観劇・感想

観劇感想:78-spirit performance #2「カワトナガレル」

作:池田美樹/宮園瑠衣子 演出:手島曜 舞台上アート:銀ソーダ
会場:ぽんプラザホール
チケット料金:2,000~3,500円
上演時間:約100分(各演目約45分)

公演の説明
福岡の俳優、手島曜の演劇プロデュース団体「78-spirit」の第二回公演。脚本は熊本の「劇団きらら」の代表・池田美樹と所属メンバーの宮園瑠衣子。
「川」をモチーフにしたインスタレーション空間で「川」にまつわる約40分の演目を2本上演する。
あらすじ
古来、川の近くに文明は生まれた。
人間は川を辿るように生活圏の開拓を進めてきた。「川」は人間が生きていくうえで、血液のような存在である。
しかし「川」の恩恵利用により発展した文明には、自然破壊や人間のエゴなどネガティブな側面を見いだすこともできる。
時代が進むにつれ、さらに発展し続ける文明社会、現代人の営みの中で静かに、時に猛威を奮う「川」は何を語っているのだろうか。その声に耳を澄ませてみたい。※当日パンフより
キャスト
中村公美 ともなが舞 月沢友理香 井上真里奈 古賀駿作 山下万希 岡部竜弥

舞台がまず美しい。
ぽんプラザホールの真っ黒な舞台を地に、銀ソーダ氏の手掛けた、青に彩られた様々な柄の垂れ幕が沢山提げられている。天井から床まで、空間をたっぷり使っていて迫力がすごい。入場BGMも相まって鍾乳洞や川の底みたいイメージ。不思議で冷たい感覚。ホワイエ、エレベーターの降り口にもアート作品がドンと置かれていて導線最初から全て楽しい。まさにインスタレーションって感じ。
「川」のテーマにピッタリ。
受付スタッフの皆さんも青い服装で揃えていらっしゃって綺麗でした。舞台の外でも世界観を創ろうとしてくれてるのがわかるとより嬉しくなります。

一本目:「riverbed」
作:宮園瑠衣子
あらすじ
小さな工場が密集するこの町で働く張本は、その帰り道、高校を退学して一度も会わなかった重田と栗栖に再会する。栗栖は突然眠ってしまう病を高校生の時に発症し、今も時折眠りに落ちていたが、ふたりは当たり前に受け入れ、過去、現在の話、そして栗栖の話へと移り変わってゆく…。
夏の夕刻、3日間の出来事。
キャスト
古賀駿作 山下万希 岡部竜弥

以下、雑感

雰囲気芝居。つまらなかった。

舞台セットや音や明かり、文学部作品の羅列で空気だけはそれっぽい。脚本は独りよがりでわかりにくい印象。パンフの粗筋がなかったら本当に意味のわからん時間だったと思う。

*****

まずもって3人のうち一人が下手。声量調整が役者の気分次第でなされていてめちゃくちゃ聴きづらいボソボソ演技になっていた。脚本や舞台の雰囲気に引っ張られていたように思う。

この手のシットリ仄暗い芝居で一見して下手だとわかるのはかなりマイナス。本来の作品のよさをかなり損なっていると思う。

*****

栗栖さんの存在意義がわからなかった。やはり”幸せだった過去への逃避”→”好きな人の幻影”?的な登場人物だったのだろうか。

ガラパの古賀さんに女性役をわざわざやらせた意図はなんなのか考える。意外性はあったが私にはそこまで読み取れなかった。キャストが捕まらなかっただけ?

良くない見方かもしれないが性別の違いってそこだけですごい意味が生まれてしまうからめちゃくちゃ引っかかってしまった。

別に普通に男として好きでも成立したんじゃなかろうか。

眠りに落ちてしまう病気も何か意味が…?どうにも読み取れなかった。

*****

カンニングばれで高校中退、ブラック企業勤めで追い詰められた青年の自殺直前の現実逃避、妄想?

「三途の川」の手前、みたいなことなのだろうか。

川縁で雨の中佇む3人の姿は暗澹としていて綺麗でした。

二本目:「レーヨン姉妹」
作:池田美樹
あらすじ
その川は、死んだアサリのにおいがする–。
蒸し暑い夏の夕暮れ、建物の窓から博多川を眺めている女たち。
30歳に見える47歳、32歳に見える60歳、35歳に見える97歳、そして24歳に見える24歳。
同じ男を好きになった4人の女たちの、昭和歌謡的ねっとりコメディ、お楽しみに!
キャスト
中村公美 ともなが舞 月沢友理香 井上真理奈

以下、雑感

いやぁ面白い!!レーヨン姉妹。霊4姉妹?

残念ながらも軽くて愛おしい女たち。人生という川の流れの中に留まった想いが、「甘い」とか「苦い」とか一言で言い表せない独特の味わいと賑わいを見せてくれました。

*****

残念≒残留思念ってことかな?生霊的な?

水辺には霊が集まるみたいな話もありますし、舞台装飾や季節も相まってちょっとホラーな設定だったかも。

しかし登場人物たちの明るい(軽い)キャラクターで全然そうは思わせない、しっとりとしたコメディでした。

残った想いを「残念」と自重気味に言い表すのも好きでした。自分の現状があんまり良くないのを自覚してはいるものの離れられない。そんなどこか哀れな様子も愛おしく見えました。

*****

中村(でしたっけ?部屋の主)役の男性キャストの方のお名前がどこにも見当たらず…

あの方お名前なんておっしゃるんでしょう。パンフにはいなかった?ですよね?

もしかしてギターも…?

擦れていった大人の男の空気も。おそらく父親、の浮世離れしたちょっと艶っぽい空気もとても良かった。お名前が知りたい。

*****

オチもよかった。3人の大人が若者をちゃんと帰してあげるの、優しさを感じます。

*****

劇団きらら。池田さんの物語の登場人物たちの、なんでしょう。あけっぴろげな生臭い感じがすごく好きでして。綺麗なとこもそうでないとこも自分の全部を受け止めて生きてくみたいなとこがすごく好きです。今回もその様が遺憾なく発あらわされていて、喋ってる様をずっと覗いていたくなりました。

*****

そう作ったから当たり前だろ。と言われるとそれまでですが、銀ソーダさんのブルーの世界と川縁の二つの物語の世界がマッチしまくってて最高でした。

ラストの歌と踊り、ギター演奏も企画の締めとして最高。2回目にしてこのクオリティの企画プロデュース公演。さすが手島曜さん。78プロデュース、今後も楽しみにしています。