作/演出/殺陣:中嶋正人
会場:ぽんプラザホール
チケット料金:2.500~6.000円
上演時間:約80分
公演の説明
福岡の芸能事務所・エレガントプロモーション内の”劇団エレガント”の主催公演。こちらは殺陣をメインにした活劇。終演後には所属アイドルによるライブも行われる。同日のもうひと演目は演劇集団キャラメルボックスの「ナツヤスミ語辞典」。
あらすじ
桃太郎が三匹のお供と共に三個の宝玉”きびだんご”の力を持って鬼の頭領「温羅」を討ってから百年。4人はそれぞれ国を興し、宝玉と温羅を斬った刀”鬼切丸”を国宝とし平和な時代を過ごしていた。しかし、「百年の後に蘇る」と言い残し死んだ温羅の予言通り、鬼の残党たちが温羅を復活せしめんと再び暴れだしていた。果たして現代の桃太郎は再び三匹のお供と共に鬼ヶ島へと向かうので会った。
キャスト
あおい/安高ヤスタカ/ここな/東雲奏多/ 美咲/矢野武徳
伊東志保 /C lear/高祖夏姫/岸里美/顎爺Fufujisaki/髙橋力也
谷口優真/ 到生/ 柏杜彩斗/平島卓 /福田定史/ 水島葵
八坂桜子/大和屋満福/横枕涼我 /りほ
以下:雑感
半端なファンタジー活劇にありがちな「イタい」段階から抜け出せていない。
殺陣やアクションも稽古をしたのか疑いたくなるクオリティ。芝居も物語も雰囲気だけで作られた、フィクションだけ見て作ったフィクションって感じ。
そもそもショーなのか?演劇なのか?そんなカテゴライズはどうでもいいのか?コンセプトがわからない。
カッコいい殺陣がしたいだけかもしれないけど土台の物語がグズグズなので両方スベっている。もっと真面目に作ってほしい。
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舞台は前記事の「ナツヤスミ語辞典」と同じ。ステージ上に物がなくなってグレーのリノリウムと黒い幕だけのモノクロな舞台。やはりほぼ満席。
SPライブ込みということだけあって「ナツヤスミ」の時よりもそちら目当てのお客さんが多い印象。ペンライト持ちの人もチラホラ。(キンブレって言うんですか?)そして開演を待っていたら麻呂みたいな人とヘソだしの男の子が二人出てきてライブが始まりました。てっきり芝居の後にあるのだと思っていたのでビックリ。
ライブに関しては省きます。アンビシャス0の皆さんカッコ良かったです。リーダーの中村さんがいいですね。
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なにから書けばいいのか…。
まず最初Twitterでタイトルを見た時「殺陣”ショー”」とあったので、てっきりヒーローショー的な短編の殺陣や演舞を見せる出し物だと思っていたんですが、(ライブもあるし)蓋を開けてみれば結構ガッツリストーリー物の演劇。
演目の順番とかも事前説明や当日のパンフやアナウンスも無し。大したことではないのかもしれませんがこのサプライズは正直いらなかったな。
そしてイベントの総ランタイム2時間半!!ライブは置いておいて、出来栄えを考えたらもうげんなりすぎる。だからライブとの抱き合わせなんだろうか。
この程度の殺陣ショー(?)やるなら「ナツヤスミ語辞典」を4回やって、アフターイベント的にライブとか演舞とか挟んだ方が総合的に良くなったのではなかろうか。わからないけど。
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物語は桃太郎をベースにしたファンタジー活劇。三匹のお供はそれぞれ人間で、吉備団子は鬼を封じる力を持った宝玉。鬼側は温羅を筆頭に酒呑童子や茨木童子、前鬼後鬼など有名どころのオールスター。ひねりは少ないけれど直球で盛り上がれそうな王道設定で「お」って思ったんですが、
調理が下手すぎる。ここまで材料揃えておいてあのつまらなさ盛り上がらなさはなんだったんだ。吟味も推敲もしてこなかったのか?事務所内で何か言う人はいなかったんだろうか。
折角の設定も描き方が雑だし、どこかで見たことあるような「それっぽい」キャラクター、「それっぽい」展開、「それっぽい」台詞回しばかり。おまけにネームドキャラに見せ場作りすぎて尺が足りずに全てが薄っぺらい。
そんな中でもキャラ毎の時間配分に変な偏りがあってキモい。どういう作劇上の意図があってあんな配分だったんだろう。鳥の国の王子たちのエピソードとか変に時間取ってて他の幹部かわいそうすぎる。これは作家の個人的な好みによるものなのではないか?そんな疑いまで持ってしまった。よくない。
