映画・感想

映画感想:「ベイビーわるきゅーれ」

2021年製作/95分/PG12/日本
配給:渋谷プロダクション

公式サイト

あらすじ
女子高生殺し屋2人組のちさととまひろは、高校卒業を前に途方に暮れていた・・・。
明日から“オモテの顔”としての“社会人”をしなければならない。組織に委託された人殺し以外、何もしてこなかった彼女たち。
突然社会に適合しなければならなくなり、公共料金の支払い、年金、税金、バイトなど社会の公的業務や人間関係や理不尽に日々を揉まれていく。
さらに2人は組織からルームシェアを命じられ、コミュ障のまひろは、バイトもそつなくこなすちさとに嫉妬し、2人の仲も徐々に険悪に。
そんな中でも殺し屋の仕事は忙しく、さらにはヤクザから恨みを買って面倒なことに巻き込まれちゃってさあ大変。
そんな日々を送る2人が、「ああ大人になるって、こういうことなのかなあ」とか思ったり、思わなかったりする、成長したり、成長しなかったりする物語である。

以下、雑感

めっちゃ面白かった!!評判以上の充足感。
圧巻のアクションはもちろんのこと、「殺し」と「生活」の混ざり具合とギャップの描き方が素晴らしい。
散りばめられた小ネタもセンス抜群で充実した映画鑑賞でした。

*****
こういったバディ物のアクション映画だと、片方ダメダメでも片方はシャキッとしてるっていう凸凹コンビが通例。(ラッシュアワーとか、タイガー&バニーとか)
だと思ってたんですが、開幕そうそうビックリ。

二人ともダメなのかよ!!!

あらすじは読んでたんですが、ダメなのはまひろだけだと思ってたのでめっちゃ突っ込んでしまいました。
ダメの質が違うだけで二人ともあかんかったとは。
しかしこのダメ加減もなんだか愛しくなる、抜群のバディですね。応援したくなる。めちゃくちゃ人殺してますけど。

*****
まひろ役の伊澤さん、声めっちゃ可愛い。アクション動画などで感じた印象はかなりクールな印象だったのでこれまた予想外。

「コミュ障の人見知り」の描き方が秀逸でかなり胸が痛くなりました。
いるいるあるあるこんな場面。集団や初対面だと上手く動かなくなるんですよね身体が。

でも一番良いなと思ったのはちさとに謝るところ。
自他ともに認めるコミュ障故に敬語とか全然苦手なのに、大事な人に謝りたくて恐る恐るでも歩み寄る感じ。
不器用な親愛を感じられてとてもよかった。

そしてそれをしっかり受け止めて、二人の「普段通り」に帰ってくるちさと。エモい。

キャラのお陰で全然重くならないですが、かなり殺伐とした世界で生きてますよね。幼少期とかどんな感じだったんだろう。
今は二人しかいないのかな。
多く語られないだけに想像が膨らむ関係性もまた、物語に奥行きを出してくれてる気がします。

まぁシンプルに仲の良い二人が微笑ましくて好きでした。
一仕事終えた後、手を出して引き起こしてもらうの可愛い。

*****
アクション!!!!!!

すんごい!速っ!強っ!怖っ!めっちゃ痛そう!!!
語彙も無くなります。

「アクション映画」を観に行ったので、正直前〜中盤はアクション的な面で見ると「あれ?」って思ってたんですが、最後カンペキに眼を覚まさせられました。

なんだあれ。す、すご〜〜いってなりました。
自分なりにアクション映画は観漁ってきたつもりでしたが、まったく新しい感覚を味わいました。
近年のクローズやハイローの流れなんでしょうか。コンパクトで嵐のようなスピード。
瞬きも忘れてます。

まひろのパラメータ全振りの格闘スキルがすごい。マジで”殺す”しかないんだなぁと。
恐ろしさとともに若干の悲しみが……

だって全然退かないんですもんね、彼女。攻める殺しに偏ってる。守りも覚えてくれ〜〜

ラストの逆転のロジックもよかった。
銃に頼りに行くと思いますよな。
あの嵐の中でもお互い計算しながら殺し合ってるのが素晴らしい。
そして弾切れても全然動じないリロード。シビれました。めっちゃカッコいい。

男のほうの蹴りフェイントでスパルタンXの時のジャッキーを思い出しました。
新しさの中でも色んな「もしかしてこれって」が見えて、アクション愛を感じて何故だか嬉しくなりました。

方々で語られてますが、日本のアクションシーンを引っ張っていくのがこのメンバーなんでしょうか。ますます注目していきたい。

*****
まさしく「現代の」映画だな、という印象。

コミュ障人見知りの若者たち、安いジェンダー論を振りかざすイカれた悪役、SNSに対する意見、裏稼業とはいえ軽すぎる死生観、アクションの質感、ギャグの鮮度とか。

過去の映画の歴史も含めて様々な積み重ねの末、今だから作れた作品なのかなぁ。なんて。

過去作も全部観たくなりました。

*****
色々ありすぎて全然書き切れない〜〜

ゆるゆるの空気からの構えた瞬間の空気のピリッとしまる感じ。病みつきになりそう。
ちさとの銃の扱い方も堂に入っていてすごくよかった。

やっぱり二人のキャラが一番好きでしたがどいつもこいつも濃ゆくて最高です。

拡めたい!情報シャットアウトしてたのでこれから他の方の感想とかも漁ります。

なんとも良い映画でした。