観劇・感想

観劇感想:ワンツーワークス『R.P.G. ロール・プレーイング・ゲーム』福岡公演

作:宮部みゆき 脚本・演出:古城十忍
会場:福岡市立西市民センター
チケット料金:2,000~3,000円
上演時間:約120分      公演特設サイト

公演の説明
古城十忍による宮部みゆき原作のミステリー小説「R.P.G.」の舞台化。過去数回上演されているが、ワンツーワークスでは初上演。日本劇団協議会主催「アートキャラバン2」参加公演。赤坂REDシアターを皮切りに全国8かで公演される。
あらすじ
お父さんが殺された。お父さんには秘密があった……。宮部みゆきの傑作ミステリー小説を完全舞台化!
ある日、建売住宅の建築現場で刺殺された死体が発見される。すぐに身元は判明。被害者の名前は「所田良介」。妻の「春恵」、娘の「一美」と暮らす平凡なサラリーマンだ。ところが、現場に残された遺留品がその3日前に起きた女性絞殺事件の遺留品と一致。二つの事件は同一犯による連続殺人なのか……?捜査を進めるうちに、警察は驚きの事実を次々に突き止める……。
キャスト
奥村洋治 関谷美香子 長田典之 川畑光瑠 東史子 みょんふぁ 小林桃子 安森尚 小林諒音 綾城愛里奈 原田佳世子 小田原麗 増田和 小山広寿 金原直史

以下:雑感

お~~すごく面白かった!!さすがの宮部みゆき。古城十忍ワンツーワークス。タイトル通りだったなぁ。鳥肌が立ちました。物語のパワー凄い。そしてそれを十全に伝える演出と演技。とても良質なサスペンス演劇を観た。良い時間でした。

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劇場は早良区の西市民センター大ホール。舞台上舞台、と言っていいのだろうか。

壇上パンチの上に平台で9×4くらい(目算)のエリアが作られていて、ところどころ黒いフェンスで囲われている。ぱっと見バーリトゥードの金網リングっぽい。上部は星座?というか、「刑事ドラマとかで捜査の時ホワイトボードに貼るピンさして線でつないだやつ」みたいなやつのような意匠。なんて言えばいいんだろう。白い分子モデルみたいな。

エリアの中には変形するダイニングテーブルとチェア。リビングルームと取り調べ室の2パターンで場転する。エリアに隣接してシモ手奥には2メートルくらいの高さのひな壇があり、マジックミラーの向こう側ということで基本的に一美が座って取り調べ室を観察している。

抽象と具象がいい塩梅でした。

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物語の舞台は2000年、くらい。まさしくそんな匂いした〜。あの時代の空気というか、IWGPとかあの辺のドラマ見てたら出てくる匂い。

すごく主観的な感想ですがそこもすごくよなった。ホントに小説の世界そのままひっぱり出してきたんだなあと感心するばかり。これも2.5次元っていうのかしら。実は。

衣装とかもその辺しっかりコーディネートされてて良かった〜。

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のっけから引き込まれたなぁ。統一された身体性にギュッと目を意識を奪われました。訓練された俳優最高。オープニングからもう面白いのわかりましたね。シーンの転換もテンポよく、キャスト陣の稽古量とイイ緊張感が感じられて惚れ惚れしそう。全国ツアーしてるだけある。流石。

「演出」の存在がすごく感じられた舞台だったな。俳優の統一感もさることながら、小説だったら章ごとに変わるであろう場面を同時並行で進めつつ。時間まで巻き戻してリフレイン。しかもサイレントで前の場面演じ直す。

ものすごく大変だこれ。綿密なディレクションがあったんだろうな。でも楽しかっただろうな俳優としては。こんな芝居やってみたかった。

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演技の種明かしのシーン。ゾワっと来た〜。まさに「RPG」。全員がロールプレイしていたとは。最初はweb上の擬似家族のことを指してるだけかと思いきやまさかの。宮部みゆきだなぁ〜〜すごい好きなんですよ。「堪忍箱」とか。「ブレイブストーリー」から入ったクチですが。しかしこちらは原作未読なのでこれを機に買います。

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家族の在り方。もですし個人の在り方もですかね。パンフにもありましたが、現代にも通じるものがありますな。主にネット環境をはじめ文化風俗は大きく変化していっていますが、人間の求める物。拠り所とするトコロは変わらないのかもしれません。

アイデンティティの喪失が1番”効く” のかもしれませんな。作中舞台よりも一層他人を傷つけることが容易な現代。慎重に過ごしていきたいものです。

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惜しむらくは一回こっきりでお客様少な目だったかも。福岡の演劇好きな方々にあんまり届いていなかったのかしら。たくさんの方に観てほしい。
残りの公演もがんばってください。ご無事で終わりますように。福岡にもまた来てもらえますように。面白かった!