりだマジで。障子も汚いし、10回目公演でなんだこれ。ツッコミどころ量産してくるなぁ。マッピングで舞台上に歌詞出したりもいいんですがサイズ調整とかしてないのかな。分割されまくってめっちゃくちゃ見にくい。前作でも書きましたが使いこなせてないから即刻辞めた方がいい。新感線みたいなニュアンスなんでしょうけどノイズでしかないぞ。舞台監督いないのかな。

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公演外のことですが。まずもってチラシに載ってるあらすじがカスみてぇなあらすじ風駄文。チラシ自体めっっちゃくちゃ見にくい上に頑張って読んでも支離滅裂な文章で最後にはどうでもいいからどうか…とかちゃんちゃら可笑しいわ。作り手側がどうでもいいとか言ってるストーリーや歌で何が届くんだろう。浪漫的な文言に酔っぱらってないでもっと現実に目を向けてほしい。作り手の気持ちがどれだけ濃くても芝居は本当につまらないです。座組全員であらすじ声に出して読んで推敲してほしいまずは。公演前のチラシですらツッコミどころ。やばい。

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なんかがあっていじめられてた現代の女子高生・沖田総司(!?)が自殺して幕末にタイムスリップ。新撰組副長と上手い事遭遇し入隊。この時代にあって「不殺」を説き、先の見えない戦いを続ける隊士たちに未来の情報(死に時とか)を教え、やがて新撰組の希望となっていく。
みたいな導入。
でも正直あんま主人公感はなかったな。というかツッコミどころ多すぎるんだが。まずもって、

つかこうへいの「幕末純情伝」のパクリやん!?

気づいてない?いや、舞台設定とかじゃなくて見せ方とか台詞の吐き方とか…見てたらわかるんですけど。これはどういうメンタルだと許容できるんだ。しかも半端だし。現代の女子高生の名前が「沖田総司」って違和感すごくない?「幕末」の沖田は”男として育てられた”からわかるんだけど。それに歴戦の幕末の武士たちがぽっとでの少女からなんか言われたくらいで受け入れ早すぎる。自我とかプライドないんか?この時代の倫理観だと無理じゃない?半端な類似点は挙げだしたらキリがない。
なんというかキャラたちが全員”展開のために”生きてて行動に説得力ないんですよね。物語開始以前の人生とか人格が感じられない。そのせいで度々の叫びや気持ちにもついていけなくて冷める。というか逆に人間味が感じられなくてキモい。演じてても違和感あると思うんだけども、まぁそこは現場の空気とかありますからね…。
史実では男性の人が男の名前で。でもキャラクターとしては女性でキャストも女性だったり、でも登場人物たちは普通に接している。創作の都合ではなくキャスティングの都合?必然性がないし違和感を生んだだけでは。
歴史ものってメリットデメリットあると思ってて。一般認知されたキャラクター性のおかげで説明を省ける部分もありますけどそれが足を引っ張ることもありますよね。今回のこれはまさしくそれかなと。史実に沿わなくたって面白くて納得できればいいんですけどつまらんし意味わからん。
なんで敵の兵隊はみんなお面被ってるの?前の「忍」の使いまわしですよね。小劇団のヤな感じのとこですね。作品ごとに世界観分けてくれよ。
「ろっけんろ~~る!!」ってなんだ。

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お話は置いといて。歌ヘタ殺陣ヘタ芝居ヘタ。灯りも顔取れてないし音もぶつぎりで立ち位置も群読も揃わない。舞台装置も汚い。ひとえに演出が機能してないですよね。この座組の俳優たちは気持ちや声を上げることばかり要求されていて「芝居つくり」をできていないのではないか?つまらなさの怒りよりもはや哀れみを感じてきてしまった。かわいそうに。
運動神経は良い人が揃ってるぽいし、ちゃんと全体を見る人がいればいくらでも良くなる可能性はあると思うんだけどなぁ。
マッピング。ほんとに使いこなせてない。見づらいし、下手にアイテムがあるせいで演出さぼっているのでは?説明パートの台詞長い部分こそマッピングとか有効利用できるんじゃないかとか思うんですけどどうなんでしょ。
せっかくの気持ちの応酬も全部言葉でやっちゃうから1割もこっちにきてない。

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・近藤勇は死んどけ。まじで。なんでもう一回出てきた。不意打ちでめちゃイキるじゃん。かっこよくないぞ。
・ラストのラスボスの嘆きはよくわからなかったな。あの広いアクティングで一人で空間を埋めるのは至難ですよ。結果見られたもんではなかった。「忍」もそうでしたがこの作家は敵方の尊厳を踏みにじりすぎててやばい。倫理観どうなってるんだろう。勧善懲悪にも限度がありますよ…。
・決戦前、ヒロインの訴え。「生きててほしい」みたいなこと言ってますけど、自分自殺してこっちきたんですよね?その辺悩んだり解消したりする描写が薄くて飲み込めねぇ~~。キャラとして矛盾がないか?ていうかこの辺の主張おぞましさすら感じますよ。漫画しか読んでない人が考えた上っ面のきれい事ですよ。どの立場で命の取捨選択しとんねん。敵も味方も命かけてんじゃないの?馬鹿にしてますよ。
・高杉の歌シーン。ヘロヘロでやられても…。
・クソださダッシュ!健在!!
・謎の着ぐるみギャグ。かわいそうに…。本当にかわいそう。

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もうほんと気持ちが気持ちが言ってないでしっかり計算して作ってくれよ演劇を。お金をとるなら。気持ちを届けるための道筋を整備してくれよ。勉強してくれ。
まず”恒例のキャスト紹介”とクソ寒いカーテンコールを辞めてほしい。

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ほんとにしんどい時間でした…。もう2回観たしいいですよね。もう観なくて。この先クオリティが上がることはあるんだろうかこの人たちは。完全にいち観客の領分を越えていますが連続で出てる客演さんは映像でちゃんと観て第三者にセカンドオピニオンもらったほうがいいですよマジで。第9~10にかけて何もパワーアップしてませんし…。団体の人は頑張ったらいいですけど若手客演の皆さんは考えて出演先探してほしい。切実に。
福岡の演劇がこれから少しでも良くなりますように。本当につまらない、酷い観劇でした。