観劇・感想

観劇感想:P and A企画~フラ劇プロジェクト~「FAKE」

作/演出:高梨由
会場:甘棠館Show劇場
チケット料金:2.500~3.000円
上演時間:約90分

公演の説明
PandA企画の「フラ劇プロジェクト」という企画の演劇。
“フラ劇とは「エンターテイメントを、もっと日常に」演劇をもっと身近に、芝居をもっと見やすくをテーマに掲げ、舞台上と客席のラインをもっと”フラット”にそして”ふらっと”立ち寄る感じで気軽に楽しんでいただけるように安価で上質な舞台をお届けします”
という趣旨で展開されていくようです。

あらすじ
売れっ子作家・冴島冥大の次回作の映像化が決定!それに伴い出演者の公開オーディションが開催されることになった。応募者多数の中から選ばれたのは7名の舞台俳優たち。しかし、それは不可解なゲームの始まりだった…

キャスト
菊池春菜 木下兼吾 黒瀬義明 坂本慧介 桜礼瑠愛
佐藤元気 辻孝平 坪根里紗 二橋純 松永琳太郎 ユキティー

以下:雑感

公演を構成するありとあらゆる要素が悉く全てスベり散らかしてる、シンプルにクオリティのクソ低い駄作。
参加者は全てを見つめ直したほうがいいし、主催者は猛省してほしい。
東京とかでたまにあるダメな方の芝居。学生の旗揚げ公演でもここまでお粗末なことは稀。芸事に関わってる大人がやっていい所業じゃない。
正直返金してほしいし二度と甘棠館使わないでほしい。

*****
“映像作品の公開オーディションを観客たちが見学者となって見ている”という設定。
劇場内、舞台上と客席の境には見えないが”透明度の高いガラスが張ってありマジックミラーとなっている”らしく、舞台の音はこちらに聞こえるが客席の音は舞台上には聞こえなくなっているそう。
ほぼ満席っぽい。どうやらインプロのシーンがあるらしく、観客に「設定」と「台詞」をランダムに書いてもらってそこから選ぶようだ。事前に用紙を配られてスタッフさんが回収してまわってる。東京でも似たようなの観たな。福岡では珍しいかも。

舞台はなんもなし。ホリ沿いにパイプ椅子や長テーブルが何脚か。
開場中からキャストさんたちが板付きで各々準備している。

*****
物語の舞台は福岡の甘棠館Show劇場で行われているとあるオーディション会場。
集められた7名の俳優たち。開始時間になると不気味な音楽と共に主催者が1台のラジカセを置いて出ていった。
参加者の一人のポケットに指示書が。その指示通りに再生すると、怪しげな声が指令を出す。
“60分以内に死ぬ人間を一人選べ。選べなければ全員が死ぬ”
困惑する7名だったが半信半疑のうちに通常通りのオーディションが始まる。即興劇で特技の披露などしてる間に唐人町商店街では何か事件が起きたようだ。
商店街のアーケードの上に不審者が現れたとか…。そして密室のはずのオーディション会場に何故か届く宅配ピザ。乱入する謎の女。そして参加者の死…。
加速する状況に混乱する面々。深まる謎。果たしてこのオーディションの真意とは?そして覆面作家・冴島冥大の正体とは?
秘密を抱えた7名が織りなす謎と嘘にまみれた群像劇。

みたいな。

*****
とにかくなにもかもがお粗末だった。なにからつっこんでいいのかわからないくらい全部ヤバい。

まずもって俳優が全員下手。というか演出家が全然仕事してない。7人もいるメイン俳優それぞれの芝居の触感というか質感というのラインが全く揃えられていない。7人いれば誰か気づきそうなもんだが。
芝居がかった喋りの人もいれば気の抜けた自然体の人もいる。漫画みたいな喋りの人もいる。個性を表したかったのかもしれないが上手く作用しておらず同じ世界にいる人たちに思えなかった。
そういう温度差の擦り合わせみたいなのはプロデュース企画で真っ先にやることではないのか?
肩書きどおりなら相当な場数を踏んでいるように思えたんだがどうなってんだこれ。

インプロビゼーション。最悪だった。練習してない俳優がインプロなんかやるな。フリータイムと勘違いしてる演劇人が多すぎる。近年でも上位に入る最低の時間だった。
お客からお題募っておきながらあのグズグズ適当タイムなんなんだよ。まじめにやれないなら芝居やめろまじで。
本当にわからないんだがそもそも何故即興劇の時間入れたんだ?
あの時間があの物語の中でなんの意味を成したの?なんかオーディションもどきにしても中身ちゃんと考えろよ。脚本家の手抜きか?
ホント空虚でダダ滑りのクソ時間だった。4回やってて1回でも手ごたえある回あったんだろうか。

*****
物語の構成も本当に謎だし作劇が下手すぎる。

どしょっぱにデスゲーム風味のアナウンス。ここはいいよ。よくあるよね。まずこれがどういう話で何を目的にして彼らが動くのか観客に示していく。
そしてオープニング挟んでゲーム開始…

せんのかい!

なんで司会者普通に戻ってきてんの?謎過ぎる。「オープニング趣向を凝らしました~」馬鹿か!
60分間でゲームクリアできんかったら全滅なんじゃないのかよ!!ゲームスタートしてたよね?
なんで普通にオーディション進めとんねん。司会者も!お前が考えた段取りなんやろ?
これ作者はデスゲーム物の本とか映画とか漫画とか資料見てるのか?題材に対しての理解が浅くないか。ラジカセ再生したのにアナウンスと会話すんなよ。なんなの?

