観劇・感想

観劇感想:劇団StRiNg「激選クロスオーバー」

作:高瀬龍之介 演出:高瀬龍之介/北川寛樹
会場:アクロス福岡円形ホール
チケット料金:1,000円
上演時間:約70分
公演の説明
福岡高校生の合同公演企画「大橋ソレナ学園」のOBOGから結成された劇団の旗揚げ公演。
あらすじ
来たる 20XX年。
次々と改革が進む第一学園では、成績の乏しい文化部を “全面的に廃部” にしようとする動きがあった。危機感を抱く文化部員達は突如現れた謎の女 “リサ” と協力し、文化部の存続をかけた生徒会長選挙に立候補するが…
劇団StRiNg(ストリング)がお届けする大混乱青春コメディが今、始まる!!!
※チラシより
キャスト
北川寛樹 三浦理音 白瀧姫翠 藤原吏輝 山口華稟 佐田はな 河村唯衣 砂田夢菜 中西翼 麻生かんな 小田あいか

以下、雑感

粗いというか、拙いというか。青いというには勢いの足りない、未熟と言い捨てるにはちょっとこなれた部分もある。幼い芝居だった。
円形ホールに立ち向かって演出を工夫しているという風に感じたが今一つ生かし切れていなかったように思う。なにより役者が劇場と演出に適応しきれていない。その他音や光のチグハグさもあり…。
しきりに「1000円で破格」みたいに言っていた印象だがきっかり1000円の芝居だなと思った。1500円でギリ。

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目指してる世界の方向性はなんとなくわかるんだが、どうにもブッ飛びきれていない物語とワードセンスのせいでずっとぬるま湯に浸かってるような感覚だった。導入はよかったが全然もたなかったな。

主人公が誰なのかハッキリしないままだったのが本当によくなかった。あの主役(?)の男の子はなんで生徒会長になったんだったか。発端は無理やりだったが本人の動機がないままだった(よね?)のがな。1番声も小さかったし、頭に残らなかった。
想像力で場転を繰り返す作風なのに軸となる人たちが弱くてどうにも困った。本当にこっちの想像力任せにされてしまうと疲れてしまうんだな。没入はできなかった。

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なによりこの「おバカ青春コメディ」の中でラスボスがガチの殺人を犯してるのがホントに良くなかったと思う。最初から最後まで喉に引っかかっていた。過度に冷遇される運動部、謎に権力のある生徒、フリーダムすぎる新聞部、落ちこぼれ隔離クラスなど。漫画チックな属性で構成された世界の中で「殺人」というリアルを導入からぶちこんできていてリアリティラインがブレブレで歪みが起きている。人を殺している学園長を咎める存在がいない。というのはどうにも収まりが悪い。最後ふわ~といなくなってしまったが殺人犯だからなぁ。あの爽やか風エンドにはちょっと待てと言いたい。お嬢様は人殺しの子供になってしまったが…。PTA会長を排すにしてももう少しマイルドにできなかったものか。
変な学園の変な選挙をやるにしてはみんな常識的すぎた。もっと極端に馬鹿な人たちだったら「殺人」も浮かなくなったのでは。

選挙の決着の仕方もどうにも腑に落ちない。あの流れならもっとなんかいいオチがあったのではなかろうか。浮動票丸々引っ張ってきました勝ちましたーはカタルシスもクソもない。
その後のお嬢様の留学もピンと来ないし。展開のために展開していっているようで、後半にいくにつれキャラが死んでいった気がする。

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音がデカすぎる。私の座ったところが良くなかったか?
そしてデカすぎる音に役者全員負けている。というか直前のデカい音を聞かされた観客の耳がどうなってるか想像したほうがいい。全然台詞が届かなかった。この辺は演出家のパートかもしれないが、役者全員パワーと筋肉が足りてないと感じた。少なくともやりたい表現に見合ってはいなかったな。個々人の生来の持ち味だけで勝負懸けてて磨がれていなかった。学生演劇〜〜って感じ。悪い意味で。

勿体無い小ネタが多かった。確かにワードのパワーだけでひと笑い起きてる場面が何回かあったんだが、物語のあやふやさの前ではまさに焼石に水。どれもただ「小ネタが面白い」以上にはならなかった。いくらでも膨らませられる世界だと思ったんだが。

1番しらけたのは、降板者が出て代理で出たので台詞が少ないみたいなメタな台詞。知らんがなでしかないし、私はあまり稽古していませんと舞台上で宣言されたら観客はどんな顔したらいいんだ。1000円払ったわけだが。陽プロジェクトか。もっとあっただろ相応しいイジリが。

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舞台の内も外も含め、座組全体から楽しんでます!という空気が出てたのは好印象ではあった。そこがまた学生演劇くささでもあったが…。

いろいろ書いてしまったが、70分の中にみっちり「創り手の意思」みたいなものが満ちているのは感じてそこは本当に良かった。

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全てが嚙み合うことがあれば一段も二段も上がりそうな雰囲気もある。大橋ソレナ学園のOBOGで組まれた団体ということだが今後継続することはあるのだろうか。
高瀬龍之介さんの作品・演出もまだまだ見てみたい。色々チャレンジングで期待が持てた公演ではあったな。いい時間でした。