観劇・感想

観劇感想:舞台「ダブル」

作:青木豪 演出:中屋敷法仁 原作:野田彩子『ダブル』(ヒーローズ刊)
会場:紀伊国屋ホール
チケット料金:8,500円
上演時間:約140分

公演の説明
月刊ヒーローズ連載中の演劇漫画「ダブル」の舞台化。主催はネルケプランニング。天才役者とその代役という特異な関係性を鮮烈に描き、第23回文化庁メディア芸術祭マンガ部門で優秀賞を受賞した野田彩子の漫画『ダブル』の舞台化が決定。 ※公式サイトより
あらすじ
天性の魅力で徐々に役者としての才能を開花させていく宝田多家良と、その才能に焦がれながらも彼を支える鴨島友仁。互いに「世界一の役者」を目指すライバルでありながらも、どうしようもなく惹かれあう二人の関係を繊細かつ大胆に描く。 ※公式サイトより
キャスト
宝田多家良/和田雅成 鴨島友仁/玉置玲央 轟 九十九/井澤勇貴 冷田一恵/護あさな 今切愛姫/牧浦乙葵 飯谷宗平 永島敬三

以下:雑感

腕が疲れても拍手する手が止まらなかった。最高と言える観劇は沢山ありましたが間違いなくその一つ。最高によかった……。名状し難い濃密なこの関係をなんと呼べばよいのか。2人で1人、1人が2人。ダブル。あぁ素晴らしき「演劇」よ。

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劇場は新宿、紀伊國屋ホール。原作ファンで柿食う客ファンなので行くしかねぇ!と行って参りました。懐かしき東京。いつぶりだろうか。

舞台は主人公・多家良(和田雅成さん)の新居のマンション。引越し日から始まるので物語は多家良が有名になってから。シモ手にカウンターキッチンや冷蔵庫。その前に懸垂機。中央にラグとちゃぶ台(こたつ)、奥に向けて玄関トイレなど。カミ手にロフトに上がる階段があって上はロフト。お布団がある。ツラ側に向かってベランダ。引っ越ししたてで真っさらだった部屋に、時間経過とともに物が増えていく。作中スクリーンが降りてきてLINEトーク画面や友仁(玉置玲央さん)との役作り妄想シーンなどが映されたり。また、部屋の白壁にはプロジェクションマッピングで劇中劇の背景が映されたりなど。『初級革命講座 飛龍伝』の告知は鳥肌が立った。

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開幕「白鳥の湖」から。いやぁこれは“わかってる”人が演出してる〜〜〜。さすが青木豪&中屋敷法仁。めちゃくちゃアガったと同時にホッとした。確実に面白いものが出てくる信頼感。舞台化にあたって「どこを」描くのかずっと気になってたけどこれ以上ないスタートなのでは。

最初の掛け合いからしてずっと面白い。めちゃくちゃ多家良と友仁だ…。原作でも感じられた二人の空気というか、見えないけど確かに濃密にある矢印みたいなのが出ててすげぇ。この二人、というかこの座組マジでマジに挑んでる。こんな感想すごく烏滸がましいというか、愚かな言い分ですがすごく嬉しかった。同時に畏敬の念が湧いてきた。(大袈裟な言い方ですが他の語彙がない)140分間あっという間だったな…。パンフも買わせてもらいましたがほんとに密な関係性を築かれてたんですね。コロナ禍を思うと色々感慨深い話だ。

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演出よかったなぁ。単なる会話劇だけど板の上を目一杯使って全然飽きが来ず、かつスムーズな進行。楽しかった。

とてもよかった時ほど具体的な感想なんも出てこないな。あの、好きでした。全体的に。ランタイム2時間20分って告知してて幕が降りた時ドンピシャ16:20だった時は鳥肌が立った。すげぇよ。ていうか怖えよ。なんだこの人たち。納得のトリプルカテコ。震えました。拍手をさせてくれ〜〜賞賛を贈らせてくれ〜〜という気持ちになりました。

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しかし言いたい。

飯谷宗平(永島敬三さん)って誰だ??????

いやマジで最初舞台版オリジナルキャラかと思ったら見終わった後の原作者さんのツイートで気づいた。いたよ。飯谷さん。これは覚えてねぇ〜〜〜。でもめっちゃいいキャラ〜〜〜。後半につれ重たく引き絞られて行く中でものすごい清涼剤。コメディリリーフでしたね。ほんとにメインキャラでいたんじゃないか?すごく好きになりました。いるよねこんな先輩。の詰め合わせたような、楽しい人だった。

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劇中無言劇の例として「水の駅」が出てきた。知ってるモノが出てくるとなんだかソワソワとともにニヤけてしまいますね。観ましたよ(^^)あれ福岡でもあったんですよ。まさに言葉に出来ないモノが込み上げてきて泣きました。”演じる”って容易で難しいよなぁ。

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2人とも声がデカい。そこだけでもう「良い」。身体の出来てる俳優の素晴らしさよ。「俳優」と「役者」の違いを考えるなど。誰しもが役者になれるけども、職業俳優とは意志を持って鍛え抜いた者の特別な称号なのではないか。とか。わからんね。

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「男の誠実に踏みつけにされる女の気持ちだよ」

原作でも思いましたがこれを男2人に言わせるかというね……

キスが……その周辺がもう……ヤバい。ギュ〜〜〜ってなるんですよ。なんだこいつらの関係。温度と湿度が高すぎる。2人とも逃さないようにか、”頭”抑えるんですよね。肩抱いたりとかじゃなくて。あ゛あ゛〜〜〜〜ってなった。なんとも言えねぇこれ。

世界一の役者になりてぇなぁ。これ一度でも真剣に役者触ったことある人間なら誰しも考えますよね。天才も凡才も関係なく。私自身烏滸がましくも、かつての感覚を思い出しました。羨望渇望欲望焦燥とかとか、いろいろ煮詰まった感覚。その対象を真横に置いたまま付かず離れず進んできた2人の想いとは……。

言葉にならねぇ〜〜〜〜。陳腐ですが、ダラダラ涙出てきたし気づいたら拳握ってました。

ラストの横並びもよい。よかった。とても。

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本当に良いモノを観た…。「演劇」や人間に対する誠実さとか愛を感じられた気がする。9日から配信開始だそうです。遠方で見れない人も是非ぜひ見てほしい。映像化もしてほしい。ずっと何度でも観たいし手元に置いておきたい作品。最高の観劇でした。ありがとう舞台「ダブル」。