観劇・感想

観劇感想:劇団☆新感線「紅鬼物語」

作:青木豪 演出:いのうえひでのり
会場:SkyシアターMBS/シアターH
チケット料金:2,500(U-25)~15,000円
上演時間:約235分
公演の説明
劇団☆新感線45周年イヤーの第一弾公演、“【譚】Retrospective”と銘打ち、これまでにない新たないのうえ歌舞伎、新感線流お伽噺。
あらすじ
昔々、そのまた昔。都には鬼が現れ、人々を襲っていた。貴族である源蒼 みなもとのあお (鈴木拡樹)の家臣、坂上金之助 さかがみきんのすけ(喜矢武豊)も鬼に襲われるが、反撃して片腕を斬り落とすと、鬼は捨て台詞を吐いて飛び去った。これを蒼に報せると、それを聞いた同じく家臣の 碓井四万 うすいしま (千葉哲也)は、蒼の奥方が神隠しに遭ったのも、鬼の仕業ではないかと言い出した。10年前のある朝、奥方の 紅子 べにこ (柚香光)と娘の 藤 ふじ (樋口日奈)は忽然と姿を消した。庭には鬼らしき足跡が一対、残されていたという。それから紅子たちの行方は杳として知れない。それでも「紅子と藤は生きている」と信じる蒼は、鬼の根城を探し出し、二人を取り戻そうと心に決めて、金之助、四万、そして 桃千代 ももちよ (一ノ瀬颯)らと陰陽師の阿部辺丁迷(あべべていめい)のもとへ。だが、そこに金之助を襲った鬼の 栃ノ木 とちのき (早乙女友貴)がやってきて、桃千代を連れ去ってしまう。栃ノ木を追いかけ、蒼たちはシノナシ国へ向かった。その頃、紅子と藤、紅子の両親は、シノナシ国の小さな村に身を寄せていた。紅子と藤の舞の見事さに村長の 八十八 やそはち (粟根まこと)は感心するばかり。そして八十八に尋ねられた紅子は、村を訪れた経緯を語り始めるが……。
ともに生きるか、ともに死ぬか――。
血の宿命に引き裂かれた二人の、哀しきお伽噺が今、幕を上げる。
公式サイトより
キャスト
鈴木拡樹 柚香光 樋口日奈 喜屋武豊 早乙女友貴 一ノ瀬颯 千葉哲也 粟根まこと 右近健一 河野まさと 村木よし子 インディ高橋 山本カナコ 磯野慎吾 吉田メタル 中谷さとみ 村木仁 川原正嗣 武田浩二 川島弘之 あきつ来野良 藤田修平 北川裕貴 米花剛史 武市悠資 本田桜子 藤晃菜

以下:雑感


最近ではかなり好きな新感線だったな。「戦!」とか「国の存亡!」とか関係ない、もっとクローズドな運命の話。異類婚姻のその後というか。

人喰いとか、「麻」とか生臭いシーンもコミカルな芝居と演出でそうなりすぎないような場面が多く、普段の新感線よりラフに笑えて良かった。殺陣はいつもいい。

*****

わざわざ言うまでもないが、頼光四天王と鬼退治らへんのオマージュ。歴史のあの辺すごく好きなんですよね。歴史の中でも不明瞭で妖しさとカッコ良さが詰まっている気がする。

金之助がいいキャラしてる。カラーリングも全員淡くてよき。やっぱ『四天王』っていいわね。

エアギターイジりは普通に笑った。歌上手いし。

*****

妥協せずに鬼という化け物を化け物として現してるのがすごく好きだったな。ツノとか牙とか爪とか。演劇だとどうしてもチープになってしまうけど、「人外」が言葉以外でも感じられて最高。

*****

鬼と人との恋。でもサスペンスホラーな側面もあったりして、先の読めないハラハラした物語だった。「麻」とか出てきたらもうやぁね。

粟根まことの村長。人間の業だなあーイヤらしく、滑稽で憐れだった。B級洋画の悪役みたいで好き。

大麻でラリるとあんな風景なのかな。経験は無いが。「サムライチャンプルー」の大麻回もあんな絵面だった。

*****

早乙女ゆうきの終盤はまさに鬼気迫るものがあったな。栃ノ木すげー好きかもしれん。

鬼目線からすると栃ノ木たちの言ってることが正しいんだよな。鬼の当たり前だから小難しい言葉で飾ったりしない、乱暴だけどまっすぐぶつけてくる気持ちが心地よかった。同時にその行動や気持ちが狭間にいる紅子にはどうにも刺さりきらないのがもどかしく、痛々しく、見てるこっちの胸にくる。

しかしこの人が刀振ると締まるなぁ〜。どれだけ緩い空気出してても、「あ、こいつヤバい。このままだと殺される」みたいにすぐ持っていかれるもんね。キャスト陣みんなお上手だけどやはり早乙女兄弟は別格。ていうか異質だよな。なんか一振り一振りの質感が違う気がします。素人目線ですが。いつ見ても好き。

皆さん、慣れてない人にも待ったり合わせてるのがわかる。けど全体的にそんなこと感じさせない訓練されたプロフェッショナル集団アクションだったと、今回はわかりやすかった気がする。人数の問題か?

殺陣で言うと四天王それぞれ個性あって好き。あとやっぱ弓矢。舞台だと使いづらいからあんまり観れないし。ワクワクしちゃう。

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この件のあとの蒼さまの領地は大変なことになっただろうな。残された四天王たちで切り盛りするのだろうか。

お互いがお互いを思って動くほどに裏目に出てしまう。日本の昔話は異種間で悲恋が多い気がするな。ギリシャとかは子供作って化け物になるパターンが多め、か?

紅子の柚香光さん。初見でしたがとても好きになりました。心の揺れ動く様が…

本音を押し殺して殺しにかかるところの切なさときたら見てられんな。見入ったが。素晴らしかったです。

*****

今回もすごくよかった。そして次回作、

『爆烈忠臣蔵~桜吹雪 THUNDERSTRUCK』

もう100パーオモロい。楽しみだな。温度差エグそうだ。