作/出:到生
会場:ぽんプラザホール
チケット料金:1,500~6,000円
上演時間:約120分(休憩10分)
公演の説明
福岡の劇団ジグザグバイトの1年ぶりの本公演。
あらすじ
喰らうはキグルミ、狩るはキョウダイ。退魔士として世界中を旅するキョウダイ「ユウゾウ」と「ショウコ」は、自らも幼い頃にかけられた魔女の呪いに苦しんでいた。呪いを解く秘術「三つ子の魂百人」の噂を聞きつけたキョウダイが辿り着いたのは日本のテレビ局「NHA」。国内唯一の教育番組を持つ同局では、番組観覧にきた子供がキグルミに襲われ失踪すると言う事件が起きていた。呪いを解くため、同局に歌のおにいさん・おねえさんとして潜入するキョウダイ。事件解決を命じられ、爽やかな体操のおにいさんとして潜入する国際警察捜査官。秘術「三つ子の魂百人」を使い大望を果たさんとするNHA八人衆。果たしてキョウダイは魔女の呪いを解くことが出来るのか。
キャスト
八坂桜子 佐藤柚葉 足立万実 到生 テシマケント 大和屋満福 白瀧姫翠 小田あいか 萩尾ひなこ 立花恭平 來人 顎爺Fujisaki 高橋力也 ともなが舞 小沢健次 岸田麻佑 生野智大 内田琉聖 小川李紗 神田尚旗 木村常康 吉永悠人
以下:雑感
いやぁ~~~~笑った笑った楽しかった。最近忙しくて久しぶりの観劇。それを帳消しするくらいハッピーな時間でした。ともすれば死ぬほど怒られるんじゃないかというくらいギリギリのパロディ満載。形容しがたい様々な”熱”がパンパンに詰まっていて最高なエンタメ演劇でした。エンタメかくあるべし。
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ぽんプラザホール。舞台は小上がり真っ黒な素舞台。結構狭いように見えましたが全く感じさせない。ステージも役者も大きく見えました。それぞれのパワーがすごい。
ハケ口はカミシモ前奥の二つずつと、センター奥に広めに一つ。ぽんの演劇では珍しい?ホリゾント幕が降りていてステージと対照的に背景は白い。タイトルや役者紹介などはプロジェクターでそこに映されてました。オープニングだけだったのは勿体なかったような妥当だったような。わからん。タイトルどーん!は相変わらずよかった。
照明も子供番組パートやシリアスパートでくっきり世界観分けられていて楽しかったな。
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何から語ったら(突っ込んだらいいのか)全然わからんくらいはハチャメチャなことが詰めこまれてました。素敵なことがいっぱいありましたがマジで何を言えばいいんだろう。尻が上位に来るのは確か。令和に小劇場であの笑いが取れるのはすごい。新感線ももはや肌色タイツを着ているというのに。
これ作ってる時楽しかっただろうなぁ。稽古場を覗いてみたいものです。やりたいことがめちゃくちゃあるんでしょうな。しかしハチャメチャな中でも各キャラクター、各役者が全然死なずに際立っていて。演出の到生さんは役者の特性というか、向き不向きを選び取るのが上手いのかもしれませんね。違うキャストで演じた時あの世界がどうなるのか全く想像がつかない。当て書きといえばいいかもしれませんが、奇跡的なキャラと役者のマッチングだったように思う。全てがハマっていた。体格や性差、バリエーションも含めてめちゃくちゃ色鮮やかなバランスのいい敵幹部たちでしたね。ロボもいたし。
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私は中でもこんがちゃん(小沢健次さん)が好きでした。「魔女宅Q」の時から物凄いパワフルでしたね。わけわからんくらいエネルギッシュ。同じ「魔女宅Q」だと見所萬斎の立花恭平さん、なんでもできますねえ立花さんは。棒術もさることながらあの喋りで「どっどど」はもう笑うしかない。外道本道(髙橋来人さん)へのツッコミ?もよかったですあそこの集団芸は好きでした。外道本道はまんま池田成志さんでしたね。バッテン不知火。髙橋来人さんを最後に見たのは確か「ミモココロモ」でしたが。こんなにパワーと器用さ、大胆さを持った俳優さんだったんですね。尻は置いといて、全キャラの中でもかなり難しい役柄だったのではないでしょうか。色々な意味で。
