前半→①
[ d ]『泥棒初め』
出演・脚本:細田昌宏(劇団シバイヌ)
演出:宮﨑萌美(劇団シバイヌ)
あらすじ
なにをやっても上手くいかない熊五郎が選んだ仕事は泥棒稼業。
正直者でおっちょこちょい。空き巣に入れど失敗続き。
番犬に追い立てられて、とっさに隠れた裏長屋には、家を出たきり会っていない、実の母親が住んでいた。
あんた、熊五郎じゃないかい?
男は思わず嘘を吐く。―いや、人違いだ。
嘘と出鱈目の間からチラリとのぞく人の情。
立って演る落語「立ち噺」、しばしの間、お付き合いを願います。
以下、雑感
いや面白かった!最初ちょっと緊張が見えましたが気付けば勢いに乗って笑いがたくさん。こういう「立ち落語芝居」ってなんか名前あるジャンルなんだろうか。
と、思ったら「立ち噺」ですって。造語かしら。
語り口、キャラ変はもちろん、身体表現が達者で面白かった。あと普通に話が好き。吊るされてくるくるはもう楽しすぎた。賑やかな憎めない面々、普通に大人数でのお芝居でも観たいと思いました。
[ e ]『食べて往くこと』
出演:松尾佳美
脚本・演出:田村さえ(灯台とスプーン)
あらすじ
この店に来ると、私はいつも窓ぎわの席でホットケーキを注文する。ホットケーキは食事としての体裁を保ちつつ、ご褒美的役割も果たしてくれて便利だ。食べつつ今夜の待ち合わせ相手を待っていると、窓の向こう、公園のベンチに座る女に気が付く。彼女は一昨日も同じ格好でそこにいた。と、不意に目が合い、あっと驚いて逸らす。皿の上のホットケーキは今日も美しく、私にやさしい。これから会う相手も、やさしい人だといいのだが。
以下、雑感
小演劇人の嫌なあるあるもりだくさん。奇しくも荒木さんと同じく35歳。売れない食べていけない演劇人のお決まりルートの負の現実を、魂の叫びを聞かされました。タイトルだけ見た時は「食」に関することだと思ってましたがある意味虚をつかれました。
俳優として、大人として娘として女性として。やっておきたいこと、やっておきたかったこと。社会的にも個人的にも。売れてない俳優はな~~~んもないんすよね。全然理想図と違う。私の人生これでいいのか諦めて”真っ当”な人生今からでも立て直した方がいいんじゃ… でもそれがなんだ!好きなことやって生きていくぞ!というやつ。
どの位置から物申すかで感想変わるよなー。社会人からなのか同じ演劇人からなのか。私も散々迷いましたね…。30越えるとね…。でもどこまで言っても”最初の自分”が消えないんですよね。色々思い出しました。
なんだか色んな意味で胸にくる、いたたまれない気持ちになる話でした。悪い意味でなく。松尾さんの演技もまた、コンプレックスむき出しのままな感じでなかなか刺さってくる。よい演目でした。
[ f ]『名前のつかない有様に』
出演・振付:尾沢奈津子(N-Trance Fish)
脚本・演出・音楽:勝山修平(彗星マジック)
あらすじ
季節は秋。【君】に話かける女。
家のこと、天気のこと、鳥のこと、花のこと、日常のこと。
とても大きな出来事のあとからはじまり、名前のつかない有様に辿り着くまでの、【君】と女の1年間。
ダンサー・振付家として長く活躍し身体で語る事のできる尾沢が、新たに台詞という武器も手にしてあなたに語りかける、圧巻の30分。[招聘作品 from大阪]
以下、雑感
とても素晴らしかった。胸がきゅうきゅうと締め付けられるようだ。
今は梅雨ですが、冬の空気が思い起こされるような気がした。最初うっとおしいくらい過剰な身振り手振りに訝しくなりましたが、物語が明らかになるにつれ全てのアクションに意味が生まれて目が離せなくなった。繰り返される”会話”にも繰り返すごとに新たに意味づけがなされていってなんかもう…切ない。「子供向けのダンスみたいだな」って思ったけど間違ってなかった。間違っとけよぉ〜〜泣くわこんなん。
ダンサーさんでもあるんでしょうか。色で言うならレモン色ってくらいのハッピーエネルギー溢れてる表現の裏の、切なさとか苦しみツラさが序盤とラストで段々変わってきてもう、すごかった。アホみたいな感想だが。
カテコ、これがフェスじゃなかったら確実にダブカテ起きてたくらいの拍手の厚みを感じました。
事件になるほどではない、名前のつかない切ない”日常”が溢れてるんだろうなこの世界。私もその中のひとつか。素晴らしかったです。
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今年も楽しみました。FUKしか見れてませんが年々安定して参加作品のクオリティが上がってきている気がします。今年も平均して皆さん面白かった。これは全体的な底上げがされてきていると見てもいいんでしょうか。明るい未来が感じられた気もします。独り芝居は通常よりむき出しになる感じがしますし、個々人レベルで意識が上がってきてるのかなぁなんて。わかりませんが。
しかし今年は突き抜けて胸に残るモノも無かった印象です。去年の招致作品が良すぎた。来年もまた楽しみです。どんな中身が見れるやら。