観劇・感想

観劇感想:ゴツプロ!Presents / 青春の会 第五回公演「熱海殺人事件」

原作:つかこうへい
脚色:高橋広大(ナイーブスカンパニー)
演出:井上賢嗣(青春の会)
会場:ぽんプラザホール
チケット料金:3,500~5,500円
上演時間:約117分

公演の説明
関東の”ゴツプロ合同会社”主催の団体「青春の会」のツアー公演。東京、大阪、福岡の三都市で上演された。
青春の会 とは:1990年に福田雄一とともにブラボーカンパニーを旗揚げ以降、ブラボーカンパニー、ゴツプロ!と舞台を中心に活動している佐藤正和と、北区つかこうへい劇団14期生としてつかこうへいの世界で活動してきた井上賢嗣が、今見せたい「演劇」をより多くの人々に楽しんでもらうことを目的として2020年に結成されたユニット。
公式サイトより
あらすじ
静岡県熱海市で、殺人事件が起きた。九州から熱海へやってきた犯人の男性は、浴衣の紐を使い女性を殺害したのだった。「くわえ煙草伝兵衛」と呼ばれる刑事がさまざまな捏造や工夫を加え、その地味な事件を犯罪史に残そうとする。※バージョンによって多少差異がある
キャスト
山本亨 塚原大助 酒井晴江 佐藤正和

以下:雑感

最高だった。令和の今福岡に居ながらにしてつか作品を生で観られるとは。そのうえ主演木村伝兵衛があの山本亨。良さしかなかった。ディープなつかファンからすると私なんかニワカだと思ってますが、「熱海」のお約束を守りつつ、破りつつ、飲み込みやすく整えられていたなと感じました。令和ナイズドされていたというべきか。しかしながらつかのエッセンスは遜色なく敷き詰められていて満足度高すぎる。”今”の人間が失くしてしまったカッコよさがありますよね。最高の2時間でした。

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熱海だー。開演前から雰囲気すごい。舞台は取り調べ室。センターにドンと構えた仕事机に革張りの椅子。黒電話。灰皿。傍に丸椅子。机の後ろは焦茶色の蛇腹の壁がテッペンまで届いている。床面は真っ黒パンチ。カミシモにパイプ椅子と台。「熱海殺人事件」だ。福岡で生で観られるとは。期待がすごい。心無し客層もいつもの観劇層と違う気がする。

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濃い時間だった。白鳥の湖がもうね。「キターー!!!!」ってなりますね。その直後「声ちっさw」ってツッコミましたが。いきなり予想外してきてくれて笑ってしまった。そしてタキシードじゃない!!はーこういうアプローチもありなんですね。白い伝兵衛も新鮮で素敵だ。
山本亨渋いな〜〜!!ビジュがもう強すぎる。ダンディって言えばいいのかなんなのか。令和の男の子から失われかけてい“男”感がありますなぁ。タバコも似合いすぎる。自分の年齢もネタに活かしていじれるのは素敵だなと思う。側転決めて「60よ」はめちゃ笑ってしまった。ていうか身体能力が60じゃないな。すごい俳優だ。側転もそうだけど、最初の中腰の電話とか、随所で身体性の高さが出てて尊敬しかない。地味なところかもですが。終盤にしっかりタキシードに着替えてきたのもキマってた〜〜〜。「熱海」は何パターンか見てきましたが脚色の方はすごい綿密に練ってきてたんでしょうね。セオリーを外しつつも、欲しいところはビシッと決めて。大変かっこいい木村伝兵衛でした。一番「残された家族は〜」のところが私は刺さりました。実際の所はわかりませんが、ここんところが「熱海」通しての伝兵衛の動機なんじゃないかなと信じてる派です私。煙草がキマりすぎてる。

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19歳の金太郎にしてはビジュアルがおじさんすぎる気もしましたが芝居にやられましたね。浜辺のシーンはもう無理だ。語彙力がなくなる。芝居がうめえ~~~~キャスト皆さんそうですが。この~”尊厳”みたいなところがやりとりのひとつ一つで段々とひび割れていく感じがいたたまれねぇ~~~~~。人間のダサさと尊さが同時に摂取できるのがつか作品の好きなところ。今回は映画「パラサイト」を思い出した。

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脚色がすごい。例えば私なんかはつかこうへい作品なんか恐れ多くて半端に手を付けるなんてとてもできない。水野の扱いと熊田の過去をカットしていたのが特に印象的。おかげでフォーカスが絞られてよりわかりやすかったかも。

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ぽんプラザホールで5,500円は福岡相場からするとお高めだが、満足度やクオリティから考えると安いくらいだ。作品とキャストのクオリティ揃っていたら値段とか関係ないんだなと納得。福岡演劇の現状に可能性と諦観を覚えるなど。傑作はいずこ。

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とにかく濃密な二時間だった。ラッキーなことに終演後キャストさんたちからひと言聞けたのがよかった。とてもいい座組だったのが伝わってきた気がする。カテコで鳴りやまない拍手、もちろん私の手も止まらなかった。去り際山本さんが佐藤さんに手を拡げて舞台をハケるのも渋かったな。ゴツプロさん、今回初めて知りましたがまた、何度でも福岡に来てほしい。7月柳川も行けるかしら。とても充実した2時間でした。

つか先生がご存命だったら今は何を作るんだろう。