観劇・感想

観劇感想:劇団テンペスト旗揚げ公演 「妖怪事変」

作/演出:武東亜斗夢
会場:博多市民センター大ホール
チケット料金:3,000~4,000円※配信3,500円
上演時間:約110分

公演の説明
昨年旗揚げした福岡の劇団テンペストの旗揚げ公演。旗揚げ動員目標1000人を掲げていた。
あらすじ
下記     ※団体twitter@Tempest_0401
キャスト
A:武東亜斗夢 今中智尋 古澤大輔 上野直人 田中耀大 小方真悟 槍剣士ケンジ 朝部聡 三戸雄太 野々口峻 ユメハ 土橋彩音 田中文萌 有田涼哉 木村理紗子 宮田悠輝仁 鳥野まる 村野太星 アンナ 藤柚花 美咲
B:武東亜斗夢 今中智尋 古澤大輔 上野直人 田中耀大 小方真悟 槍剣士ケンジ 木本一成 三戸雄太 海江田健次 ユメハ 水上季歩 山本双葉 有田涼哉 木村理紗子 宮田悠輝仁 鳥野まる 村野太星 アンナ 藤柚花 美咲

以下:雑感

イッテェェェ〜〜〜〜〜〜!!!!!ステージングの何もかもがド下手すぎて痛々しさがヤバい。ずっと共感性羞恥。各種パフォーマーの出し物は多分良いものなんでしょうけども俳優の芝居や物語、何より演出がお粗末すぎて一個も盛り上がらない。「僕は僕の仕事やってます」みたいな空気も滲み出てるしキツかった。そもそも稽古足りなかったんじゃないのか、そんな出来栄え。ここもまたSNS特化の中身スカスカ公演だった。時代かなぁ。キャスト死ぬほど多かったからこの集客も自然かしら。終盤飽きた子供たちの話し声も辛かったな。

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始まる前からまぁまぁ酷い。前説で「一生懸命練習してきました」って言われましたよ。そういう感じね。

開演時間激押ししてるのに写真撮影始めたんだが????前説終わったのに“隠れ妖怪(?)“とかいう謎のダダ滑りトピックに尺を使い出す。“旗揚げだからご愛嬌“をどこまで適用するべきなのか。すでにもう帰りたい気持ちだ。前説も練習して…。

ていうか終わってからもなかったな撮影。なんだったんだろう。入退場もごった返してホワイエも埋め尽くし出入り口も塞いじゃってるし。マスク任意になったとはいえこの密を作り出してるのはどうなんだろう。世間はともかく創作側はもう少し敏感になった方がいいのではないか。

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会場は博多市民センター大ホール。下手に花道。舞台セットはかなりしっかりしてる。

基本的にはステージの前面が板目のアクティング。奥側にはもう一段組んで“凸”型の通路がカミシモ貫いている。蹴込みは濃茶の木目で化粧してあり、センター下はカーテンでトンネルのハケ口になっている。センター上は奥に向けて階段になってるようだ。その他出ハケはカミシモにたくさん。天井からは草っぽい提げもので飾られてる。いかにも演劇って感じの舞台だ。

シーンに応じて板張りの家屋が出てきたり、森の灯りや遊郭っぽい赤格子が出たりとかでちゃんと場転しようとしていた。

だけど全部いらねぇ〜〜〜〜!!!!!

ビックリしたわひとつも必要なかった。無駄予算ですよ。旗揚げにしてすごい余裕だ。一回しか使わなかったし作劇的に全然必要なかった。装置出すのに丸出しの人員でモタモタモタモタ陰で準備してたけど、そここそ暗転下でやれば?見終わって思うに”上手くやろう“みたいな発想すらなさそう。そも装置0でも全然成立させられた話だったな。活かしきれてなかった。

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時代は多分江戸。侍とか服とかから。

物語は1人の侍(てか浪人?)の治(おさむ)の夢オチ。幼い頃親に捨てられ性格が悪くなった治は町娘をチンピラ(?)から助けたりしていたが、粗暴でめんどうくさがりな性格から真意をわかってもらえず孤立していた。ある日謎の声に言われるがまま、家においてあった謎の壺の蓋を開けると封じられていた妖狐が復活してしまう。気を失い、目が覚めるとそこは妖怪の世界。妖怪とは人の夢や願いが形になった存在で、その元となった人間と瓜二つの姿をしている(豆太=小豆洗い)。年に一度の百鬼夜行を控えた妖怪たちは皆浮き足立っていたが、迷い込んだ治のことも快く迎えてくれた。百鬼夜行にはどんな願いでも叶える力があるとかないとか。そんな最中、復活した妖狐は百鬼夜行を潰してその力を手に入れ世界を滅ぼそうと(?)していた。果たして治は天狗や猫娘、河童や孫悟空の力を借りて百鬼夜行を守るべく動き出すのであった……。

みたいな。フワッとしてるのは、フワッとしてたからです。

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とにかく設定や見せ方がふわふわしてました。雰囲気で作ってますね。創作物からしか知識を得ていないやつ。芝居も話も「ぽい」物でしかないからなんっっも伝わらない。

・まず百鬼夜行ってなんだ。なんで何のためにやっててどういう意味があるんだ。それが曖昧だから、夜行を潰すことと妖狐の目的が何もリンクしてない。ただただ寂しかったから騒動を起こした阿呆でしたね。三井がバスケ部戻りたくて荒れてたのとあんま変わらん。高校生はいいけど妖怪がやることか?

