観劇・感想

観劇感想:万能グローブガラパゴスダイナモス ×ゴジゲン×小山田壮平「見上げんな!」

作:川口大樹 演出:松居大悟
会場:福岡市民ホール 中ホール
チケット料金:3,500~6,000円
上演時間:約120分
公演の説明
福岡市に新しくオープンする、リニューアルされた福岡市民ホールの初回公演。万能グローブガラパゴスダイナモス、ゴジゲンと元andymori小山田壮平がコラボした公演。
あらすじ
駆け出し映像作家・三月(みつき)に「バンドのMVを撮ってほしい」と故郷、福岡からDMが届く。数年ぶりの帰郷を果たした彼女を待っていたのは、ボーカルの失踪ですっかり活動停止中、ほぼほぼ解散状態のおじさんバンド。撮影など叶うはずもなく、空中分解真っ只中のメンバーを説得するため福岡の街を奔走するはめに。すっかり音楽から離れ、時代からも取り残された曲者のおじさん達。彼らを追いかけるうち、気づけば三月自身もこの街に置きっぱなしだった自分の過去に追いかけられていて。才能ある誰かや、自分より優れた何かとか、地方とか都会とか、ずっと見上げてた人たちの群像コメディ。
公式サイトより
キャスト
椎木樹人 古賀駿作 千代田佑季 青野大輔 富永真由 東迎昂史郎 善雄善雄 神田朝香 田島芽瑠 多田香織 向野章太郎 酒井善史

以下、雑感

めっちゃキレイな良い話だったな。今と昔と夢と執着、喪失と希望とがい〜感じにブレンドしてある。

いろんな意味で福岡の代表劇団だなと思ったし、新たに福岡の顔となる劇場のこけらにふさわしい公演だったと思う。地元民としては色んな方面で嬉しい。

主題歌はホント良い。

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リニューアルした福岡市民会館中ホール。「中」というがかなりデカく感じたな。当たり前だがめちゃキレイだし。でも変な作りの施設だ。まだ全貌はわからないけど。

舞台はカミシモナカと三本の円柱っぽい櫓と、ツラ側の広いエリアでざっくり四箇所くらいのステージに別れていてそれぞれ行き来できる。

カミ手の上はランタンっぽい街灯で公園風、下は主にラーメン屋。

シモ手の上側は「福岡市」のビル群を模ったパネルが並ぶ街エリア(福岡タワーとか)。下でカフェなど。

真ん中は半透明の円柱に沿って半螺旋階段がついている。シーンに応じて階段部分が回転して屋上に駆け上がったり。透明部分がエレベーターみたいになる。

文章で説明するのムズ。とにかく遊園地の街エリアのひと区画みたいで見るだけでワクワクする見た目。

奥行きがあって楽しいし色々動いて面白い。これ思いつくのもすごいし楽しかっただろうな。これを形にした舞台屋さんは大変だったことでしょう。

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いちインディーズバンドマンがいきなり宇宙旅行!?とかの突拍子のなさは置いといて、

ロマンとノスタルジーに溢れた素敵な物語だった。壮大な景色から想うのは地元の小さな身の周り。思い出が満月くらいキラキラしてて忘れらんねぇんだろうなぁ。彼らは別れてから何回も空を見上げてその度に沈んだ気持ちになっていったんだろうな。でも生きてくしかないからなぁ。上を向いていくことに少し希望が持てる素敵な話。

故人をおもう様はどうあっても綺麗だ。

あんまりギャグギャグしてないけど、ワードの一つ一つが絶妙にオモロい。地元が出てくると問答無用でちょっとずつ刺さるけどツアー先ではどうなるのか気になるところではある。

「あ、犯罪か……」でちょっと引っ込むところ好き。

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中盤まで結構リアル路線で来てたから、唐突にSFファンタジー(オカルトかもしれない)要素が挟まって若干噛み合わせが悪かった。リアリティラインがズレたっていうか。

嵌んないパズルを無理やりはめ込んだ感じ。絵として完成してるから些細なことかもしれない。

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いろんな形で過去と夢と親友に心を囚われてるオッサンたちが見られたのはオタク的にもとてもよかった。「見上げんな!」は女子キャラよりもオッサンを愛でる芝居。(偏った意見です)

巻(酒井善史さん)が一番イカれてたな。うろ覚えだが、2003年ごろ高校生(16~18)で、柳の事故が2012年?だとすると、一番早くても25前後から公務員目指して親友の手がかり探したいがためだけに10年以上あの熱量持ち続け、しかも合間で装置作ってた。もういっそ怖いな。コメディ世界観のおかげでギャグになってるけど狂気ですね。光るギターずっと持ってるし。

巻がイカれてるおかげで松尾の奇行もギャグになっている。めちゃくちゃ重いけどな。不完全燃焼で終わった夢といなくなった親友に深層で囚われていい大人が高校の時の財布ず~~~~~っと替えられずに学生のころの癖を修正できないままで…

「未練を小分けにして持ち歩くな!(うろ覚え)」めっちゃイイ味のあるセリフだ。好きだ。オッサンの心情に造詣が深くないと出てこないぞ。

2人とも持田(東迎昴史郎さん)の前向きさを見習ってほしい。彼だけが単独で若者と関わって未来作ってたよ。この作品の明るさは持田と花(神田朝香さん)によって保たれていたと思う。

徳之島(古賀駿作さん)が一番キレてて好きなキャラだった。現代が産んだモンスター。古賀さんのパワーとベストマッチで最高だった。

だからこそ最後の扱いはなんか肩透かし感があったな。あのタイミングで「トぶ」のはなんか、今かなぁ?という。彼の言う解放感のタイミングとは違くないかなと思った。

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ご都合主義とはちょっと違うかな。欲しい展開から逆算して必要なキャラクターと関係性を作っていった感。

いや、物語ってもしかしたら全部そうなのかもしれないけれど。観てて「そう」感じてしまった。集まったキャスト全員に見せ場と出番を作る商業脚本家ってそういうものかと言われればそうかもしれないけど、

昔のガラパってもっと「変な奴らが各々好き勝手してたらたまたま丸く収まった」感じがあった気がしてて、そこが好きだった。懐古厨かもしれないけれど。今回はなんかキレイすぎたな。良かったけど。

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正直主演のパワー不足を感じた。ホールに負けてるというか。開幕一発目の解散ライブ、めちゃめちゃ遠かったんだよな。あそここそマイク通せばいいのに。

じわじわ右肩上がりにノッテくる話だったけど、序~中盤あたりは正直かったるかった。冒頭からもっと引き込まれてたら、もっと馬鹿になって観られたのにと思う。

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ラストのちょい謎残し。爽やかさと切なさと希望を感じさせる好きなやつ。

どっちでもいいんだよね。でも仮にそうだとしたら戻ってくる気はないのかもな、という予想。もしかしたら配信視てたかもな、という妄想。

でもどっちでもいいんだよね。宇宙まで探しにいくし。

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終演後の拍手の圧がすごい。相変わらず愛情が渦巻いている団体だなと思った。地元演劇ファンとして誇らしい。

作中のテーマや色んな要素が、団体の「20年」という積み重ねを感じさせてくれた。12月にも楽しみが待っているし、まだまだ走り続けてほしい。いい時間を過ごせました。ありがとうガラパゴスダイナモス。遠征も無事に終えてください。

次回も楽しみにしています。

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しかしそろそろ後に続く大人気団体が出てきてもいいんじゃないか???