作:つかこうへい、髙橋広大(脚色) 演出:髙橋広大
会場:西鉄ホール
チケット料金:2,000円~9,000円
上演時間:約150分
公演の説明
言わずと知れたつかこうへいの名作「飛龍伝」に福岡出身の女優・八坂桜子氏が自身で企画立ち上げ、主演で挑戦する。
あらすじ
日本中に革命の焔燃え上がる1970年、秋。学生達の信望を集める作戦参謀・桂木純一郎は、全共闘40万人を束ねる新しい委員長に、自らが愛する一人の女を指名した。その名は、神林美智子。そして彼女を愛した男がもう一人。その男こそ、日夜学生たちの弾圧に明け暮れる、警視庁第四機動隊隊長、山崎一平だった。70年安保を目前に控えた緊迫感の中、山崎と美智子それぞれの、愛と革命の日々。そして、二人の想いを知った桂木は、闘争勝利のため、美智子にある作戦を授ける。果たしてその作戦とは。― 迫り来る11・26、国会前最終決戦。耳をつんざく怒号と悲鳴の中、二人が共に夢見た、明日への希望とは。
キャスト
八坂桜子 椎木樹人 黒瀬義明 西山太一 濱野貴将 古賀佑斗 末崎隆明 本多拓翔 馬込博史 井口誠司 大成翔輝 河村映楽 黒木厚介 佐藤史哉 須垣航大 萩原武蔵 内田琉聖 松本頼都 吉永悠人 わっきー 新原武 香取直登 江刺家伸雄 矢内聡秋 寺田剛史
以下、雑感
よかった。やっぱり飛龍伝はいい。荒い時代の熱波が渦巻いていた。特に男たちのダサさ、必死さ、矜持が際立って見えた。ダンスシーンはそれ単体で見ても全部カッコよかった。
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西鉄ホール。真っ黒な舞台。ステージ奥から一間くらい手前に、応援席みたいに広い階段。「飛龍伝」のステージって感じ。照明も楽しい。
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わかりやすくするために結構変わってたなと。
個人的につか作品の好きなところって「言葉にしない美学」があるんじゃないかと思っていて。言わぬが花っていうか。
男女のみっともないプライド、っていうか矜持って語彙にしたほうが適当かもしれない。台詞では多弁だが説明されすぎない余白が残る。男女のどうしようもないプライド、誇りとも虚勢ともつかない感情。令和の今ではもはや失われつつあるそれらが、かつてはもっと生活の中に染み込んでいてそれを大事にしたり、踏みにじったり、利用したりするやり取りの中で、隠しきれずに滲み出る本心みたいな物が好きだなと私は
今回の飛龍伝はその辺わりとあけっぴろげというか、結構ライトなエンタメで観られた感。ずっと頭で感動していた(何回も観たせいかもしれない)。いやそれが悪いとかではなく、つかから受けてきた”なにか正体のわからない感動”のような物は今回は無くて。結構ずっと冷静に観ていた。
特に引っかかったのは、勝利誕生以降のやり取り。一平がダラダラ汁を出しながら発散してしまったのはちょっと解釈違いでした。熱演ではあったが。つかの男たちは涙を流さないものだと思ってるので。
エンタメっぽいといえば謎にバルーンアート差し込んだり、PandAの人がパンダだったり。笑えてたけど浮いてたよね。役者のパーソナリティで弄るのはつか系のお家芸だと言われればそうかもしれないが、なんか別軸の笑いが差し込まれちゃって自分にはノイズだったな。
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役を乗りこなしている人と、役に食らいついてる人とで結構差が明確だった。
確かな熱さがあった。だがその熱にも技にもちょっとずつズレが感じられたのが私が没入しきれなかったところかもしれない。というか声やばい人いるな。
県外から来てたキャストさんやベテランさんは言わずもがなすごい圧と熱が感じられた。しかし福岡の若い俳優たちも全然見劣りしなかった。今回で名前を覚えた。今後もチェックしよう。特に新原武さん、寺田剛史さん、本多拓翔さん、黒木厚介さん、佐藤史哉さんの芝居が好きでした。
ダンスシーン、下手前方ずっと見てしまったな。あれはカッコいい。
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音周りがお粗末なところが多かった。性急な転換も目立ったし、何よりラストの桂木の台詞は完全に音に負けて何ひとつ聴こえてこなかった。勢いで乗り切った感はあるがあんまりだ。
公演も後半になると疲労が出るのか。もはやセリフが聞き取れない場面も。約2時間半のつか芝居を1週間やるには休演日設けた方がよかったかもな。
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神林の印象が薄い。男たちの感情を引き出し受け止める受け皿としての役割ならあれでよかったんでしょうか。この公演の神林は他の誰かが演じても大きく印象は動かなかったかもしれない。。個人的なキャラ解釈だが、神林はじめ、つかヒロインって上品さと粗野な部分との振れ幅が魅力だと思っていて。この公演では粗野なところはエネルギッシュでよかったなと思うものの「お嬢様」の部分がいまいち感じられなかったかも。
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O-MEDAMA produce。2回目3回目はあるのか。長い準備期間と広報へのパワーのかけ方。独力でのプロデュースで本当にすごい。仮に続くとしたらこの座組で高まった熱をどこまで引き継げるか。期待値が高い分、ハードルは多いだろう。
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現代だから言えることですが学生運動ってホントに意味なかったよな。自由と反抗という選択肢が社会に生まれたか?
歴史の中で何にもならなかった諍いの中にも、渦巻いて育まれた人の営みが確かにあったんでしょうね。人間の愛おしさと哀愁を改めて感じた観劇でした。