作/演出:東条柳 脚本監査:前田繁之
会場:Gate’s7
チケット料金:3,500~4,000円(配信2,200円)
上演時間:約2時間
公演の説明
演劇団体「Thank U,next」による公演コロナ禍で中止された企画の再演。
あらすじ
「この歌を聞いて、おまえ自身が少しふさぐ気持ちになるかもしれないけれど、時には音楽よりも正しいことの方が大切…。お前があの時それを教えてくれたんだよ。」
「大丈夫!今胸の中にある不安とか全部無くなるから!…大丈夫!いつかこれで良かったと思えるから。…大丈夫。僕はもう、何も怖くないから。」※公演チラシより
キャスト
〈Aチームキャスト〉永山未来 稲葉幸平 平田向日 江口鮎香 戸宮野々華
〈Bチームキャスト〉心乃音 百武直紀 萩尾ひなこ 川上杏奈 甲斐杏奈
〈シングルキャスト〉安部早馬 前田繁之 篠田昌人 Reika 明日良 東条柳
以下:雑感
ダラダラと長くて見にくい上にクソつまらない歌謡ショーだった。作り手の自己顕示欲が丸出し。重要なのは歌唱パートだけで狭間の芝居が”つなぎ”でしかなく、まるで洗練されていない。芝居観るつもりで行ったが失敗したかも。性的マイノリティに対しての描き方になんとも言えん、無神経さを感じていっそ不愉快だったな。
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会場は「Gate’s7」。中洲ドンキのとこのライブハウス。舞台は、なんと言えばいいだろう。カミシモに島があってセンターをランウェイというか通路が通っており、それを挟んで客席が囲んでいる。「H」型といえばいいかな。囲み舞台。片方がLiveステージ。片方がバーになっている。基本的にはバーの方で芝居が進むが、ステージの方はマッピングで情景が変わる抽象舞台みたいにも。
正直めちゃくちゃ見づらい。最初物珍しくて面白いと思ったけど結構頻繁にキョロキョロしなくちゃいけなくて全然集中できなかった。
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いまひとつ売れないシンガーの主人公。マネージャーの提案でバックダンサーをつけパフォーマンスを一新したことで人気に。とうとう全国ツアーにこぎつけチーム全体の士気も好調だが当の本人は浮かない顔。何かを抱えてるらしい主人公は言い出せず、その日は解散する。道すがら虐められている高校生・つむぐを助ける。つむぐは同性愛者でそれが原因で同級生にいじられていた。そしてそのことを家族にも言い出せずにいた。打ち明けられない悩みを抱えた者同士、2人は意気投合していくのだが…
みたいな?
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いや〜かったるい。歌のテンポはいいのに芝居のテンポが悪すぎる。
出てる俳優全員が主人公みたいな演技をしていて「間」がすごい。全員がTakerな芝居。おかげでまぁ〜〜〜長い。冗長と言っていい。そしてこの出し物、芝居の空気感をどのラインに調整しているのか。役者それぞれが好き勝手決めていて統一された演出が働いていないように見受けられた。若手はやたら演技演技した固いパス回しだし、かと思えば年配の人はボソボソとクソ邦画みたいな喋りをする人もいたり。テレビの音量設定がランダムみたいなの想像してみてほしいけど大音量でもないのにすごく聞きづらくて耳障りでした。大きなパーツでしか”演出”を意識してないんじゃないか?
特にそう思ったのはやはり歌唱パート以外に興味がないのが丸出しなことですかね。歌の準備のためにダラダラした時間使ってテンポ悪いし何より最後、転換の為に芝居捨てすぎでは?明らかに「準備してます!」な暗転。終わったかと思った。曲アオるなよ。
見せたいところ以外がマジで全部おざなりだ。肝心なドラマパートの言いたいことも薄っぺらく聞こえてしまう。
このLiveしたかったんだなぁ。よかったね。
いやお前が歌うんかい!!!!!!
つむぐ君歌わねぇんだ???????