・選ばれた歌うま妖怪とか踊り上手妖怪とかだけがやれるパレード的なやつ。つまり”どんたく”みたいなこと?作中での重要度が言葉だけの説明しかないからわからん。ぬらりひょんの葛藤も町内会のおっさんくらいの温度。せっかく妖怪を題材にしてスケールいくらでも大きくできただろうに。

・主人公の名前ダサくね??現代劇ならまだしもこの世界観でおさむくん。全然シマらねぇ。どういうセンスしてんだろう。

・妖怪そのものの個性とキャラ性が噛み合ってない。しかも説明、というか描写なしでいきなり設定だけ言われるから腑に落ちねえ。

この「腑に落ちる」という感覚すごく大事だと思うんですよね創作するなら。あえてパブリックなイメージからズラしたり足し引きするなら説得力のある描写を入れないと観てる側の喉に小骨みたいに引っかかって集中できなくなる。

猫娘に歌上手いイメージ無いし、河童にパントマイムや大道芸のイメージは無い。ていうか河童なら皿くらいつけたらどうなんだ。ただの奇抜な格好した人だったわ。例えば猫娘はクライマックスまでに一度は上手いとこ見せておくとか河童ならせめてあのリングジャグリングで皿回し的に関連づけるとかしとけば私はスッと飲み込めたかもな。知らんけど。

・おさむのキャラもわからんなぁ。雰囲気クールな言動から抜け出せずにほぼチンピラ。なのに周囲の根拠のないアゲのせいで出来の悪いなろう系小説みたいだ。実写でされるとこんな気持ちになるんだな。新鮮なエグみでした。

・最後の“これは種族を越えた愛だ“的なやつ。マジで1ミリもラブな雰囲気感じてなかったから「へ、へぇ〜〜???」ってなった。キャスト陣はどんな心境であそこにいたんだろう。逆にプロっぽいな。

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演出。

しょうもない芝居観た時のもはや定型句ですが、暗転多すぎる。し意味が無さすぎる。演出がなぁ、どうも…。極力少ない方がいい。っていうか、暗転は場面転換の手段じゃないと思うんですがこういうのってどこで習うんでしょう。脱線しますが日本に演出とか演劇の学校少なすぎますよね。福岡の小劇場から0スタートだとまずどこに行けばいいのやら。声優専門系の演劇コースとかになるんでしょうか。

ここで音照使えよ!!みたいなところ悉く外してくる。もっとテンプレやベタをなぞるだけでグッと見やすくできそうなものを。ケレン味とかハッタリとかもっと取り入れて欲しかったかも。ラストバトルなんか猫娘の歌をバックに戦うところだろ。せっかく立派で立体的な舞台なのに。ラストのソロ歌唱ガビガビでしたが。ていうか音響系は普通にセンスない。音のセンスないなと思ったのは久しぶりだ。音も芝居せえよ。

装置や衣装を見るに予算はあるんだろうなぁ。使い所が謎すぎたが。最後急に獅子舞出てきましたよね?めっちゃもったいなくない?あんな立派なもの1万2万じゃないと思うんですがもっと効果的なところあったんじゃ…。ていうかチラシに載ってるやつってもしかしてアレ?なぜあんなポッと出しを…。

歌やダンスやらの出し方も。なぜあんなベタ置きを。脈絡もなくいきなりお見せされてもノレねぇ〜〜。物語にちゃんと組み込んでいかないとせっかくのスキルも魅力半減以下ですよ。いきなりお尻並べられて正直引いた。勝手にとんちんかんかよ。親子連れびっくりしたのでは。しかも長い。ああいうダンスも流れが出来てれば色気が感じられるものなんでしょうけど今回は“下品“しかなかった。完全に演出の問題ですね。

思うに自分の気持ちや妄想の価値が高すぎるんでしょうね。「自分カッコいい!!」を信じて疑わない豪胆さはある種必要な気質なのかもしれませんが。観た人に伝えようわかってもらおうみたいな感覚0でした。この辺は藍色企画と同じですね。さすが母体団体。誰か親身になってくれる大人はいないのか。

