2024年製作/125分/PG12/香港
原題または英題:九龍城寨之圍城 Twilight of the Warriors: Walled In
配給:クロックワークス
劇場公開日:2025年1月17日
あらすじ
九龍城砦(きゅうりゅうじょうさい)――かつて無数の黒社会が野望を燃やし、覇権を争っていた。80年代、香港へ密入国した若者、陳洛軍(チャン・ロッグワン)は、黒社会の掟に逆らったことで組織に追われ、運命に導かれるように九龍城砦へ逃げ込む。そこで住民たちに受け入れられ、絆を深めながら仲間と出会い、友情を育んでいく。やがて、九龍城砦を巻き込んだ争いが激化する中、陳洛軍たちはそれぞれの信念を胸に、命を懸けた最後の戦いに挑む――。
※公式サイトより
以下、雑感
話題になりまくっていて耐え切らず鑑賞。
ハッチャメチャ楽しいバトル映画だった。ほぼ漫画。吹っ切れすぎてて笑えるシーンは全然ないのに笑けてしまう。同時に切ない。九龍という混沌の街に確かに生きていた人たちの欲と仁義と情と汗と肉弾と気功。あと絶対口や態度に出さない愛がギンギンに光っていて眩しい。
アクションもゴリゴリで楽しい。でもあの世界観の中であのラスボスは存在がずるいだろ。キャラ性も含めて。でも勢いで受け入れてしまう。
『黄昏の戦士たち』ってかっちょ良すぎるタイトル。やはり「九龍城砦」はロマンの塊だった。
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80年代香港、九龍城が舞台。セットがすごく良い。私は資料や過去の様々な作品で見ただけだけど作り込みがすごい。
なんであんなにワクワクする見た目してるんでしょうね。ウォーリーを探せとかミッケとか見て育ったからかなぁ。あの空間行ってみたくなる。活気と生活のニオイがすごい。
あの先の今を生きている観客の我々からすると、無くなるのが確定している空間。眩しさと切なさが同居してる。
ていうかあの縦横無尽の空間での鬼ごっこめちゃ楽しそうじゃない?チャンたちは必死だが。
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雷と竜巻と殺人王の龍を巡る争いから始まる物語熱すぎんか?全部ハンバーグじゃん。厨二ロマンしかない。でも加齢とともこの「全部ハンバーグでつくる献立」をいつからか作りづらくなってしまう…。忘れていたワクワクが蘇りました。お弁当全部主菜でもいいよね。美味しいもの。
ほんで竜巻がイケメン従えたロマンスグレーになっていて親友だった敵の息子を守って託す。最高のド直球ストレート物語でした。アチアチの情感。
でもみんな言葉には(あんまり)しないよね。もどかしくもあり大事な一線でもあり。そこがまたイイ。
ロン・ギュンフォン。九龍みんなのお父さんみたいな存在だったね。ワンピの白髭的。ていうか病気なかったら王九倒してたのかな。抑え込んでたし。全盛期どんだけよ。
義兄弟の気持ちと、親友との約束と若者たちの未来と色々で板挟みで悩む様がね…。色気がすごいすな。
兄貴たち三人で飲んでた席にチャンが来た時めっちゃドキドキしたんだろうか。
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アクション。全般すごく楽しかった。リアルカンフーとナイフアクション、かと思えばぶっ飛んだ4人合体技(あのビッタンビッタンするやつ)、極めつけは『気功』。ズルくね?笑いと怖さが同時に襲ってきて絶妙な面白さ。ほんで石炭食うし、マシンガン乱射するし。めちゃくちゃでスマブラみたいだった。城砦の立体と相まって縦横無尽の面白さだった。飽きる暇がないエンタメアクション、最高。
最初のロン兄貴の一撃からもうハマったね。あれはカッコいいよ。
アクション監督谷垣健治だったんですね。さすがだ。そう思えば「実写るろ剣」みがあった気がする。ラストの4対1とかまさに。
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しかし主人公若手4人パーティのバランス最高、だったな。タートルズを思い出しました。
オーソドックス実直主人公、チャライケメンナイフ使い、無口パワー系医者、明るい弟系日本刀。出会うべくして出会った4人だろアイツら。
チャン・ロッグワン。不器用で泥臭い幸薄い感じすごい好き。
入港から必死に走り回って人質取った人がそこの大ボスなあたり運がいいのか悪いのか。でもロン兄貴はじめみんな可愛がっちゃうのもすごいわかっちゃうな。
あそこをバイクで縦横無尽に走り回るソンヤッ。そんな登場ありか。そして顔がイケメンすぎる。
ソンヤッ。ホントはずっと「No.2」でいたかったんだろうな。あんな形で任せるなんて言われたくなかったろう。
一回負けた後の表情がね…,
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ウォンガウ(王九)。存在がズルいぜ。
あの見た目とキャラとポジションで戦闘力は志々雄真実並みってどうなのよ!?あんなムキムキの若者4人を1人で圧倒するな。それこそサモハンキンポーとかの役割じゃない?
ほんで1人だけ気功使って「硬直!!」って。リアリティラインがブレまくったけどわりとすんなり受け入れてしまったのは作劇のなせる技か。クソ強いラスボスという事実も違和感ないしね。倒された時はスゴいスッキリした。
しかしキャラがいい。あのヘラヘラで冷酷で従順。でも強かに玉座を狙っている。「いや〜全然僕なんて!」みたいな態度取っておきながら次のターンで速攻寝首かくし。そして爆速で調子乗って「TOKYO TRIBE」の鈴木亮平みたいになる。
そんな彼にも黒社会に堕ちた事情と、気功を得るための修行期間とかあったんよな。見てえーー。
倒す流れすごい好きだったな。『竜巻』に助けられる若者たち……。兄貴が助けてくれたよね。
途中チャンがいつ親父譲りの気功にいきなり目覚め出すかハラハラしていたが根性で倒してて逆に良かった。
でも大ボスとか兄貴たちはこれ抑え込めるくらい強いのすごくね?
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最後の夕焼けを眺めるシーンの良さみ。
リベンジと仇討ちの達成感とまた強まった4人の絆。「俺たちの街の景色」と夕焼けがより強調してくる。
でも亡くしたモノの大きさと、確定で失われるこの景色がスゴイ寂しさを呼んでくる〜〜。爽やか切ない!語彙がない!
エンドロールで流れるのが「ちょっと前」なのがまたね…。チャンが流れてきて活気ついてきた頃の風景なのがいい。もう失われた場所だけど、確かに生きてた人生があったんだね。
トワイライトだわ。
居場所は「場所」ではなく「人」なんだな。
上の世代の悪い部分や因縁は若い世代には継がせない。濃ゆいエンタメ要素と同時に込められたメッセージの力強さも素晴らしい。
あんな大人でありたいものです。
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とにかくすんげえ熱かった。ほんとに。ネットが二次創作で溢れかえるのもむべなるかな……。
これも原作小説があるのか〜読むしかねえなぁ。波が起きてから乗ったクチですが皆さん観て欲しい。上映館も増え続けているようですし。
乗っていこう。そして九龍の漢たちに惚れていこう。とても面白かった。