ビックリした。歌えよ。そういう流れやん!受け継げよそこは!!え〜〜……なんだこれ。本当に自分のLiveしたいだけの企画だったのかこれ。あまり気持ちいい自己顕示欲じゃないなぁ。せめて一緒に歌えよ。ビックリして立ち上がりかけました。
これは個人的な好みですけど死人が出張ってくる話は大嫌いですね。
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俳優さんたちも人数いるけど技量声量まちまちでめっちゃ気持ち悪い。差はあれど、調節してくれ。ヤンキーと妹は慣れてないんでしょうな。すごく浮いてたしお金取れるレベルではなかった。下手な子役を下手なまま舞台に上げるのマジでやめてほしい。若い女の子がおじさんにキツいこと言って笑いとるみたいなギャグも寒すぎるしセンスが古い。やってること「属性」に引っかけて笑わせるやつだから本質的にはLGBTを揶揄してる構造と同じではないか?少なくともこの話のテーマでやってほしくなかったな。ていうかシンプルにつまらん。
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LGBTはじめ、こういったテーマを描く創作でありがちですが。マジョリティからの迫害を描くのにちょっと冷静さを欠いている感がありますね。冷静さというか客観視?
肩ぶつかったら謝ろうや。つむぐ君が虐められてるのは性格が悪いからじゃないか?描写不足でそう感じてしまう。
いじめシーン、テンプレで無理筋じゃない?すごく浮いてる。スルーするには大きな部分だしあのヤンキー君は何があってなんでつむぐくんに暴行を働いてるんだ?そして作中でお咎めはない。どういうつもりで差し込んだシーンなんだ?
・性的マイノリティが迫害を受けている
・主人公の優しさ
を示すために用意されただけの空虚な描写だった。ヤンキー1人だし。あのいじめてるヤンキーくんこそ学校での立ち位置ヤバそう。
シンプル疑問なんだが、女性の同性愛に対するイジメが男性からされることってあるのか?いや、なくないんだろうけどなんか違和感。
と思ったら反対のチームではつむぐくん男性キャストだったのか。
そこは調節せえよ!!
そら違和感生まれるわ。ますますポーズじゃん。雑すぎる。し、なんだか失礼じゃないか?現実で大きく議論され続けてるヒトの在り方の問題でそれこそ死ぬほど繊細なところなのに。こんな風に雑に作劇のパーツとして使うなんてちょっとキツい。
お父さんへのカミングアウトにしても持って回ったわりにテンプレすんなりで全く腑に落ちなかった。
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途中でやっと気づいたけれどこれは主催者が「歌をうたいたくて」やってる企画なんだな。芝居の狭間の歌唱かと思ってたけど逆だ。これは演劇ではなく幕間が長い歌謡ショー。
推しの俳優さんが沢山出てるので観に来たけれど、楽しむ回路を間違えたかも。やはり脚本演出芝居を1人でやってるようなとこはオナニーになりがちだ。せめて最後心乃音さんに任せてれば全然感想違ったんですが…。なんで着替えさせたんや。
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ショボショボの振り付け稽古シーンなんだったんだろう。ヌルっとなんかしてると思ったら1分くらいで休憩入ったし。
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急に死ぬ。急に死ぬな。創作でありがちな容態の急転直下。全力でライブ繰り返せてる人間がいきなり死ぬ病気って?そしてそれを死ぬまで隠し通せる病気ってなんだ。粉薬でなんとかなるのか?「死ぬ」にせよ「隠す」にせよ説得力のある描写が欲しかった。
うーん構成が作家さんの中だけで繋がってる感じだな。観客との共有がズレてる気がする。正直ついていけてない。
そもそも場面の切り替わりが多すぎる。何が起こってるか理解する前に変わるから集中できなかった。
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しかし登場人物みんな気取った言い回しばっかりするなぁ。高校演劇みたいだ。
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昨今の福岡の小演劇(いや福岡に限らずかも)値段とクオリティに差がすごいガッカリ企画が多すぎる気がする。そしてそれでもTwitterでは賞賛しか見当たらない。自分の感覚が疑わしくなってくる。
それでも団体が黒字で公演が続いてファンが喜べばOKでしょうか。OKなんだろうなぁ。
もやもやと帰りました。長いし首も疲れた…。