作/演出:赤阪陸央
会場:湾岸劇場 博多扇貝
チケット料金:1,000~2,000円
上演時間:約70分
公演の説明
昨年の福岡学生演劇祭で旗揚げした劇団焚火の初の自主公演。 →団体Twitter
あらすじ
「とりあえずさ、入れてよ。」「はい?」「君だと思うから。多分」「なにが?」
5階建ての4階にある僕の部屋には都市高速しか見えないたった一つの窓 壁掛け式のエアコンはちっとも効かなくて そんな部屋で僕と君は出会った。
僕とあの子とあの弧の物語。 ※公演チラシより
キャスト
赤阪陸央 斉藤風央花
以下:雑感
頭でっかちでセンスがないと思いました。やりたいこと表現したいことの雰囲気はなんとなくわかるけど全然刺さらない。机の上、文章の中から出てこれていない印象。役者2人いるがそれぞれ「作ってきたもの」でしか会話できておらず、生身のやりとりになりきれていなかった。人物2人と、地球と月の関係性をリンクさせたかったのはわかるけどシナジーが生まれてない。要するに意味わかんねぇ。役柄通りのイキり大学生が作った舞台って感じだ。
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博多扇貝。いつぶりだろう。ジャカっと雀の解散公演以来かも。その名の通り扇型のスペース。劇場の構造上、直径1mくらいの黒い柱が3本アクティングに並んでいる。柱の他に小上がりの島が三つ。真ん中の柱を囲んで直径3〜4mくらいのドーナツ型の島。高さは30㎝くらい。カミ手シモ手に高さ50㎝くらいの円柱の島が二つ。全てグレーパンチで化粧してある。
全体的にグレーと黒。オーソッドックスで無機質な印象の素舞台。
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イキりクズ大学生と依存先を探してる毒親持ちメンヘラ女子大生の付かず離れずぐずぐずの大学生活と、月と地球の付かず離れずの距離感を対比させて描く。惑星と衛星の周回軌道が描く弧と、あの子と孤独の「こ」もかな。色々とかかっていた感じ。入学から4回生までの間、男が堕落して単位とれずにパチンコ浮気。女は男のダメなところに気付いてはいるものの離れられず…。みたいな。特にオチらしいオチはない。前説後説とシームレスに切り替えていく。ケレン味を排除して「自然さ」を目指した演技作りなのかな。しかし正直“ダメな方”の自然さで聞きにくいったらない。声量の調整を意識してない。これは役者の技量かな。
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前説からの導入のやわらかい入り方は結構好きだったが…、本編入ったらもうキツかった。
作家の知識経験の薄さと偏りが感じられた。基本的に主人公・海野くんの独白で進むわけだが、たらたらと台本のセリフを読み流すだけで聞いている観客への意識がほぼない。なんも準備してないレポート発表聞いてるみたい。その癖しょうもないところだけ半端にディテールが細かくて聞いてて恥ずかしくなってくる(パチンコとか)。
冒頭見下していた人種と同じ、目的もなくダラダラと落ちていく様は皮肉が効いていてキャラとしては立っていたかな。しかし共感性が低いうえに魅力もなく全く没入できない。上擦った演技も相まって終始痛ましかった。
また役者同士のキャッチボールもお粗末。一見して二人とも「読み」は多少できてるので成立してる感じだがエネルギーの交換がほぼ行われないのでさっぱり盛り上がらない。あらかじめ決めてきた感情のみで出力しあってたように思う。
ただ、キャラクター二人の“閉じた”感じを表現していたとしたら、上記の選択は正解かもしれない。どうだろう。表現だったのかな。
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「わが星」みたいな雰囲気作りたかったのかなぁ。
・海野の視点
・なつきの視点
・(多分)地球と月の視点
の三方向の場面があったんですがいかんせんバランスが悪かったな。6:3:1くらいの割合の配分で、ほぼ性格の悪い大学生が落ちぶれて浮気したことしか印象に残ってない。
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舞台装置のデザインはよかった。かな?特殊で使い難い扇貝で味を出そうと工夫が見えました。パンチや蹴込み布ブニャブニャで汚かったけどまぁご愛嬌でしょう。
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拙い部分が多々あるシンプルつまらない演劇でした。70分がすごく長かった。とはいえ初の自主公演(旗揚げ公演とは違うのか)。これからの進化に大いに期待します。