観劇・感想

観劇感想:福岡”題名のない”演劇祭 万能グローブガラパゴスダイナモス「チュバーチュバー」

作/演出 川口大樹
会場:JR九州ホールチケット
料金:2,500~ 2,000円 ※配信チケット1500円上演時間:約60分

公演の説明
1プログラムにつき2劇団がそれぞれ中編作品を競演する演劇フェスティバル。観客が観劇後に作品名を投票し、作品のタイトルを決める観客参画型の演劇祭です。二日目、14:30の回。ひと団体目。昨年15周年を迎えた福岡の劇団 万能グローブガラパゴスダイナモスの作品。
あらすじ新人教育に悩むヤクザの取り立て現場。吸血鬼系ユーチューバー。マッチングアプリの男女。三組の様々な事情が入り乱れるサスペンスホラーコメディ。

キャスト:諸見里 椎木樹人   榎園 野間銀智
     ぶどう 隠塚詩織  佐世保 友田宗大
     みかお 石井実可子  吉田 澤柳省吾
     ミズポ 山﨑瑞穂   小夜 脇野紗衣
   チューさく 古賀駿作      

以下:雑感
めちゃくちゃおもしろかった!!!

コメディに見せかけたサスペンスホラーコメディ群像劇。いつも通りの、いつも以上の私の好きなガラパさんでした。
新人さんたちもなんというか、ようやく馴染んできたような感触。
新たな形になってきたんだなぁ。と、なんだか嬉しくなってしまいました。(何目線かわかりませんが)
というか短編の演劇祭なのに全然本気の本公演クオリティ!逆に油断していた自分が恥ずかしくるくらい楽しませてもらいました。

舞台は何もなしの板張りに白い箱馬が何個か。シーンごとに減ったり増えたり。
ガラパさんといえば、ガッツリ組まれた舞台装置にカラフルでポップな色使いという印象でしたので(最近はその限りではないかな?)、逆に新鮮でした。
ラストは珍しくビカビカ照明で踊りまくってまさにドタバタホラーコメディ!という感じで最高でした。

*****

物語の時系列と実際演じられたシーンの順番が前後するので、演じられたシーンごとの番号を振って整理したい。

①借金取りのヤクザと中国人女性

先輩ヤクザの諸見里(椎木樹人さん)と新米ヤクザでおっちょこちょいのみかお(石井実可子さん)が片言アルアル言葉の中国人・ぶどう(隠塚詩織さん)を椅子に縛り付け、借金の返済を迫っている。
諸見里は新人教育を兼ねてみかおに主導権を握らせたいが、おっちょこちょいすぎるみかおに振り回されてしまう。
全く上手くいかない状況に遂に二人は泣き出してしまう。

②吸血鬼系ユーチューバーと雑誌ライター

最近人気(?)の吸血鬼系ユーチューバー・ミズポ(山﨑瑞穂さん)とチューさく(古賀駿作さん)。「吸血鬼の苦手なモノ食べてみた!」等の配信をしている二人だが、
実は”系”ではなく、本物の「吸血鬼」ユーチューバーだった。
マジモンの吸血鬼だとなかなか信じてもらえない状況をなんとかしようと、このインタビュー自体を撮影して配信しちゃうぜ!と意気込む二人だが、
世界観が独特すぎる雑誌ライター・榎園(野間銀智さん)の言動に圧倒されてしまう。
吸血鬼が世界観で負けてらんねえと吸血鬼あるあるを繰り出す二人だが…

③マッチングアプリの二人

24歳童貞・佐世保(友田宗大さん)。焦ってマッチングアプリに登録した彼が出会った女性・小夜(脇野紗衣さん)。
写真以上に可愛い彼女(の主にエロい胸元)に速攻で恋に落ちた佐世保。
告白も視野に入れた5回目のデートでいざ待ち合わせ場所に行ってみると、そこにはもう一人の男性・吉田(澤柳省吾)が。
なぜか三人で遠く離れた古ぼけた倉庫みたいな場所に行くことに。着くくなり小夜はどこかへ行ってしまう。
吉田もまたアプリで小夜と知り合ったデート相手だった。吉田よりも先に小夜の心射止めて見せると意気込む佐世保だが、倉庫の物陰で倒れているみかおを発見する。
病院に連れて行こうと提案するが、入り口には鍵がかけられていた。

④ヤクザのお悩み相談

いつのまにかぶどうに悩み相談をしている諸見里とみかお。そこに入ってくるチューさく。
どうやら諸見里とは知りあいらしい。抗争などででた死体の処理をお願いすることがあるらしい。
ぶどうに紹介しようと挨拶するが、なにやら様子がおかしい。
諸見里・ぶどうが怪我をして流した血に動揺しているようだ。
二人を傷つけたみかおのナイフを手にした瞬間、チューさくは豹変する。

⑤吸血鬼ユーチューバーのぶっちゃけトーク

価値観のアップデートについて。お笑い番組から影響を受けた二人は吸血鬼と人間の共存を目指して認知度を上げようとユーチューバーを目指したらしい。
しかしチャンネル開設から1年で登録者は68人。そんな彼らになぜ取材がきたのか。

⑥監禁?

