原作:竹取物語 作/演出:本坊由華子
会場:Jぽんプラザホール
チケット料金:2,800~ 1.700円
上演時間:約90分
公演の説明
キビるフェス2021の参加作品(https://kibirufes-fuk.localinfo.jp/posts/11268334?categoryIds=3687747。)
世界劇団とは
愛媛県を拠点に活動する医師と医学生の劇団。毎年ツアー公演やコンペティションへの参加を積極的に行い、
県内外で高い評価を受けている。
今回は愛媛県松山と福岡県博多の2都市ツアー公演。
あらすじ
今は昔、竹取の翁といふものありけり。野山に混じりて竹を取りつつ、よろづのことに使ひけり。
なをば讃岐の造となむいひける。
生物学的なヒト、道徳倫理上の人、あらゆる「ヒト」の定義から外れた人は人ではないのか。
呱々の声を上げる生命に耳を傾けよ。
生命の営みに祈りを捧げる世界劇団の人間賛歌。
キャスト:ミヤツコ 加藤春奈(シャカ力)
ミドリコ 本坊 由華子
以下:雑感
えげつなかったな~。とてもよい観劇でした。
新解釈竹取物語。俳優さん二人もレベルが高い。
オリジナルの歌や韻を踏んだ台詞回し。リズミカルに繰り返される動作や描写。
半ば音楽劇のようでした。重いテーマでしたがノリやすく、世界に入りやすかったです。
その分エゲつない描写のダメージがすごいですが…
舞台は囲み舞台。
ぽんプラザホールを調光側と舞台側で2分した、19×2の多分38席くらい? 舞台側に座りました。
ホールど真ん中に黒パンチ。生の竹を何本も配置してホール内に竹林を作っていました。
竹の長さは床から天井に届くまで(デカい)。真ん中に石のテーブル。籠や椅子などの竹細工がちらほら。
入った瞬間からワクワクがすごい!着席するのに舞台を横切ったんですが、ちょっとでも劇空間を歩いちゃうとドキドキしますね。
劇場に入った瞬間から気合が感じられて凄かった。
アフタートークで聞いたんですが、舞台の生竹は福岡で現地調達したものらしい。
デカすぎてどうやって運んできたんだと思っていたところでしたがまさかでした。舞台装置現地調達とかあるんですね。
*****
原作ではパッと済まされた竹から産まれた女の子のあっという間の成長を細胞の分裂になぞらえて生々しく描写。
同時に現代の社会問題にも触れていく。
貴族の男たちからの求婚を顔もわからない男からの性暴力、ぶっちゃけレイプ。あんなにしっかり描くとは思わなかった。
その後は病院と警察のたらい回し。
あんなに手紙出したりして求めてきたくせにいざこっちから助けを求めると全く取り合ってもらえない。
というか自分の不注意のせいだろとまで言われてしまう。
竹から生まれた→戸籍なしの私生児?扱いの女の子が社会からどのように扱われるのか。
性暴力や取り調べ時のセカンドレイプ。勝手な憶測と偏見でねちねち言ってくるご近所。
現実でもこれで黙らされた、殺された命がどのくらいあったんでしょう。
自分でも勉強していたつもりだったんですが
記事などの文字だけで頭に入れることと、目の前で生の人間に演じられるのでは衝撃度が違いますね。
テーマがテーマなこともあり、かなりショッキングでした。
リモート隆盛のこの時代に「生の演劇」のパワーを再認識させられたような気もしています。
ラストの「私は人よ!」の叫びがもう…、ぶっちゃけかなりキツかったですね。
「ひとよひとよ」が様々な意味合いを併せ持っていて素晴らしい。抜群のタイトルです。
*****
「ヒト」を「人」たらしめているモノは何なのでしょうか。
社会制度の内側にいて法的に人権を保障されている我々ですが、安全圏にいるときほど理性のタガが外れやすく残酷になれてしまう。
理性を獲得したと思ってましたが、実は全然本能をコントロール出来てないのかもしれません。
作中で取り上げられていたテーマの他にも、昨今取沙汰されている煽り運転、炎上、ネットリンチ、コロナ禍においては自粛警察なんかも。
自分の定義や正義やルールの「外」にいる存在になら、いくらでも攻撃的になってしまう。
日常生活においてもどこかで「殺していい命」を探してしまっているような気がします。
人面獣心という言葉がありますが、人と獣の境界線は我々が思っているより脆く曖昧なものだということなんでしょうか。
そんなことを考えました。
私が感じている以上に、作者の本坊さんや演じられた皆さんも色んな事を感じて悩んで考えていらっしゃったんだろうと思います。
願わくば出来るだけ「人」であれるように、日ごろから顧みていきたいです。
*****
初の世界劇団さん。評判以上のモノを感じさせてくれました。これからも応援します。
今年のキビるフェスはこれで最後。来年も楽しみです。