映画・感想

映画感想:「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」

2022年製作/139分/G/アメリカ
原題:Everything Everywhere All at Once
配給:ギャガ

あらすじ
経営するコインランドリーの税金問題、父親の介護に反抗期の娘、優しいだけで頼りにならない夫と、盛りだくさんのトラブルを抱えたエヴリン。そんな中、夫に乗り移った“別の宇宙の夫”から、「全宇宙にカオスをもたらす強大な悪を倒せるのは君だけだ」と世界の命運を託される。まさかと驚くエヴリンだが、悪の手先に襲われマルチバースにジャンプ!カンフーの達人の“別の宇宙のエヴリン”の力を得て、闘いに挑むのだが、なんと、巨悪の正体は娘のジョイだった…!
公式サイトより

以下、雑感

マジでめっちゃくちゃ面白かった!!!!1000倍濃縮映画クレヨンしんちゃん実写版。巷ではボーボボって言われてるみたい。さもありなん。要素が詰まりすぎてて一見わけわからないけど話のテーマ、主軸が一本シンプルに通っているのですごく見やすい。キャラも映像も個性が光りまくっていて一瞬も飽きない。そして胸にくる王道展開。全人類観てほしい最高のエンタメSF映画でした。も一回行こうかな。

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まず何から語ればいのか。全部良かったんだが。すげ〜〜普通に語彙が死んでる。

アクション。主演ミシェル・ヨーももちろんだがキー・ホイ・クァンがすげぇ〜〜。一発で好きになりました。めっちゃカッコよかった!ウエストポーチヌンチャク殺陣でもう完全に持ってかれました。あんなにカッコよくなるのか。アルファが入ってきた時と平時とで顔つきがガラッと変わってすごい。一瞬でカッコよくなる。鑑賞後色々調べてみるとすごい経歴の持ち主のようで…。チェックします。大スターになってた世界線のウェイモンドもキマリすぎていた…。逆に冴えない感じの方が作っていたのではないか。

序盤から中盤にかけて。エヴリンはジョイ(娘)のことや、ウェイモンドと一緒にならなかった世界に気持ちがいくばかりでしたが、他ならぬウェイモンド存在が彼女を思いとどまらせる楔になったのが…もうほんとよかった。構成がうま過ぎる。というか無駄なキャラや要素が全然なくて改めて思い返すとビビる。

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画面や展開はバカで破茶滅茶なんだけど、主軸がずっとブレないからずっと観やすかった。いい意味で余計なこと考える隙間が全然ない。スケールが変わってもジョイは孤独感に悩む娘だし、母であるエヴリンがそこに向き合うため奮闘する。愛やアイデンティティ、家族、人生との向き合い立ち向かい。様々な可能性があるからこそ、今手元にあるものをどう受け入れていくかが大事で。受け入れてからが勝負。そこからまた新たに可能性が拡がっていく、のかな。

自分の中で他人を大きくしてしまいがちだったり。最後の母娘の向き合いの時、それぞれが1人の人間人格として向かい合ってたのが印象的でした。私の中の母、夫、娘、父があるけど、話してみたら思ってたよりすんなり受け止めてくれたりとかありますよね。最後のゴンゴンのくだり。自分と会話が終わったら次は他人と話そう。

そうか。まさに『開眼』ということだろうか。超次元的な意味合いだけでなく、眼を開いて他人や家族を見ろという。だとしたらすごいミーニング。すごい物語だ。素敵だ。

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犬ハンマーめちゃくちゃ面白かった。あんなにシンプルに犬が可哀想な映画珍しい?「ジョン・ウィック」もそうか。でもこっちは笑ってしまうのは何故だろう。謎のパワーと勢いがある。人間シンプルな超パワーにはビビるよりも笑ってしまうんですね。大谷のホームランもそうでした。笑うしかない。

事務員ディアドラ(ジェイミー・リー・カーティス)との戦闘もヤバい。他の映画からのギャップがものすごいし、ハルクかよ。

お漏らしおばさんvsアナル異物挿入男×2のバトルとか誰が予想したろうか。人間の想像力に限界はない。

エヴリンのどんなパワーや技術も「「「カンフー」」」で納得させられてしまう。小指チカラこぶは爆笑以外に選択肢がない。靴の匂いで起こしたらもう日本人にはあれしか思い浮かばんのよ。

戦闘に入るのに「変なこと」をするのルールがまさかこんなに変なこととは。戦い始めても大分変だったが。最高に奇妙でパワフルだった。クレヨンしんちゃんみはこの辺の影響でしょうな。

しかもラストにゴンゴンがサイボーグおじいちゃん(違)に車椅子パワードスーツもよく考えたら無茶苦茶なんだけど納得させられてしまった。

ディルド二刀流とか思いついてもできないぜ。

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批判されがちなポリコレ要素も本当に上手く組み込まれていて全然邪魔に感じなかったしむしろ不可欠なパーツになっていてマジで構成がエグい。マルチバースという設定のおかげで組み込みやすかったのもあるかも。

月並みですが。“あの時こうしなかったら”のIFルートや“別の世界の私”を感じさせてくれるのがすごく面白かった。主軸はエヴリンたちなんだけど、自分自信の様々な可能性を想像させてくれる余白みたいなものがあった気がする。物語に締め付けられすぎないというか。上手く言えないな。この映画を好きになった理由の一つかもしれない。

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本筋と関係ないけど。「マルチバース」といい「タイムリープ」といいSF用語の一般認知度が上がってますね。オタクしか知らない概念だと思ってたんですが。観客側の物語の理解度が上がって創作全体のクオリティもガンガン上がってほしい。どんどん溢れてくれぇ〜〜〜。

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章ごとのインターバルとか。例えば岩の世界とか。ああいった幕間の静けさがすごくよかったな。ともすれば間延びしてしまう危険もあろうにとてもいい「間」だった。そこまでの全部が激しすぎたのもあるけど。

岩世界の雰囲気いいなぁ。あそこどこなんだろう。グランドキャニオン?思えば現実世界も事象が溢れかえってるよなぁ。たまにはああいう世界にも行きたい追いかけて落ちるところは泣いてしまった。

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ディアドラ関係全部エモかったな。

初っ端の「あいしてる」がこう繋がるとは。変な行動って対象のマルチバースで実際にやってることだったりするのかな。指ソーセージ食べさせ合いは中々グロかったけど美しい画だったな。シリアスな笑いかもしれないけど。

人は孤独には勝てない、ということだろうか。

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上手く伝わるかわからないんですが、エヴリンもジョイも一筋縄ではいかない”生きてる”キャラクターだったなと感じて。それがとてもよかった。並の作品なら「ガーフレンドよ」って紹介したらもうOKになりそうなところ、ジョイの繊細な心境が伝わってきた気がする。

その後の家族全員+ディアドラのシーンもいい。戦いあったけど全員集合でハッピーエンド。少年漫画みたいだ。

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兎にも角にも最高でした。全人類観てくれ。私ももう一回観る。映画界、家族、世界、全時空に幸あれ。