みかおを見つけたのち、状況を確認する佐世保たち。どうやら完全に閉じ込められているらしい。
そこに逃げ込んでくる小夜。なにやら暴漢に追われたらしく、この状況はその男によるものらしい。
佐世保は状況そっちのけで小夜にプレゼントを渡そうとするが、
目を覚ましたみかおに邪魔されてしまう。みかおから語られるこの監禁の真実とは。

⑦みかおの回想

④の続き。ナイフについた血に興奮したチューさくは空腹を耐えきれず、諸見里とぶどうを食い殺してしまう。

⑧ 熱狂的ファン登場

河童の存在感に負けまいと吸血鬼の秘密を披露する吸血鬼の二人。そこに小夜が登場。
二人の熱狂的ファンを自称する小夜。
チャンネルを盛り上げるため、「吸血鬼が人間を閉じ込めてきた」という企画の仕込みのために佐世保らの監禁を仕組んだのであった。

⑨パニックパニック

バズり動画を撮るため、倉庫に戻る小夜。その様子を別室でモニターする人外三人。
佐世保たちを上手く誘導しようとする小夜だったが、吉田に隠しカメラが見つかってしまう。
邪魔になると思ったのか、小夜は吉田を殺してしまう。
混乱極めていく状況の中でテンションが上がったチューさくは、先に殺した諸見里とぶどうを吸血鬼化して倉庫に投入。
勢いで佐世保とみかおも吸血。吉田も吸血鬼に。
ごっちゃごっちゃになって、おしまい。

*****

多分
①→④→③→⑦→⑥→②→⑤→⑧→⑨

いや~おもしろかった。いい意味での投げっぱなしのパニックホラー。

これシリアスに作ったら結構怖いのでは?

作中で自虐(?)してましたが、カメ止めみたいですね。

ギャグも冴えてるし、ガラパさんは空気の切り替えが上手いので全然飽きずに最後まで観れました。

特に河童の榎園さんとの会話はホントにコントみたいで最高でした。

今回はBGMというか、選曲がすごい好き。わちゃわちゃの状況にマッチしていて、あと曲がわかった瞬間にもひと笑いしてしまってダメでした。

吸血鬼の残虐捕食シーンもギャグになっていて、勢いが凄すぎてもはや気持ちよかったですね。

ガラパさんの過去のいくつかの作品でもそうなんですが、

脚本の川口さんの書く現実とファンタジーの混ざり具合がとても好きなんです私は。

一枚布をめくればすぐそこに不思議が待ってるような。そんなワクワクした感覚にさせてくれます。

いや、ガラパさんの作風は別にファンタジー路線ではないんですが…。

*****

若手の4人が凄く団体に馴染んできたような気がします。

特に佐世保役の友田さんが素晴らしかった。あれだけ喋って全然噛まずに、しかも流暢にテンポよく聞かせてくれるのは流石です。(浅い評価ですが)
身体も顔のパーツも大きくて存在感があるし、スターになれそうで今後も楽しみですね。

吉田役の澤柳さん。なんであの状況でそんな顔でいられんの?とこっちがツッコミたくなるような空気感。あれは当人のセンスですかね。
この方も顔がいい。それがまたあのボーっとしたキャラをより立たせてるような気がします。

チューさく役の古賀さん。とにかくエネルギッシュ!声がめちゃくちゃでかい!
配信で観たのでデカすぎて音量調整が大変でした。
観てるだけで元気が出てきます。

小夜役の脇野さん。空気の切り替えが上手いなぁ。吉田を刺す直前の冷め方が好きでした。あと単純にセリフの吐き方が4人の中では一番上手いのでは?
バランサー?

*****

とにもかくにも抜群の芝居でした。

短編と言いつつも、過去の本公演と比べてもまったく遜色ない面白さでした。いつかいつもの本気セットで観てみたいですね。

主宰の椎木さん始め、ベテラン勢もノリノリで楽しそうに見えました。

若手さんもぐんぐんレベルしているし、今度オーディションもあるしでこれからますます楽しみな劇団さんです。

次も期待して観に行きます。