映画・感想

映画感想:「SISU/シス 不死身の男」

2023年製作/91分/R15+/フィンランド
原題:Sisu
配給:ハピネットファントム・スタジオ

あらすじ
1944年 第二次世界大戦末期、ソ連に侵攻され、ナチス・ドイツに国土を焼き尽くされたフィンランド。凍てつく荒野を旅する老兵アアタミ・コルピ(ヨルマ・トンミラ)は、愛犬ウッコを連れ、掘り当てた金塊を運ぶ途中でブルーノ・ヘルドルフ中尉(アクセル・ヘニー)率いるナチスの戦車隊に遭遇、金塊も命も狙われるハメに。アアタミが手にしているのは<ツルハシ1本>と<折れない心SISU>だけ。それでも戦場に落ちている武器と知恵をフル活用し、ナチス戦車隊相手に、機銃掃射を浴びても、地雷原に追い込まれても、縛り首にあっても、挙句の果てに戦闘機にツルハシ1本で食らいついても、絶対に死なない!それどころか、機関銃を撃ちまくる敵には埋めてあった地雷をぶん投げ、一撃で爆殺。戦場にたまたま落ちていた武器と知恵で次々とナチス軍を討ち破る。彼こそはかつてソビエトとの冬戦争に参加し、家族を殺された報復として、たったひとりで300人ものソビエト兵を殺した<伝説の兵士>だった。アアタミはいかにして戦い、そして生き抜くのか――。そしてアアタミの目的地とはー?
公式サイトより

以下、雑感

おもしろかった!!!表現がちょいグロいが、おじいちゃんの等身大の不死身感(?)がよかった。正統派「舐め殺系」映画。フィンランドのジョン・ウィック。限界バトルで陸海空制覇。作り手側の“これやったらおもろいやろな”が見えてきて二重に痛快だった。最後はもはやギャグ。あとめっちゃ言われてるけど犬は無事です。

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馬~~~~~~~!!!!!

いや、まずは馬を偲びたい。犬はなんやかんや無事そうな気配を感じたのに…。地雷原めちゃくちゃビックリした。チャプター3からの不穏な感じが高まっていくのはもはやナチの連中に共感してしまった。なんで死なんのだあのじいさん…。そして部下の人たち可哀そうすぎる。
しかし、じいさんカッコよかった。堀の深いシルバーな老兵。傷だらけの肉体。メインウェポンがつるはし。一人暗殺部隊。Uターンして戻ってこいの所はまさしくジョン・ウィックを訪仏とさせる。不気味なくらい死なない。でも捕虜を一旦スルーしたのに金塊奪られかけた時にキレる俗っぽさ。魅力がパンパンに詰まってますね。最高。
あまり比較してもアレかもだけど、ジョン・ウィックと違うのはシスはもう失いつくしてるからこその俗っぽさなのかもしれませんね。

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陸海(川)空と全戦場コンプリートするとは思わなかった。
川バトルはもうホラーだったな。もはやそういう妖怪だろ。部下の人たちホントにかわいそうだったな。

川で戦った時一瞬よぎったけどまさかホントにやるとは。ミッションインポッシブル。さすがにもう怖い通り越してギャグ漫画だった。そうはならんやろ。一人だけ世界観が違う。ラスボスのとどめも痛快すぎる。一番劇的で派手だった。受けが多すぎて痛ましかったけどスカッとしましたね。めっちゃ笑ってしまった。

あの墜落はさすがに嘘だろ!もう笑いも通り越してこっちから突っ込んでしまった。普通に這い出して来るな。よしんば無事でも絶対病気になるわ。段々主人公を見る目が変わっていくのも面白かったな。

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ナチの副官倒したところ。なんで殺さないのか素直に疑問を持ってしまったが後にしっかり納得させられた。まさか捕虜の女性たちにケリを付けさせるとは。因果応報。女性たちも強固な意志で立ち上がってカッコよかった。ポリコレ要素なのだろうか。だとしても綺麗に組み込まれていて美しいシーンだった。ナイス構成。2000年代なら集団で射殺して気がする。最終的に不殺だったのもよかったな。

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犬がかわいい。

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ルートがマジで一本道だからめちゃくちゃ見やすかった。つるはし持ったキャラで横スクロールゲームが作れそう。

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主人公のセリフまさかのふた言だけとは…。そういや喋ってなかったなってなったのは「マッドマックス4」見た時と同じ感覚。セリフなくても熱さや感情って伝わってくるもんだ。敵味方双方、どろどろの粘度高めの欲求が出まくってた。時代背景がそうさせるのか。冒頭のフィンランドの美しい大地と対比されるようでそこもぐっときたな。土から掘り起こされた黄金をめぐって欲深い人間同士で相争う。なんだかそんな皮肉めいたメッセージも勝手に受信してしまった。昨今慌ただしいですしね…。そんな世界で絶対あきらめない伝説の男・シス。死ぬほど痛快だけど同時に勇気が湧いてくる、かっこいい主人公でした。
捕虜の人たちとのシンクロがすごかった。ラスト悠々と換金しに行くのがクールすぎる。
いい映画でした。