100歩譲って参加者は知らないから~っで済まして進行してもまぁいいかもしれないけど、先に気取って状況説明したべ?これはお客様たちに見学してもらってる公開オーディションです。って。
最初のアナウンスも全部我々は見てるわけなんだがそんな進行して観てるお客さんにどう説明すんの?冴島冥大って段取り下手糞なんだなってなるぞ。

まさかそこから自己紹介(キャラ紹介)に入るとは思わんよ。60分後に死ぬぞ?お前ら。

これトラブルが起きなかったらどういう風に終わる物語のつもりだったの?全ての進行がトラブルありきで進んでるから登場人物全員が”生きてない”
みんな展開のために行動していて人形みたいだ。水谷の仕込みがあったのかもしれないけどあれも下手すぎる。「下手」っていう芝居なのか?真面目に作ってんなら脚本が下手。

そして死んでからの方向修正は無理があるやろ。もう発覚時点で残り時間どんだけなんよ。もっと焦れお前ら。

この「死」が絡むシチュエーションで行動を強制させるのにルールが甘すぎるだろ。ここまでに散々出たり入ったりしてんだから早く逃げろよ。
ていうか携帯の電源切るで済ますなや。没収せえよ。緊急速報入れたいがためだけに置いといたろ。プロットをちゃんと練ろ。

そして場所が「甘棠館Show劇場」

これがマジでだめ。これ運営チームは県外の人か?親しみやすさを狙ってこういう設定にしたのかもしれないけれどこの劇場に人を監禁して色々出来るわけないやろ。
ここを知ってる人ほど進行している状況と場所のギャップにいちいち気が冷める。事前に下見とかしたんか?実在の場所を使うならもっとなんか…準備してから使ってくれや…。都内某所で良かったろ。
無駄に固有名詞使うからいらないツッコミどころが産まれるんだよ。

*****
キャラクターがみな物語に支配されてるから事象に対するリアクションに整合性や正当性が無さすぎる。

まず冒頭から謎のアナウンスに対しての反応が糞テンプレすぎる。フィクション見てフィクション作ってる感じだ。いきなりあんなテンションで騒がねえだろ常識的に考えて。そのくせ生っぽい悩み抱えてるから本当に「っぽさ」しかない。
“何年もやってる演劇人が謎の覆面作家のオーディションに行ったらデスゲームに巻き込まれた”とか。こんなシチュエーションもっと出てくる言葉があるでしょうよ。

死体確認の流れも嘘すぎる。トイレ行って手に血が付いてたから身体触ったってことだよね?死んだかどうかわかるだろ。雑だわ。仕込みとはいえ、死体の偽装とかサスペンスでは一番気遣うポイントじゃないのか?勢いでなんとかなる部分じゃねえぞ。これホントに脚本家が書いてるシナリオなのか?キャラのことじゃなくてね。
それぞれの嘘もしょぼすぎる。実は男ですとかなんの意味があったの?
本筋に関係ない要素をいちいち入れ込むなよ。そんなの基本ルールだろ。思いつかなかったなら省けよ。

話が進行していくにつれ雑さや粗さが目立ってどんどん体力が削られる珍しい演劇でしたよ。

「人間」が描けてなさすぎる。大の大人一人を行動させるにはそれなりのエネルギーと理由が必要だと思うんですがその全てがおざなり。そしてそれを押し通す作劇の嘘もおざなり。勢いもない。
結果嘘くさいイタいキャラたちが滑り散らかしてるだけのシャばい物語が完成してしまった。観てて辛過ぎた。

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ダンススタジオ宣伝したいがためだけに無理やり踊らすなよ。仮にスキルが素晴らしくても全然そうは感じられなかったしあそこが一番イタかったわ。あれ観てスタジオ行こうとはならないよ。せめてワンシーン作ってあげろよ。それか他のキャラにもちゃんと特技披露させろ。
物語に関係ないのに組み込むから浮いてて見るに堪えない。適当に作りやがって。怒りすら感じる

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なにより許せないのが

劇場の壁をドンドンドンドン叩くなボケ。

普段何考えて芸事に向かってるんだ?劇場に対してのリスペクトとかないのか?これ甘棠館側は知ってるのか?
本当にびっくりしたし作劇上なんの意味もない使い方だった。見えてないんだからそれこそ音響でいいだろ。福岡で結構長い事愛されてる劇場なわけですよ甘棠館Show劇場。あんな乱暴な扱いされてかなり不愉快です。
本当に二度と使わないでほしい。

何年芝居してるんだ?どんな経験値積んでたらあんな使い方できるんだ?ホリ幕をそんな乱暴にめくるんじゃないよ。幕にはそもそも触るなって教わってないのかよ。

芝居もお粗末なら劇場も乱雑に扱うし最悪。

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他細かいところがたくさん。

客席の組み方も下手。客席座ってないだろこの座組。あの客席数で普通に重ねてどうするんだ。見えるわけないだろ。見せる気が無いのか?

音響卓で動画撮ってんじゃねーよ。ピコピコ音鳴ってるの聞こえてるよ。あの狭さでスタッフが音に気遣ってないってなんなんだよ。

カーテンコールでなんでBGM切ったんだ?あの空気でグダグダの宣伝かまされてる観てる側の気持ち考えてほしい。

演出の「間」の取り方が下手すぎる。吉本の人とかいるんじゃないのか?誰も突っ込まないのか?

冷静に数えたらまだ出てくるかもしれない。

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とにもかくにも穴だらけのクソ芝居だった。こんな演劇が身近に蔓延ったらたまったものではない。
2500円も高すぎる。1000円がいいとこ。
シンプルに製作陣の勉強が足りてなさすぎる。ありとあらゆる事柄を勉強しなおしてから別の所で公演していてほしい。
観に行かないです。