観劇・感想

観劇感想:非・売れ線系ビーナス第29回公演「夜風の□(うわさ)」

作:田坂哲郎 演出:木村佳南子
会場:ぽんプラザホール
チケット料金:2,000〜3,500円
上演時間:約80分 公式サイト

公演の説明
非・売れ線系ビーナス第29回公演。
あらすじ
わたしの祖母は拝み屋のようなことをやっていて、定期的に公民館で集会を開いていた。そこにはたくさんの人がいて、わたしも何度か連れていかれた。そこでは祖母はまるで神様のようにしていて、わたしはそれが本当に嫌だった。みんながわたしのことを神様のあとつぎだと思っているようで、それも嫌だった。そんな祖母が先日死んだ。わたしは戻ってきた。遺品の整理をするために。それは、本当に嫌な仕事だった。 ※チラシより
キャスト
青野大輔 风月 田坂哲郎 にしむらまなみ 富田文子

以下:雑感

キモ怖かった〜〜。気味悪いのほうが正確か。嫌な親戚周りの家族問題とオリジナル宗教のじとっとした質感がキモすぎた。そして怪異が結構マジで物理的に来るタイプの”負けホラー”。救いはないのか。「クツワダ」ってガラパのあれ?劇団員だけでなく世界観もクロスオーバーするのか。今後の展開に期待。

映画「来る」に雰囲気似てた気がする。ぼぎわん。

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囲み舞台。「クツワダ」という町の姉弟が住む一軒家。ぽんプラザの真ん中に黒パンチで正方形のアクティングエリアが設けられている。中央に黒いダイニングテーブルと椅子が二脚。喫茶店みたいなピッチャーとコップがたくさん置かれている。テーブルの足元に赤い孫の手。エリアの隅に水桶(ゴミ箱?)

天井からポールが四隅に1本ずつさげられている(家の柱?)。センターテーブルの上には電灯。壁には空の額縁(祖母の遺影)。

それら全てを囲んで円形に客席が配置されている。50席強かな。その列の隙間を縫って捌け口が3つ。会場入り口が家の玄関。会場奥カミ側が祖母の部屋。シモ側が弟の部屋。

最終的には第四の壁を越えて集会所にされたしまった。気持ち悪かったぁ〜〜

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怪異周辺よりも。葬式で集まった親戚周りのゴタゴタとか不和のほうが生々しくてイヤ感強かったな。町から出て行かない、行けないとか。嫁への当たり強い。父親に似てたらなぁとか。

賢子(富田文子さん)の自嘲気味な例えもキツい。

なんというか、何したら良くなるのかみんなわかってるのに明言出来ないモニャモニャしめじめした感情があるんですよね。普段関わらないのに「家」で繋がっちゃってる人間たちってそんなもんだろうか。嫌な気持ちになりました。

歳(青野大輔さん)との会話の間合いの測り方とかもリアリティがあってよかった。お二人とも達者だ。

座間さん(にしむらまなみさん)の「言葉通じるのに話通じない」感じとか。古蟹(田坂哲郎さん)の関係ないが故のフラットなスタンスが鼻につく感じとか。あ〜〜〜〜ってなった。覚醒後お姉ちゃんの会話でナチュラルに始末されてるの怖すぎる。

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むっちゃん(风月さん)周りだけちょっとわからなかったな。本物はどうなったんだろう。存在はしたよね?1番怖いポイントだったけど。物語的にも”転”の部分かな。

トシくんの心境たるや。ベタだけど「あなた誰?」のところはゾゾゾッときた。予想ついてたのに。芝居で引っ張り込まれてしまった。クッキリ物理的に襲ってくる怪異嫌すぎる。”わからない”が1番怖いよね。

「本物むっちゃん」と「箱むっちゃん」とで脚の組み方逆に変えたりしてたのかしら?いやーそういう細かい違和感作ってく芝居、好き。(勘違いだったら恥ずい)本物の真剣さに一瞬希望を見出せたのが更に絶望を加速させてきた気がする。

正体はおばあちゃん?すらも捕えていた”カンバンサマ”ということなのだろうか。どうやって倒すんだろう。「お帰りください」が鍵っぽいけど、あの状況ってもう手遅れなんだろうな。14+『トピカペニア』でも思いましたが、宗教周りの設定集とか知りたいな。怖いけどそういうのは好物です。

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クツワダ。絶対ガラパのあれですよね。青野大輔さんの二重所属もありますし、団体同士も仲がいいのかな。福岡演劇のファンサービスなのか。

なんにせよ、作品の枠を越えた拡がりが感じられてちょっとワクワクしました。いつか福岡の小劇団でひとつの町を描いたりした日にゃー………なにか壮大な世界が出来上がるような気がしますね。

今のところはトラブルだらけの嫌な町だが。普通にお化けおる。

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シームレスに始まり、境界を崩して巻き込まれて終わった。演目としての区切りがハッキリせず、その分不気味さがずっと付き纏ってくるようで。面白かったけど胃が重たくなって劇場を出ました。初めての感覚だった。

ホラーをしっかり創造できるのは本当にすごいなぁ。田坂哲郎さんはお化け屋敷プロデュースなんかも出来るのではなかろうか。飛躍しすぎ?まだまだ沢山観てみたくなる世界でした。まさに怖いもの見たさか。『先生の暗いロッカー』でも確かバッドに終わってましたが、いつか怪異を打倒するエンドはあるのか。今後も楽しみにしてます。