2024年製作/131分/G/日本
配給:ギャガ、未来映画社
劇場公開日:2024年8月17日
あらすじ
時は幕末、京の夜。
会津藩士高坂新左衛門は暗闇に身を潜めていた。「長州藩士を討て」と家老じきじきの密命である。名乗り合い両者が刃を交えた刹那、落雷が轟いた。やがて眼を覚ますと、そこは現代の時代劇撮影所。新左衛門は行く先々で騒ぎを起こしながら、守ろうとした江戸幕府がとうの昔に滅んだと知り愕然となる。一度は死を覚悟したものの心優しい人々に助けられ少しずつ元気を取り戻していく。やがて「我が身を立てられるのはこれのみ」と刀を握り締め、新左衛門は磨き上げた剣の腕だけを頼りに「斬られ役」として生きていくため撮影所の門を叩くのであった。
※公式サイトより
以下、雑感
めちゃオモロいやんけ。タイトルからは、もっとラフでポップなコメディかと思っていたのに。しっかりした人間ドラマがある「時代劇」劇でした。ベタは押さえつつ、この物語からしか出ない味がしっかりあって見入っていた。ラストの真剣立ち回りは圧巻。
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優しい話だなぁ、と。嫌いなキャラクターがいない。殺し合いが選択肢に普通に入るような時代に生きていた侍たちですら、なんだか柔らかくてホッコリするようキャラクターたちでなんだか安心して観られました。優子さん、住職、おばちゃんと師匠、監督他みんな良かったな。
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しかしやっぱり剣筋が美しい。ただの映画演劇好きの素人が語るに烏滸がましいですが、殺陣シーンだけでグッと見入れてしまいますね。日頃の稽古って出るんですねえ所作に。反射で斬られリアクションとってしまう師匠との稽古シーンはめっちゃ面白かった。
みんなが熱く創作に向き合っている。それだけで泣きそう。リアリティとリアル、虚と実。本物見せればいいわけでもないけど本物を追わないとスカスカに見えちゃうし。かといってエンタメになっていないと独りよがりになってしまうし。ずーっとつきまとう課題なんでしょうか。しかし抜刀一つを突き詰める過程はそれだけで楽しかった。「なるほどー」と思ったし。漫画で言えば修行シーンかな。
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タイムスリップ物の醍醐味のひとつ。現代文明との出会い。全部ちゃんとベタ踏んでいて微笑ましかった。ケーキ食ったら嬉しいよなぁ。しかも国を良くしようと踏ん張ってた人たちだし。新左衛門が順応する過程も楽しい。でもいざ風見(=山形)と対面するとすぐ昔の口調に戻るところとかギャップが好きだった。実直さとお茶目なところがあってめっちゃいいキャラクターだったな新左衛門。「今はその時ではない」二重に胸に来た。笑ったわ。優子さんとの「その時」は早く来たらよい。
酒のところもそうだけど、武士の意地みたいな物がずっと生きてて見てて可愛らしくなった。ほんといいキャラだな新左衛門。
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「時代劇」の隆盛。世代ではないので完全に共感というわけにはいきませんでしたが、やはり全盛期に比べると少なくなってきているのか。私の感触だと最近の時代劇映画は面白いものが本当に増えてきていると思っていますが、当事者として荒波を乗り越えてきた人たちはどんな思いでいるのか。
今は”殺陣”や”アクション”も形を変えながらもかなりフランクに、若い世代まで浸透してきているような印象。礎を築いてきた先人たちへのリスペクトを思い起こさせてくれた気がします。忘れずにいたい。
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時代劇俳優、というか広く役者という者はある意味タイムスリッパーなのかもしれないなと思うなど。タイトルは意味がかかってたりするのかしら。
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締め方すごく好きだったなぁ。彼らのドタバタはまだまだ続く。飛んできた彼のキャラも序盤でわかってるから、エンディング後の展開も想像が拡がってワクワクした。令和の先輩風吹かす新左衛門とか見たい。
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終わってから公式サイトを見、「脚本がおもしろい」と語っている人の多いこと。ホンマにその通りやと思いました。ひたむきに、誠実に向き合っていれば中身が詰まっていく。そうなれば誰かが見ていて助けに来てくれる。現実でも物語の中でも同じようにして完成していったんだなと、なんだか胸が熱くなります。”侍”、”時代劇”という世界でこの国でしか撮れない物を未来まで繋いでいきたい。想いを忘れられないようにしたい。いち観客としては何が出来るかな。観続けていこう。
ひとまず時代劇チャンネル登録するか。