映画・感想

映画感想:「ある閉ざされた雪の山荘で」

2024年製作/109分/G/日本
配給:ハピネットファントム・スタジオ

あらすじ
劇団に所属する役者7人に届いた、4日間の合宿で行われる最終オーディションへの招待状。新作舞台の主演を争う最終選考で彼らが“演じる”シナリオは、【大雪で閉ざされた山荘】という架空のシチュエーションで起こる連続殺人事件。出口のない密室で一人、また一人と消えていくメンバーたち。果たしてこれは、フィクションか? それとも本当の連続殺人か?彼らを待ち受ける衝撃の結末とは――
公式サイトより

以下、雑感

いや良い話だったな。さすがの東野圭吾作品。キャストの皆さんも実力派ばかりで見応え十分。見飽きないよう映像化の強みが活きてて良かった。しかしながら小説だったからこその強みもやむなく消えてるような気がして1人で歯噛みしながら見ちゃったぜ。重岡くんの芝居好きだな。そして岡山天音さん。しかしミステリは表だったところに感想書きづらいぞ!

*****
原作は未読。なんと30年前の作品なのか。スマホどころか携帯電話の普及率も全然だった頃だ。これを令和にアジャストしてきた監督製作陣すごい。めちゃくちゃ讃えられてほしい。すごい神経使った作業だったろうなぁ。おかげで変な引っかかりもなく最後まで楽しめた。
ラストの山荘から舞台への切り替わりはグッときたな。まさしく会話劇向けのお話だ。しかしこれは演出が一番むずくて一番楽しい類の演目だろうな。これ持ってこられた時の先生の顔見たい。

*****
しかしながら映像化による楽しさもそれによるデメリット(というほどでもないか)もあったよな。雪国「設定」と現実の切り替えがすごくわかりやすくて、視覚的な楽しさと奇妙な違和感を体感できた。館内マップやプロジェクションマッピング的な偽教授アナウンスもエンタメ的で。現代の鑑賞者に向けての”見やすさ”をすごく意識して「娯楽映画」を作り上げていたなぁと。ただ構造判明時の衝撃は絶対文章のほうが強烈だっただろうなと。死体が出てきてないということが明確に映像化されてしまうと神視点を持ってる側としては緊迫しきれなかったのかも。小説だと見えてない死体も脳内に置いておけるからなぁ。いや全然楽しんだけれど。情報量が増えると先読みもしやすくなるよね必然。

*****
演じてる皆さんはどういう心境なんでしょうね。というのも現実世界の俳優さんたちは何層目のつもりで演技するんでしょうかという。言語化しがたいけども。例えば雨宮を演じる戸塚さんは、戸塚純貴としてのいうなれば0層目と、雨宮としての段階と、素直にオーディションを受けに来た1層目、事件に巻き込まれたという2層目、そして仕掛け人としての3層目と。演じる上での意識の置き方が難しい役だったろうなと。全員。
劇中劇みたいな作品はその辺りわかんなくなりがちでした。役者くずれとしては。何が言いたいかというとキャスト陣皆さん凄い。

*****
小劇団あるあるみたいなのって原作からどのくらい変更されてるんだろう。現役時代のことを思い出して謎になつかしくなってしまった。もちろん私のいたところはそんなに大きなところではなかったですが。あんまり原作から変更されてないとしたら小劇団の現状も30年前からあんまり変わってないところもあるんでしょうな。役者の集まりなんてそんなもんでしょうか。水滸ってどんな感じなんでしょうね。主演張るのが人生変える規模なのだとしたら結構なバリュー。体感的にはキャラメルとか四季とかくらいの規模感??いやわからんが。

キャラ毎の「いるいるこんな俳優!」感凄かったな。いるよ。いたよあんな俳優たち。

*****
エンドロール。そういえばジャニーズ(今は言っちゃダメなんだっけ)主演映画だった。主題歌はWEST。なんか”ジャニーズWEST”じゃないのって違和感ありますね。それはそれとしてカッコいい歌だった。”ジャニーズ主演”ってだけでまぁまぁ色眼鏡かけてしまう年代の私ですがED時には大いに反省しました。キャスト陣の背景なんてすっかり抜けて没入できました。
重岡大毅の芝居、良い。最後までハラハラして観れました。そして終わってからこれまたメタ的な気づき。犯人だれかとか全然わかんなかったんだけど、間宮祥太朗が重要ポジじゃないわけないから気づけそうなもんだったな。おもしろくて物語の外のことを忘れられたのはホントによかった。

*****
ミステリはいいなぁ。砂糖みたいな派手な甘さとは違って出汁みたいなじんわりくる良さ。会話劇は俳優さんの地力が感じられていい。各メンバーこの先も追っていきたいな。

とりあえず原作読もう。