観劇・感想

観劇感想:EPOCH MAN「我ら宇宙の塵」

作/演出:小沢道成
会場:J:COM北九州芸術劇場 小劇場
チケット料金:1,500~5,500円
上演時間:約100分
公演の説明
パペット×映像テクノロジーの融合で描く、極上の演劇体験。無限の想像力によって広がる、命と宇宙の物語
あらすじ
少年は、父の行方を探しに家を出た。その少年を探しに、母も家を出た。長い長い旅の途中、会った街の人に聞いてみた。どこに行けばいいのか、と。
―――遺された者達が辿る、宇宙と、この地球の物語。※公式サイトより
キャスト
池谷のぶえ 渡邊りょう 異儀田夏葉 ぎたろー 小沢道成 谷恭輔(スウィングキャスト)

以下、雑感

最高によかったし、楽しかった…。大人から子供まで楽しめるってこういう作品のことなのではないか?遥か太古から現在まで、普遍的に人類が夢中になってきたコンテンツのひとつが「宇宙(星)」かもしれないな。人間は1人では宇宙にいけないが、想像力は時間と空間を超えるのだろう。面白かったー。

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舞台は北九州芸劇小劇場。小さな椅子が4脚。真ん中の椅子に誰かが突っ伏している。最初普通にキャストさんの誰かかと思ったが、小学生くらいの大きさのパペット(星太郎)だった。背面は半円上状にぐるりとスクリーンになっていて場面に合わせて様々な映像が流れる。プラネタリウムなど。舞台中央に穴。役者の出ハケはそこから。

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普通に”見てて楽しすぎる”。ワープは最高ですね。星間飛行もいい。「星の王子様」を思い出しました。
月並みすぎますが。人形の動きが生きてるみたいですごかった。4人がかりで徐々に命を吹き込んでいくようでわくわくするスタートだった。ラストのダッシュもすごい。映像効果も相まって感じたことのない迫力でした。
言葉が少なくなった星太郎くんの様子が無表情の人形と重なって入り込みやすかったな。お父さんが抱っこしたりする様も同様。いつのまにか小道具ではなくキャストの一人として見ていたような気がする。

みんなちょっとずつ「星」モチーフの名前なのだろうか。

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オチも素敵だ。

ロマン的な意味でなく、知識と物理で「お父さんはどこにいった」かに納得するための旅だったんですかね。
全然盲点だったな。「星になる」で「地球も星だよね」「だから遠くにいったわけじゃないよ」は理屈も通っていて素敵だ。死んだらどこにいくのかは、これまた人類の普遍的テーマだと思いますが、これはとても好きな解釈ですね。亡くなっても「いつも傍で見守っているよ」という決まり文句の温かみがすごく増しましたね。
霊魂的な意味はともかく、空に、海に、大地にとけこんで巡っていける。とても希望に満ちた解釈で最高。ラストの絵が色づいていくのも好きすぎる。

信仰してる宗教によっては受け入れ難い人もいるだろうか。日本の神道、アニミズムが根っこにあるからかなぁ。

最終的に 平家さんの死もやわらかく受け止められるようになっていて、キャラクター全員の成長・変化が爽やかだ。前に進めたんですねみんな。

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残されたモノの中にふとした時に”見つける”んですよね。星太郎とお父さんの切り替わりが最高だった。シモ奥で見てたお母さんの顔が…。涙を禁じ得ない…。「青い鳥」じゃありませんが、すぐそばにいたんですね。空気や水や土、そこかしこに記憶の欠片が漂っていて、なにかの拍子にひょいと顔を出してくる。まるでずっとそこにいたみたいに。またそれと会えた時にたまらなく嬉しいんでしょうね。遠くに行ったと思っていたお父さんはずっと近くにいたんですねぇ。ベタかもだけどすごく綺麗なストレートを決められた感じです。最高。
でも「遠くに行った」と思わないとやってられないですよね遺された方は。なにかで読みましたが、「死」への恐怖感はそのモノへの距離で決まると。近すぎる人の死は遠ざけないと心が耐えられないんだろうか、などと思ったり。
星太郎にはお母さんがいたけどお母さんには誰もいなかったものね。それで息子も心を閉ざした(ように見えた)ら自分を責めもするか。共感、とは違うかもだけど、スッと腑に落ちる。

大切な人近しい人を亡くしたら、、みんなわけわかんなくなるんでしょうね。登場人物がそれぞれの解釈で、やり方で向き合っていて。万別なそれそれの様がちょっとじつ痛ましく、でもちょっといとおしく思えました。引き込まれたなぁ。大の大人がみんなして怒鳴りあっている様は滑稽ではありましたがも~見ててつらかったですね。

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ワープが楽しすぎる。
ギャグも全部好きだったな。

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定期的にツアーやってほしい。全人類観たらいいのに。とても良い時間を過ごしました。
これを観たことで、自分も明るく死に臨めるような気がする。ずっと覚えていられそうな芝居だったな。