Aブロック2番手:ギムレットには早すぎる 『メメント・森』
作:村岡勇輔 演出:下沖悠人
上演時間:約30分
団体紹介
福岡学生演劇祭2021の参加に向けて発足。
ロクコレ参加団体の一つ「集会ルロ」に携わった残り汁たちに意思が芽生えた。
果たして、この残り汁はリゾットになるのか、ちゃんぽんになるのか。乞うご期待。
あらすじ
(memento mori 羅)「死を忘れるな」という意味の警句。
古代ローマでは「今を楽しめ」という意味で言われたが、
キリスト教では、現世のはかなさを覚え、来世の救いに思いをはせるように勧める言葉となった。
【引用】『広辞苑 第七版』
キャスト
松永琳太郎・村岡勇輔・玉城栄琉
以下:雑感
試みは大変興味深いが、内容的には別に面白い話ではない。
男二人の会話の「内輪ノリ」感の完成度が高く、狙って作っているのだとしたらその点は良かった。
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舞台は真っ暗な何もない空間。素の舞台。
男が二人、「森」という人物と待ち合わせをしている。
二人でここにはいない「森」のことを思いながら、「森」の話をしつつ、ひたすら待っている。
死を思え。memento・mori。メメント・森。 「森」を思え。
駄洒落やんけ!!!!!!
ほぼこの一点のみで30分作ったのは逆にすごい。
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「ゴドーを待ちながら」がモチーフの一つなんでしょうか。これもある種の不条理劇?
ランタイムの短さからか、体感としてあまり二人が振り回されてる感はないのでちょっと違うかも。
不条理ってそういうことじゃないかしら。
ここにはいない人物を主軸に展開する物語。「キサラギ」とかもその類型ですかね。
基本的にはシュール路線で進んでいくのでボケに対するツッコミも温度が低く、あまり笑いにはつながらない感じ。
そこがまた、二人の、「森」を含めた”身内のノリ”感を強めていて、関係性を想像できてよかった。
お花摘みにおトイレとかは好きでした。
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ちょっと読みとれなかったんですが、
ラストの紙飛行機の少女のくだりとかは、この一連を劇中劇、もしくは全てを虚構に落とし込もうとする工程だったのかな。
全体的に見ても様々な実験的な要素が感じられた意欲的な演目だったかと思います。
Aブロック3番手:劇団期間限定 『ジョンとジェーン』
作/演出:岡部竜弥
上演時間:約30分
団体紹介
2021年三月。勢いだけで立ち上げられた団体。
その勢いの下限から言うと、おそらく今回の演劇祭での公演が解散公演になる。
旗揚げ解散記念公演である。
あらすじ
いつも仲良し孤児院五人組。遊び場所は山の中の秘密基地。そこが一番楽しい場所。
ある日、いつも通り秘密基地に行くと、そこには死体があった。
どうすればいいのか口々に意見を言い合う中、誰かが言った。
――――ほとぼりが冷めるまでここで死体を飼おう。
キャスト
赤阪陸央・大石華愛・斉藤風央 花・西島直輝・吉富向日葵
以下:雑感
面白かった!後味はゲロクソでした!そこが良い。
ラストのBGMの高鳴りと加速する展開が心臓の鼓動と緊張感を高めてくれて、否が応でも目を引かせてくれます。
若干往年の柿喰う客みを感じました。
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舞台は、センター奥に朝礼台みたいな2段の階段があるのみ。あとは素。
ど真ん中に死体(キャスト)
冒頭、ガチャガチャの全然聞こえない戦隊風名乗りで観る気がかなり失せましたが、
基礎の会話は三団体で1番聞き取りやすい。1番「自然な」台詞回しだったかも。
ストーリーそのものが結構好みでどう転ぶのかワクワクして観れました。
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起承転結の緩急。テンポの付け方が上手かったかと思います。
頭は正直まったく聞き取れなかったので逆に気持ちが離れてしまったけれど、喋りの基礎力が上がればより引き込み力が上がるかも。
引き込んでからの異様な雰囲気・設定で魅せてくる構成は、やはりどこか中屋敷テイストを感じてしまう。好きなんでしょうか。私も大好きです。
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ジェーンドゥか。
会話が聞きやすく、そのおかげで物語の内容のほうに意識が向けられた。
登場人物が静かに狂ってる感じ、結構好み。
4人と一体の奇妙な一幕かと思いきや、終盤一転してのサスペンス展開。
短い尺の中でも飽きさせず観やすかった。
この感じで順当に進化していつかフルスペックの芝居を観せてほしい。
先が楽しみな団体でした。これで解散は素直に悲しい。