何よりタイトルになっている桃太郎が描かれてなさすぎてヤバい。終始誰かわからなかった。突然出てきて「それっぽい」こと言って同じような動きで飛び込んできてなんかモゴモゴ言って去っていく謎の男。まぁ現代の桃太郎なんだろうなとか思ってたら前の桃太郎いるし。その辺の受け継ぐところとかもっとエモいエピソード挟めただろ。先代と血が繋がってるとかでもなさそうだし彼はなんのために戦ってるんだ?お供やかぐやの動機はまあわからんでもないが彼はマジでわからん。全く感情移入できなかった。前鬼後鬼を殺したところなんかお姉さん鬼の八坂さんの叫びだけ迫真すぎてサイコキラーに見えてきたし…。お供や謎の麻呂の人よりも大事に時間かけないといけなかったのではなかろうか。
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正直この作家は創作や作劇を舐めてるように感じた。随所随所で「こんな感じでしょ?」と言わんばかりの雑な描写、演出。観ている側を楽しませようとかワクワクさせようみたいなつもりが一切感じられない。なんのために作ったんだ?今回が初めてとかならわからんでもないが結構経験重ねてきてる方のようですし本当にわからない。
芸能事務所で現場を作るため、でもそれはそれでいいですけど金取って見せるならせめて真面目に作ってほしい。ツッコミどころが多すぎて呆れにシフトしてしまいましたが正直怒りすら感じます。
俳優個々人の努力や熱意だけでなんとか体裁を保てているように見えました。
特にどこが嫌だったかって竹取の翁(先代桃太郎)のパートで急にメタ的なボケをかましてきたところ。この手のファンタジーは如何に観客を引き込んで没入させるかが肝だと思うんですが、そこんとこめちゃくちゃ失敗してる中盤であの発言。あれを聞いてもうだめでした。真面目に見ようとしてる人を馬鹿にしてるのか?これは「そんな真面目に見る話じゃないんですよ〜」って作り手側から発信したら駄目だろ。よしんばギャグ挿れるにしてももっともっと突き詰めて世界作った奴らだけだよアレ言って笑いとるのが許されるのは。あんな台詞吐かされた俳優が可哀想。
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ツッコミどころが多いので箇条書く。
・まず鬼切丸って何?何か特殊だったのか?お供も普通に鬼にダメージ与えてるし設定が死んでる。
・鳥の兄弟だけ尺が長すぎる。もっと描くところあるだろ。
・夜叉丸なんか言ってるけど国が滅んだのお前のせいだぞ。何いい感じに言ってるんだ。
・夜叉丸は普段どうしてたんでしょうね。あのお母さんや周りの人間たちの中でよくあの性格、あの衣装でいれたよ。キャラ造形がわからん。反抗期?
・茨木童子のラストバトルは何?あれ。急にゴースト召喚しだして謎。
・オカマVS猿とか麻呂VSかぐやとかもそうだけどなんで鳥のとこだけ増援きたんだ?みんな可哀想
・あのなんか一人だけおっぱいの人。なんで平安期に廓言葉なんだ?江戸の言葉じゃなかったっけ。雰囲気で喋ってるからコスプレ感がすごい。
・よく今あんなコテコテの意味のないオカマキャラ作ったよな。昔の劇場版クレヨンしんちゃんだよ。周りがそのキャラを受けてないから活かせてないし。
・そもそも鬼ってなんだ。ツノが生えてるの酒呑童子だけだったけど衣装とか設定は誰が考えたんだろう。みんな武器で戦ってるし普通の人と何が違うの
・温羅の印象が薄すぎる。ボスと主人公の印象が薄いのやばくない?
・きびだんご結局目眩しにしかなってなくない?
とかとか
なんか色々考えるのも無駄な気がしてきたな…。絶対作った人深く考えてないし。
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テクニカルもヤバい。特に音響。
この団体は声量のレベルチェックとかしないのかな。BGMがデカすぎて何喋ってるか全然わからなかった。ざっと調べたところ長年やってる行事のようですがずっとこの調子だったんでしょうか。本当にヒーローショー的な「ショー」だったら台詞なくても良かったんでしょうけど中途半端な物語でやるから居た堪れない。
新感線とかの歌舞伎の真似なのか。拍子木が鳴る箇所があるんですが、何故か拍子木がぶつ切りカットアウト。(本当に何故?)入れる箇所も特に効果的とは思えず疑問です。ていうか主人公にこそ使ってやれよ。覚えてる限り敵方の時しか鳴ってなかったと思うんですが、誰を何を見せたい演出なんだあれは。
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色々言いましたけど一番ヤバいのは殺陣。とにかくセンスがない。何よりもまず、
殺陣のサウンド二種類しかない!!!???“”“”殺陣“”“”ショーなのに!!???
