作:岡部竜弥 演出:岡部竜弥、松永琳太郎
会場:ぽんプラザホール
チケット料金:1,500~2,500円
上演時間:約60分
公演の説明
「ギムレットには早すぎる」「劇団焚火」「末席ユニットちりあくた」の3団体が企画した合同公演。
あらすじ
ここは試験的に飛び級を採用している、中高一貫校。そんな学校で本来は中学生の年齢でありながら、高校の授業を受けている少年がいた。彼はある日、職員室に呼び出され、担任の教師にこう言われる__
「君成績がたりてないね。もし、次のテストでいい点が取れなかったら留年だね」どうしても留年したくなかった少年がとった手段とは…? ※チラシより
キャスト
赤阪陸央 岡部竜弥 下沖悠人 玉城栄流 松永琳太郎 村岡勇輔 山下万希
以下:雑感
終始「もうちょっと…」っていうところで盛り上がりきれない芝居だった。若手が集まって高め合うのは最高に喜ばしいことだが”若手”の下駄を脱がせたら正直あんまし面白くない。ベースの芝居プランが挟み込むギャグに合ってなかったり、全体の緩急をつけきらなかった。最終的にはしっとりいい話だったけれど、ちょっと長い60分でした。
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ぽんプラザのオーソドックスなアクティング。平台で上がっている。蹴込みは黒化粧してあるが上面は板目。センターに箱馬二列×5。上に二つ箱が並べて置いてあり、ベッドみたいに見える。奥に学習机?ご5つ並んでいてクイズ番組みたいだ。幕は半端に空いていてプロセのように仕切ってある。平台の手前ツラ側2間分くらいリノリウムが敷いてある。
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天才?というよりよくいる早熟秀才主人公・リクオ。赤子の時から早熟っぷりを遺憾なく発揮したリクオは小学生のころから周囲とのギャップを感じていた。というかアホアホ同級生をうす〜く見下していた彼は中学受験を決意。友達にも勉強を教えつつ難なく私立に合格。中学でも優秀な成績をおさめた彼は、さらに飛び級制度に受かり高校生に。しかしいざ飛び級してみると赤点を連発。ついには留年危機に陥るが、感覚だけで勉強してきたリクオは勉強の仕方がわからず…
みたいな。
見栄と現実と理想と。等身大の自分や他人を認める大事さを感じられた、いい話でした。
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「飛び級したのに留年ですか!?」
という、タイトルでソコが主題なのがわかってるのに問題まで辿り着くのが遅すぎた。おかげで赤ちゃん〜補修までがずっ〜とダルい前振りになってしまっていて途中で飽きちゃった。わかってる情報は最初に明示してくれたほうかモヤモヤしなかったかも。赤ん坊のインパクトを最初に持ってきたかったのはわかる。
ただでさえリクオの1人語りのターンが随所に挟まるのが、観客からするとその時間で毎回冷静になってしまうのも長く感じた一因かしら。
小学生時代の環境をリフレインして「リクオの主観(願望?)」と「実際の反応」と分けて刺してきたのは効いた〜。これは演劇センスだ。面白かった。
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基本の会話の芝居と、挟み込みたいギャグに必要な芝居のテンションが噛み合ってなかったように思う。基本がいわゆる”自然な会話”のテンポ。やりたい笑いはフリとオチのキレが必要な種類のようだったが、1人語りと同様のゆるさで入れてくるので読めてしまったしシュールギャグになってしまっていたように思う。もっとケレン味を効かせて思いっきりボケてもらったほうが爆笑できて主題も締まったのではなかろうか。ネタ自体は面白いと思ったし、単純に声が今の倍大きければ(届いていれば)それだけでおもしろくなったんじゃないかなぁ。
チラシビジュからもコメディ色ビンビンだが実際はまじめ〜な演劇で終わった。よくないギャップだったかなぁ。「笑い」が強まるだけで絶対もっと面白かったのに。見せ方がもったいなくて惜しいと思うところしばしば。なんというか、小ネタが全部ちょっとわかりにくいんだよな。思い切りが足りないというか
死ぬほど細かいけど、
・最初の赤ちゃん。俯瞰の舞台でフラットに近い登場だったので一瞬探る間ができてしまって「なるほど赤ちゃんでベッドだったのか」となってしまった。ギャグでなるほどと思ってしまったらもう笑えなかった。せっかくインパクトデカい登場なのに勿体なかったなぁ。明転から瞬間でわからせてほしかった。
・シンプルに声が届いてこなかった。声小さいとは違くて、なんか遠かったです。甘棠館でやるサイズの芝居になっていたと思う。プロセのせいかな。囲うと遠く見えるんですよね。
・あいだ間のおふざけや掃除が全部ふわふわしてて邪魔してしまっている。たぶん文字になってない部分だと思うんですがこの世界のリアリティ感ならもっと細かく決めてきたほうが浮かずに済んだかも。掃除とか何してたかよくわからん。ダンボールに詰め替える謎の作業とか。せめて全部ダーツくらいディテール詰まってればなぁ。照れのあるエチュード見てるみたいで常にちょっとキツい。
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個々人それぞれの喋りややりとりは下手とは思わないんだが
この団体においては”若い”というのは未熟さや拙さの言い換えでしかないな。新鮮味もアツさも挑戦も青臭さもない。自分たちの手のひらの中だけで無難に収めてしまった印象だ。さほどテンポの速くないやりとりでまあまあ噛んじゃってたし稽古もそこまでやっていないのではないか?
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オタク的願望だけ言うと、最後ムラオカのことちゃんと「先生」って呼んでくれたらめっちゃエモかったな。呼んでたっけ?
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勝手なことばかり書いてしまったが
大学演劇→演劇祭→独立という流れが定着しつつあるのは本当に嬉しい。この世代だけで終わらず連綿と続いていってほしいが…
もっと調子に乗ってバンバン創作続けていってほしい。台風起こしてくれ〜〜〜。