映画・感想

映画感想:「ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ」

2024年製作/日本
配給:渋谷プロダクション
あらすじ
殺し屋協会に所属するプロの殺し屋コンビ、杉本ちさと(髙石あかり)と深川まひろ(伊澤彩織)が宮崎県に出張。到着早々ミッションをこなし、バカンス気分を満喫していたが、ちさとはとあることに気づく。今日は相棒まひろの誕生日、しかしこの後は次の殺しの予定が入っていてプレゼントを用意する暇もない! 内心の焦りを隠しつつ、ターゲットがいる宮崎県庁に向かう。チンピラを一人消すだけの簡単な仕事のはずが、指定された場所にいたのはターゲットに銃を向けている謎の男。この男の正体は一匹狼の殺し屋、冬村かえで(池松壮亮)。 150人殺しの達成を目指す“史上最強の敵”が、ちさととまひろを絶体絶命のピンチに追い詰めるのだった・・・。
公式サイトより

以下、雑感

よかった。3作目が一番なんていうか「ドラマ」だったような印象。前2作の娯楽性を残しつつも人物たちの過去や本編で描かれていない”日常”に思いを馳せてしまった。まさに「ナイスデイズ」って感じ。ちさとまひろの明るさと、冬村の暗さの対比がより日常を際立たせてきた。そもそも明暗のギャップがシリーズの魅力の一つだと思ってるけれど今回はより強く感じられた。
殺し屋たちそれぞれの日常と孤独、ギリギリ繋いでいる人間性や絆。明るさの裏にある人の人間の魅力が出ていた気がする。
それはそれとしてラフすぎるギャグパートと、前作よりいいもん作るぞ!の気合がすごい(色んな意味で)ゴリゴリ格闘パートは相変わらず楽しい。これからも二人愉快な日々を続けていってほしいぜ。ドラマも観ないと~!

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序盤。空気感は「用務員」とか「黄龍」の感じ。しかし池松壮亮かっけぇな!ホントにべびワル観に来た?全編通してそうだけど、この人だけ雰囲気が韓国ノワールみたい。マ・ドンソク出てないよね?間違って「犯罪都市」観に来ちゃったかなと思うくらい悲愴。広川役カルマさんの二次元にしかいなさそうなビジュと相まってすごい業を感じる。

ビーチ!ここ無駄にセクシーな見せ方してなくてなんか良かったな。ひと昔前の邦画なら確実に入ってたであろう部分。でもちさまひもそんなキャラじゃないし順当か。なんかこの辺からも、瞬間的にテンション上がってすぐダれちゃう感じ、「2人だけの日常」が感じられてえがった。なんか本当タイトル通りだな。良。
ふと思うけど、旅行が楽しいのって帰る場所があるからだよな。「1」「2」と経てちゃんとできたんやなぁ。感慨。
そしてまひろハタチに普通にびっくりする。

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宮﨑県庁バトル。空間使った立体的な追いかけっこ攻防が楽しい。しかしこれ県庁は大丈夫なのか?という心配をしてしまう。変な意味でもハラハラ。

「牛食べようね」→ジャキ! からの空気と表情の切り替えシビれるわー。カッコいい。
序盤から「1」のフィニッシュムーブ(急ブレーキ頭突き?)攻略されるのは上手い構成だ!登場から只者じゃないのは出てるけど、これで明確に”これまで以上の敵”に見えた。わかりやすい。少年漫画的。良。
なんか冬村の体術ってこれまでの人たちより踊ってるみたいでカッコいい。

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入鹿と七瀬。この二人も好きだなー。それぞれキャラ性のパラメータがとんがってて個性的だ。「灰原哀に憧れてて~」は笑うしかないだろ。前田敦子だし。中二病と推しキャラは人生を狂わせる。罪深いな灰原哀。
いがみ合い方も和解の仕方もすごくよかったな。孤独の中にいて人づきあいがクソ苦手な人たちの本音の歩み寄りと認め合い。微笑ましい。悪く言えばADHD的なムーブだと思うけど、勇気出して人と関わろうとする行為は尊いよね、映画の創作キャラだけどさ。
七瀬はホントに見守ってるだけだったな。良いキャラしてるけども。しかし脳筋パワーキャラが怪力を発揮しないこととかあるんだな。そこは意外。

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冬村かえでのキャラ造形予想外だな!プロフェッショナル殺人マシーン系かと思ってたら、結構ADHD気質な不器用こだわり強いマンさんだった。でもさみしんぼ。難しいキャラクターだったろうな。味が濃い。
とどめのヘッドパッドからの膝!!一度攻略された技をおとりにしての逆転。相変わらず決着がロジカルで素敵だ。

今作新登場の人達だけでなく、ていうか過去作の殺し屋たちにもそれぞれ”日常”があって。総じて孤独と戦ってきたんだろうなというのが、今作を観てて一番思ったことだな。冬村の日常の描写や、「ファーム」の連中と冬村の対比。日記やランキングの話(過去の積み重ね)をする冬村に対して、「この仕事が終わったら~」という未来の話をするちさまひの対比がより彼らの孤独を際立たせて感じさせてくれた気がする。宮﨑の暑そうな空気の中でもなんかずっとちょっと寒かったもんな。
お互いがいなかったらまひろもちさとも冬村になってたんだろうなという、月並みな感想。
テーマにすごく真摯だった気がするな。良良。

冬村、最後にハンカチ(まひろの手)を取れ(ら)なかったのが全部を表してるよな。だからこうなってるし、だからそうなれたんだろうな。悲しい。

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ちさとまひろの「お互いを失いたくない」が尊すぎる。安い感想になってしまうが。「1」以前からの積み重ねで、お互い依存かもしれないけど。
2人の明るいノリでまぎれてしまうけど、この二人が殺し殺されの世界で馬鹿で居続けられるのはお互いの存在ありきなのを言外にわかり合ってる感じがね…。これって信頼越えて愛じゃね?二人には似合わない言葉かもしれないけどさ。なんかすげーよかったよ。尊。

フォーマル周りの馬鹿会話好き。

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あの男の子は結局何だったんだろう。読み取れなかったな。パンフとか買ったらわかるかな。

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最後苺ショートで終わったの最高かよ。

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全部面白いけど、今作が一番好きだったな。自分も各キャラたちのことを好きになっていった故でしょうか。それでも好きになるまで続いてくれてファンとしては嬉しい。これからも広がり続けてほしい気持ちはあるけれど「3」がとてもキリがいいので綺麗に締まってほしい気持ちもある…。でもこれからも好きだ「ベイビーわるきゅーれ」。とても楽しかった。