メインディッシュじゃねえの?そこだけはこだわれよせめて!刀振ってれば殺陣なのかよ。しかも「ショー」なんでしょ?よくそれだけの武器で本番踏み切れたな。何考えてるんだ演出の人は。SEあるなしでどんだけ空気変わるかとかわかるだろ。
この驚きは最初から最後まで続きました。ガキーン!とズバー!しかないし、しかもそれもたまに間違えるし。終盤何箇所か途中で鳴らなくなったりしてましたけどあれはトラブルだったのかな。なんにしても殺陣が売りの出し物で2回しかない物語の盛り上がりところくらいハズさないでほしい。普通はノーミスが当たり前なんでしょうけども。せめて。
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同じ動きが多すぎる。振り付けのバリエーションをあまり持っていないんだろうか。
それにあの世界のダメージ判定はどうなってるんだ。みんな刺されすぎ背中斬られすぎ。敵も味方も。何日間の出来事なんだ?治らないだろ。みんな本当は血まみれなのか?鬼が中々死なないとかならまだわかりますよ。人間も全然死なないんだもの。全員化け物だよ。絶対斬られないといけないわけじゃなかろうに。
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一つ一つの決着に論理性がない。技術でいなして斬るとかない。みんな根性で勝つ。パワーで負けてても道具とか絡め手使うとか協力して隙つくるとかあるじゃん。ないのよ。
ロジックがないからみんな展開の奴隷。コイツは勝つから勝つ。負けるから負ける。つまんねぇよ。
幹部それぞれの戦いはまさしくそういう工夫できる場面だったのに雑に決着つけるし。なんだあの両親のゴーストは。せめて伏線を張ってくれ。
唯一酒呑童子の”奥の手”のところは面白かった。ああいう説得力のあるハッタリ演出使いたい放題だったと思うんですよこの世界観。何故しないんだ。あそこの想像力をなんでみんなに使わないんだ。もったいない。
ラストの温羅とのバトルなんてなにも覚えてない。そしてその後の酒呑童子戦。腕が生えてからゴリ押しキャラになっちゃってどうした?あのクレバーな感じがどこかにいってしまって刺して刺されての耐久戦ですよ。鬼ヶ島戻ってきてテンション上がったのかな。
そういえば鳥兄弟のところだけテイストが違ったような気がするんですがあそこも同じ人が付けたんでしょうか。あそこだけ浮いてましたね。
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平均的にみんな技術が足りないのでは。技量の最大値と最低値の幅がデカすぎる。
どういった稽古をしてるんだろう。団体のTwitterを見る限り継続して鍛錬されてるようでしたが。
特に猿の人はひどい。どこを切り取っても練習してないのが丸わかりで見てられなかった。座組みではどんな空気だったんだろう。想像するのも怖い。出来ないのに長物とか蹴り技とかやめてくれ。振りを考えた人にも責任があるレベル。任されたならやらなきゃだし出来ないならさせたら駄目でしょう。
板の上にはやってきたことが全部出るなどと言われますが、いかにやってこなかったかも全部出てしまいますね。恐ろしい。
一部のできる人たちはそこだけで高めていったような感じですね。シーン毎の、なんというか完成度?空気の差を感じました。
そのせいか一連の物語というより独立した殺陣シーンの集合体のように見えるところも。没入できなかったのはそのせいもあるかもしれない。
その辺の調節というか統率する人はいなかったのだろうか。
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「イタい」段階から抜け出せていない。
元も子もないことを言いますが大人の全力のごっこ遊びなんて半端に出したら全部痛々しいんですよ。新感線とか、例えば仮面ライダーやウルトラマンなどの特撮、アベンジャーズとかのヒーロー物とかも全部そう。それが人の心を動かせてるのはみんな「虚構」を「現実」にしようと本気で全力で作ってるからでしょう。今回はその”本気”を感じられなかった。その為か私は終始冷めていました。前述のメタ発言もあったし。
しかしそれでも最後まで観れました。一部のキャストが頑張って空気を、世界を作ってくれてたのを感じました。こちらに届けてくれてるなと。そういうのわかると嬉しいです。
特に客演陣の酒呑童子 (到生さん)と茨木童子 (大和屋満福さん)。
単純な話なんですが2人とも声がデカい。それだけでもう観れる。他のとこが聞こえなさすぎたのもありますが…。
お二人とも自分の劇団でもアクションや殺陣をされてるだけに安定感がありますね。
特に到生さんはよかった。演出たまに俳優だと思っていたのでこんなに動ける人だとは。
出てきただけで場が締まるのを感じました。エンタメを作ってる人はみんなそうなんでしょうか。新感線いのうえさんとか実はバリバリ動けたりして。
などなどこちら側を向いている何人かの頑張りによって成り立っていたように思います。
とはいえ「俳優が頑張ってる」とか思わせないでほしいが…
他は慣れてなくて必死感があったり内向きに盛り上がっていたりとか。
役者の状態とか考えさせないでくれ。中身に没入させてくれ。
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総評すると。外側への意識が足りなかったのではないかと。
これがどう見えるか、どう見せるか。どう伝わるかどう伝えようか。その辺考えてくれたらいち観客としては嬉しい。ほぼほったらかされたような気持ちでした。
物語の設定自体は本当によさそうなので製作陣は本当にもう一度、一度と言わず勉強し直してほしいですね。もっとキャラクターや俳優が大暴れできる世界を作ってほしいと思いました。
ナツヤスミ語辞典でもそうでしたが主宰団体の人たちが軒並みお粗末な出来栄えなのは団体としてどうなのかと。来場者の皆さんは何を目当てに来てるんだろう。私が良いなと思った人は全員客演の人たちでした。“劇団エレガント”の芝居や俳優が好きな人はどのくらいいるんだろう。少なくとも私はこれを見て好印象は1ミリも持てなかった。