Twitterでよく見ましたが結構なメンバーが「代表の夢を叶えたい」的なこと言ってるんですよね。側からはほぼマルチや宗教みたいな空気に見えてるんですがそのへん大丈夫なんですかね。そのくらい求心力のある主宰者なんでしょうか。

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殺陣がシャバすぎるなぁ。誰が作ったんだろう。初めてだったのかしら。完全に舞台のスケールに対応できてなかった。あれだけ人数いて上手いと感じた人間0だったし、一手も何やってるかわからなかった。多少身体能力が高い人もいたようだけど、周りと全然噛み合ってなかったですね。

大体妖怪たちはなんで全員ステゴロなんだ。妖力を使えよ。いくらでも遊べる世界観だったでしょうにすごく勿体無い。音も灯も無いわけじゃないようでしたし。天狗様が堂々と出てきて普通に負けたのはビックリした。展開的には妥当かもだけど持っていき方があるでしょう。俳優さんが可哀想になった。

そんで雷獣とかまいたち。隠し球的に出てきたと思ったら、地味でしたねぇ〜〜。あのキャラと衣装でちまちまと……。風と雷でしょ?強キャラじゃん。もっとビカビカ使えばいいのに。ラスト何故かいないし。消滅した?

振り付けがダメだったのもさることながらそもそも技量が下手すぎる。特に主役の治はひどい。あのキャラでへにゃへにゃの刀使いはダサすぎる。ラストの一対一は目を覆いそうになった。まず両手でちゃんと持て。振れてないから。独学なのかしら。その癖なんか小賢しいムーブしようとして出来てないし。芝居も足元も滑っている。「るろ剣」はじめ昨今のアクションの流行りについて考えるなど。憧れてできない若手多いなぁ。カッコいいけどね。もっと地に脚をつけたほうがいい。

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天狗役14+の古澤さん。最近はなんだ。福岡のベテランは若手に弱味でも握られてるのか?正直こんな姿見たくなかった。素晴らしい俳優さんなのに。団体はどんな俳優さんなのかもっと考えて使ってほしいものです。お疲れ様でした。

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「妖怪事変」なんてタイトルつけるからには妖怪好きなんだと思ったんですがあんまりこだわりない感じですね。そも役名が“天狗”、“猫娘”、“妖狐”って。おさむのことも“人間”って呼べよ。いやこれはおさむの妄想世界だからいいのか?愛が感じられない。猫娘は鬼太郎だし妖狐の妖狐要素どこだ。京劇の悟空だし。なんで日本の妖怪で悟空?猪八戒ときたら河童は沙悟浄だろ。なんでそこは外す??ムズムズした。口裂け女は昭和の怪異だろに。作品よりもキャストに似合うようにwikiから引っ張ってきただけ感だ。さすがに考えすぎか。

・オープニングの謎の行進なんだったんだ。カミ手から出てきて半周してカミ手にヌルッと帰る。出ハケミスかと思った。

・おさむのチョロ毛がセリフのたびにぴょこぴょこしててダサかったな。

・妖狐がおさむを鍛えたということは封印されたのって時系列的にいつだ。10年くらい前?妖怪視点だとほぼ瞬なのでは。

とか。

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先日の観劇が学芸会ならこの演劇はお遊戯会でした。無知で無恥。頭からケツまで自分達のことしか考えてなかった感じでしたね。代表の誕生日も結成日も死ぬほどどうでもいいんですよ。ほんとにどうでもいい。観客の立場から言うのもダサいですが、私たちは金と時間使ってるわけで。Twitterで1000人集めると豪語していましたが、その集めた人数を楽しませる最低限の責任が創り手にはあるんじゃないでしょうか。

もう舞台から降りた私が言うことではありませんが。もう少し意識を高く持っていただきたい。切に。

当パンもなかったし。役者ももちろん、テクニカルはじめスタッフさんやあの沢山いたダンサーさんたち誰が誰なのかひとつもわからない。関わって協力してくれた人たちをちゃんと名前を載せて示すって主催団体としてとても重要な仕事だと思うんですが。ていうかこんなパフォーマンス主体の演目作るならちゃんと宣伝してあげたほうがよくない?次に繋がるかもだし。誕生日サプライズ()してる余裕あるならそっちに回せよ。基本的に他者への敬意が感じられん。

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例えば同じ低クオリティでも、先日の『BENKEI』は演劇舐めてる大人の不勉強やサボりのせいで怒りが湧いてきましたが。今回は「あぁこの子達は何も知らないんだな」という、自意識肥大パターンで哀れになってくる感じでした。いずれにせよいろんなインプットと客観性が足りませんね。旗揚げとはいえこの座組がまともな(?)公演を打てるのには相当な時間がかかることでしょう。もうしばらく観ませんがいつかの覚醒を薄く期待します。

なんにせよ福岡に新しい団体ができたことは間違いなく尊い。そこだけは。