観劇・感想

観劇感想:おちゃめインパクト 2周年記念公演「うたかたの呪い」

作:園なつみ 演出:おちゃめインパクト

会場:甘棠館show劇場

チケット料金:1.000~3.000円

上演時間:約60分

公演の説明

福岡の若手劇団・おちゃめインパクトの2周年記念公演。ダブルキャスト有りの二人芝居。

あらすじ

ある大学生画家・ウタと小説家志望の高校生・ハナの交流。

図書館に飾られていた赤い椿の絵の下で出会ったウタとハナ。強引なウタのペースに飲まれ、意気投合(?)した二人はウタのアトリエに出向く。

絵を見せる代わりにハナの小説を読むウタ。

ハナの小説にある一巻したテーマがあることに気づいたウタは、ハナの為にある行動を起こす。

それは呪いとなってハナの心に残ることになる。

キャスト

西吾妻譜(ニシアズマウタ)/松村来夢

深田花(フカダハナ)/郡谷奈穂・久保まり

以下:雑感


おちゃめ

20席ほど。

パンチは無し。の素舞台。

板張りの床にカミシモと奥壁は黒布。

花嫁のベールのような、白いレースが舞台を埋めている。天蓋付きベッドのようなイメージ。

テーブルや椅子、コート掛けにもレース。

同じ素材が被せられた丸や四角のフープのような物もある。

開場曲はカノン。待ち時間が心地よい。

*****

よかったです。

60分間二人芝居。ちょうどよい塩梅でした。

舞台セットの作り方が毎回好きだなあと思います。

今回の一見ファンシーな作りの、可愛さと恐ろしさを併せ持ったような舞台。

メトロポリタンミュージアムを思い出しました。

前の芝居を見た時も感じましたが、想像を舞台上に引っ張り出すのが上手なのかなぁと。

仮に私が同じ脚本で作ろうとしたら、愚直に脚本に書いてある通りにものを置いて場面転換していたと思うんですよね。

初見で作り手の感性を感じられて好きです。

めちゃくちゃ自分勝手なこと言うと、

あの空間にある「椿の絵」ってどんなモノだったんでしょう。想像が膨らみます。

*****

開演直後、顔を伏せた状態でのハナ(松村さん)の第一声から入ったのがとても八日った。

松村さんの声がよく通るのもありますが、あの瞬間発信源を探してしまってストレス無く舞台上に意識を集中できました。(させられた?)

会場中結構ゆったりムードだったので緩急が心地よかったです。

芝居中。ウタの芝居がかったリアクションと、ハナのいい意味で気の抜けた(リラックスした)リアクションで芝居の作りに差を感じました。

通常こういった芝居のテイストの違いは違和感を生みかねないのでどっちかに合わせてきそうなモンですが、

この作品ではウタの強引な性格と相まって個性として自然に溶け込んでいてうまかった。

早着替えもスムーズ。着替え無くても成立させられる場面だと感んじていましたし、暗転時間や芝居の雰囲気的に着替えてくるとは思っていなかったのビックリしました。そんなバタバタするような手も使ってくる団体だったとは…

作り手の気合いが垣間見えて好感が持てます。

*****

尺の問題だろうか、描写が足りなかったのかわかりませんが、

ウタが「伝える」手段として死を選ぶほどに惚れ込んだハナの小説家としての才能の凄さがちょっとわかりにくかったかも。

凄さの描写がウタの主観の感想しかなく、またそれを語るウタがどれくらいのレベルの芸術家なのかわからなかったこと。(こちらも鑑賞したハナの感想のみ)

また、ハナ自身に執筆がうまくいかないことに対する落ち込みがあまり見受けられなかったこと。(むしろ結構楽しんでかけてるように思えた)

以上の点から、小説が賞を取ったことでのカタルシスというか、観てる側のボルテージの上がりが思ったより感じられなかったように思う。

例えば、ハナにとってウタの死がどれほど大きな影響があったのか。賞を取れたことがどれほどの喜びだったのか。理解しきれなかった。

言ってしまえばよくある「衝動的に紙に殴り書きをする」という結構ショッキングな描写も、心理的な裏付けが得られないまま突入したので少し引いてしまった。

しかし、あくまで二人の「関係性」のみにフォーカスした結果だとしたら特に必要な描写じゃないですね。自分で書いといてなんですが。

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残念だったこともいくつか。

音照ブースの手元灯りの漏れがひどい。完全に芝居を邪魔している。後半は目が慣れたのもあって暗転中の移動が見えてしまった。

おそらくスタッフさん。開場入り口で座って見ていましたが終盤客席でスマホを開いた瞬間があって一気に意識を持っていかれてしまった。ガン萎え。最悪。

2周年記念公演。舞台上のお二人にも気合が感じられたのもあって、これだけはすごく残念でした。

まだ舞台の上だけで公演を作ってる感じです。

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youtubeで「キャベツ」を見てから劇場では初見でした。

劇場まで足を運んでよかったなと素直に思わせてくれる団体でした。

何よりキャストがいい。ずっと応援したくなるようなエネルギーを感じます。

2周年目。これからどんどん進化してほしい。

次回も観に行きます。