ドキドキさん(顎爺Fujisakiさん)は名前がもうズルい。みんなそうだけど笑ってしまう。衣装でわかりにくけどあんな長身イケメンなのにすごいキモかった。いいキモさでした。
紅白歌(ともなが舞さん)。もはや語ることがない。黙って拍手するしかなかった。面白かった。
劇団員の皆さん、特に若手のお2人うまいんちゃん(小田あいかさん)とハナコ(白瀧姫翠さん)もよかった。今回は特にお若いメンバーが多かったようですが良かったですね。先が楽しみです。
リステリンパープル(内田琉聖さん)。喋りは初々しいですが顔面の完成度だけで好きになってしまった。ちゃんとバク転もできるし。
「かみがたりぬ」では主演でした乱切ベエ(高橋力也さん)。パワーでしたねぇ。ベテラン勢とは違うあらあらしいエネルギーで応援したくなる。百魂解放(字合ってる?)の時の三人のバランスもよかった。
ベテランと中堅さんと若手の塩梅が絶妙だったかも。
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主演のお二人。ユウゾウ(八坂桜子さん)とショウコ(佐藤柚葉さん)。素晴らしかった。姉弟っぷりもよい。姉にくらべて弟はおにいさんの時もちょっと素の感じ出てるのもよい。
八坂さんは何度か拝見してますが見るたびに見違えて何かが上手くなってる気がします。若さの成せる技かもしれませんが、Twitterなど見てても芝居への貪欲さが感じられる気がします。半可な男芝居ではなくしっかり「男性」でした。あと殺陣。すごくうごけますね。ダンスが達者なのは拝見してましたが。カッコよかったです。
佐藤さん。確か「赤ずきん」の時に一瞬拝見しましたがこんなにパワフルな俳優さんだとは。あの歌合戦を成立させられる俳優はヤバい。そしてもしかしたら1番役の色が多かったのではないでしょうか。おねえさんとして、姉として、退魔士として、モノマネ、(もしかしたら)娘として?。微細な変化が見ていてグッときました。ガンアクションもよかった。相当練習されたのがSNSや本番で見てとれました。またどこかでお目にかかりたい。14+の次回作も楽しみです。
この2人の安定感のお陰で成り立ってましたね。まさしく主役。個性豊かすぎる敵たちほどの派手さはないけれどしっかりした柱でした。
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着ぐるみたちのちょうどいい塩梅のデフォルメ感がいいですねぇ。作中別の場面で言ってましたが正に「演劇だから許される」ライン。アクション中ではっきりはわからなかったけど他のキャラたちもどこかでみたことあるでも全然違う。
設定がいいですよね。否が応でも愛着が湧いてしまう。湧きました。
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全然書ききれないが、あのカオスをちゃんとカオスと認識して我々がしっかり味わえたのも“土台”がしっかりしていたのが大きいように思う。物語の世界観、構成や演出、主要キャラクターたちの動機目的がぶれずに一本の柱がしっかり立っていたので観客としては全く迷わず無思考で没入できたように思います。
描写足りない気もしたけれど、過去編(?)のストーリーからずっと一本道で、実は「暮辺一郎の物語」なのかもしれませんね。このお話は悪役はおれで悪人はいなかったようにも思う。だから爽やかに見終わったのかなぁ。
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笑いと尻に敷かれて見えづらくなっているけれど、根本的には”愛”と”執念”のお話なのかも。
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とにもかくにもとても爽やかに劇場を出られた、たくさん笑ったよい時間でした。次回ももう決まっているようですし、なんだか勢いを感じます。次回「青ピン」は再演のようですね。なんにせよ楽しみです。さらなる盛り上がりを期待します。