映画・感想

映画感想:映画「8番出口」

2025年製作/95分/G/日本
配給:東宝
劇場公開日:2025年8月29日
あらすじ
地下鉄の改札を出て白い地下通路を歩いていく。天井には【出口8】の看板。しかしいつまでも出口に辿り着くことができない。何度もすれ違う同じ男に違和感を感じ、やがて自分が同じ通路を繰り返し歩いていることに気付く。そして壁に掲示されている、謎めいた【ご案内】を見つける。通路のどこかに【異変】があれば引き返し、なければそのまま前に進む。【1番出口】【2番出口】【3番出口】…正しければ【8番出口】に近づき、見落とすと【0番出口】に戻る。次々と現れる不可解な異変を見つけ、絶望的にループする無限回廊から抜け出すことができるのか? ※公式サイトより

以下、雑感

想定外に超よかった。泣いた。

「異変を見つけて通路を脱出する」というゲームの短いネタを見事に演出、構成してハラハラするホラーストーリーに仕立て上げていた。

95分という最高にちょうどいい尺。異変バリエーションも豊富で怖さの見せ方も上手い。音楽もクレジットもハマっている。超良かったです。

*****

「喘息持ち」にしたのめっちゃ上手いと思った。これだけでただ歩き続ける場面が、ゲームのHPが毒で減っていくみたいな緊迫感を伴ってハラハラした。

正体不明のホラーの最中でも等身大な悩みに共感しやすかった。

少年と2人での会話がすごく好きだったな。同じ危機に立ち向かう2人の、年齢を越えた対等なお喋り。父親のいない同士の共通点から高まっていくシンパシー。

全編通してだけど、感情の昂りや導線がすごくわかりやすい。上手い脚本と演出だ。見やすい。

*****

怪異が嫌すぎる。精神に圧かけてくるの嫌らしいわ〜。親しい人のフリしてくるとかガチで妖怪のやること。

「おじさん」の芝居も上手すぎる。CGを疑われるのも納得。しかし第二幕はキツかったな。ある種バッドエンドわかってる話だし。何回チャレンジしたんだろうか。あのフラストレーションは相当数の試行回数。ラストのあんな見え見えの異変にすがりついてしまうくらいの憔悴してたんだろうな、辛かった。その後のシームレスな「おじさん」化も…。

あの女子高生もかつて取り込まれてしまったんだろうか。

*****

クリーチャーがいいね!!!!!!

“赤ちゃんネズミ”のデザイン最高にキモ良い。群体の怖さと顔を形づくるおぞましさたるや。

設定とか見たいすぎる。

多分だけど「異変では死なない」みたいなルールあったぽいよね。普通のモンスター映画だったら絶対あそこで3人くらい食い殺されてる場面。

だからラストの津波でニノが沈んだ時は「え!?死ぬ??」ってかなり驚いた。生きててよかった。

赤ん坊の鳴き声、滲み出す血、じっと見てくるポスター、津波。全部最悪。

*****

音楽全部良かった。気持ちよく、気持ち悪く、場面場面にジャストフィットだった。

って思ってたら中田ヤスタカかい。そりゃ良いわ。

ラストのドラムが、ニノの中でふつふつと湧き上がる勇気や義憤、小さな正義感の起こりとリンクして最後の瞬間までドキドキして見られた。「行けぇ〜〜〜!!」って思っちゃったし。

エンディングへの入りも最高。

異界系の話だと、「大局的にはなにも変化はないけど、主人公たちの内面に小さなキッカケを与えた」みたいなオチがすごい好みで。「ブレイブストーリー」とか、ひと夏の冒険みたいなね。

出口のない満員電車みたいな人生に少し風を入れるような、そんな前向きさが感じられるとても好きなオチでした。やってることは大したことじゃないかもしれないけど。

いい映画でした。