作/演出:赤阪 陸央
会場:ぽんプラザホール
チケット料金:1,500~3,000円
上演時間:約90分
公演の説明
福岡の劇団焚火のRestart公演
あらすじ
—―卓袱台囲んで繋がりたかっただけなんだけど
「玄関開けて、廊下を少し進んで、右手のドアって何の部屋だっけ?」#TA201とナンバリングされる劇団焚火Restart公演『卓袱台』は、歪な家と5人が起こす、1つの「家族」を描いた作品。殴りたいけど守りたい、優しいけど逃げ出したい、執着はないけど意味が欲しい。相反しているようで別にそうでもないような気持ちを抱えて、舞台上での「家族」という現象を皆で観察してみます。「あ、そっかそっかそうだった。私が僕で、僕があなたで、うちが君で。そんで何が言いたかったんだっけ?」
※チラシより
キャスト
鈴木来知 田中琴子 手嶋萌 松村来夢 渡邉大
以下:雑感
めっっっちゃ『小劇場』だったな。若者の作った若いマインドからしか出てこないタイプの戯言の羅列。大人になる途中に誰もがかかるであろう、大きめの中二病って感じのメッセージ。熱血とはまた別種の青臭さがある公演だった。個人的には全然面白くはなかったけれど、こういうのも面白く感じられるようになったのは私が年を重ねたからだろうか。
役者陣はみんなとてもよかった。この空間、演出、公演を作り出せるバイタリティーはすごい。このまま突き進んでほしい。
*****
ぽんプラザ。客席は「コの字」型の半囲み舞台。黒パンチを引いた上に白テープで部屋の間取りみたいにラインが引かれている。その上に単管で櫓を組んでいる。高さが大・中・小と平台を置いてステージ(?)になっている。
ぬいぐるみやゴザ、漫画や地球儀etc…生活感のある雑貨が散りばめられている。真ん中下段にちゃぶ台とお鍋。食卓が作ってある。
若い感性の芝居だなと思った。一昔前に死ぬほど見たような気がするが。そういう意味でもホントに『小劇場演劇』って感じ。好きではある。面白くはない。
全然狙ってないだろうしすごく余計なお世話だけど、大人気!にはならないだろうな。
*****
なんの変哲もないある家族の食卓での会話。「いただきます」から「ごちそうさま」までをリフレインしていく。その度各家族ごとの内心が吐露されていく。
内容はまあ、モラトリアムによくある”自分”と他(世界とか社会とか他人とか)への違和感や不快感を独自の語彙と質感で吐きだしていくタイプのあれ。麻疹みたいなもので、ある程度知能の高い表現者が一回は通るやつ。
基本みんな、俺が私が他に「合わせてやってる」とおもってるやつ。いいから働いて飯食って寝ろと言いたい。結局そうしないと生きていけないんだよぐるぐる悩んでも。
しかし演劇的にオチがなかったからホントに独白5人分だけで終わってしまったぞ。この家族がこの後どうなるのか(変わるのかこのまま続くのか他)提示されずじまいだったからかなぁイマイチ面白くなかったのは。5人の内心が一本の芝居になってないもんね。
それぞれの話を聞かせるのも役者の演技力(台詞吐き力?)に頼るしかない構造だったから観る分にはすごく疲れた。全然いつでも寝れた。
小劇場はなんでも許されるのがいいところ。オチがなくとも。いや、うーんこのグズグズを楽しめばよかったのかな。でも棒の話とかマジで意味わからんかったしな…他はともかく。棒の話はもう中身覚えてないよ。
*****
会話してるようで全然してないあの感じ。意図的に出してるなら素敵だ。最初の会話の時点で微妙に噛み合ってないのは技量が拙いからかと思ったけれど、各人物たちの内心が判明した後となってはあの「取り繕った団欒」も納得か。私の考えすぎかもしれませんが。
しかしこの芝居、役者間はほぼ独白と拒絶でやり合ってるから調和が起きなくて楽しくないんじゃなかろうか。ある種気持ちよくはあろうが、独りよがり×5だからキャッチボールもあるようでないし。掛け合いのようで掛け合わない一人芝居五人分。ディスコミュニケーション家庭。
*****
来月にはキビるフェスの「ギムレット」もあるし、同世代団体も盛り上がっていっているのか。今回の芝居を観て、なんだかまたひと巡りしたんだなと感じた。
全然今回のとは関係ないけど少子化が進む昨今演劇人口ももちろん減っていくわけで、若手演劇団体は本当に貴重。本人たちは気にしなくて全然いいんだけど周囲の大人は応援しまくってほしい。次も観に行きます。