2025年製作/129分/PG12/日本
配給:東映
劇場公開日:2025年6月27日
あらすじ
2003年
小学校教諭・薮下誠一(綾野剛)は、保護者・氷室律子(柴咲コウ)に児童・氷室拓翔への体罰で告発された。体罰とはものの言いようで、その内容は聞くに耐えない虐めだった。これを嗅ぎつけた週刊春報の記者・鳴海三千彦(亀梨和也)が”実名報道”に踏み切る。過激な言葉で飾られた記事は、瞬く間に世の中を震撼させ、薮下はマスコミの標的となった。誹謗中傷、裏切り、停職、壊れていく日常。次から次へと底なしの絶望が薮下をすり潰していく。一方、律子を擁護する声は多く、”550人もの大弁護団”が結成され、前代未聞の民事訴訟へと発展。誰もが律子側の勝利を切望し、確信していたのだが、法廷で薮下の口から語られたのは「すべて事実無根の”でっちあげ”」だという完全否認だった。
これは真実に基づく、真実を疑う物語。 ※公式サイトより
以下、雑感
胸と胃が痛くなる映画だった。「殺人教師」のレッテルを貼られた男性の話。なんと福岡の事件だそうで。メイン二人の二面性が大いに楽しめる。しかし追い詰められていく主人公の様がもうホント辛い。とてもよい映画でした。
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あれよあれよと悪くなっていく状況にもう、胃がキリキリする。観ててこれだから当時のご本人の心境なんか想像もできないな。そんなことを感じさせるキャスト陣のパワー。すごかったな。今のリテラシーとコンプラ的には大体全部悪手。現場のマニュアルは血で書かれているとはよく言った物で、この話もまたマニュアルの1冊なんでしょうか。
担任の先生とクラスメイトがとつぜんこうなった他のクラスメイトはどんな心境だったのか。その子たちは今どんな大人になっているんだろう。あの家族は今…。
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タイトル出しがすごく良かったな。そこに至るまでのプロローグも。大雨の家庭訪問から始まり、度を超えた差別教師をバリバリに出してくる綾野剛。ことさら被害者然とした柴咲コウ。この時の情感たっぷりな芝居とラストのロボみたいな様とのギャップが光りまくる。そこから台詞ぶつ切りからのタイトルロゴどん。渋い。なんとなく「十三人の刺客」を思い出した。と思ったら同じ三池作品だったわ。カッコいい。センスが光る演出だ。
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薮下先生(綾野剛)の芝居が本当に良い。MIUやカラオケもそうだが、好きだわ〜。
追い詰められると胃の辺りが縮こまってくるんだよな。ストレスを感じてるのがめちゃくちゃ伝わってくる。ただ仕事でミスしたとかじゃなくて、「未来が失われていく」のが本当にクるんだよな。テレビ蹴るからの失禁離婚切り出しあたりはもう泣きそうだった。でもやっぱり笑っちゃうんだよな情けなさと申し訳なさとで。あの場面は辛い。脚色あるでしょうが、”これ”が実際起きたとなるとやるせないな。
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序盤と中盤で柴咲コウ、もう顔が違くない?途中から目に見えて歪んでいたような気がする。ラストの種明かしからの反撃、痛快な面もあったけどアレは怖いわ。虚言癖のある人ってああなるのかな。正しくロボットみたいだった。あそこまでじゃないけどみんな知らず脳内で整合性とってしまうものだが……。
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ラストの老け先生良かったな。報せを聞いてにじみ出る喜び。
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とにかく各キャストのギャップが超楽しめる映画だった。昨今(昨今というには長期だと思うが)メディアのあり方にも色んな限界が見えてきている。嘘もホントも溢れかえっているこの時代にこの映画が出たのはすごく、時代だなぁと思うなど。マスコミってずっと変わらないね。
みんなもっと観に行くといい。亀梨くんも出てるし。北村一輝も出てるし主題歌はキタニタツヤ。実力派しかいないのでは?