観劇・感想

観劇感想:78-spirit短編戯曲2作品同時上演「日常の記録、伸び縮みする天井」「偽りのない町」

会場:SRギャラリー
チケット料金:2.600円

公演の説明
2021年新たに発足した演劇団体、「78-spirit」の第一回企画。代表、演出は福岡で活躍する手島曜氏。
脚本提供は川津羊太郎・宮園瑠衣子の両名。キャストは福岡の様々な団体から若手女優を起用している。

一本目「日常の記録、伸び縮みする天井」
作:川津羊太郎 演出:手島曜
上演時間:約30分
あらすじ
暗闇に、血豆のような、赤い点が浮かぶ。それはビデオカメラの録画ランプ。
女のけだるい身体やら仕草やら会話やらを記録しつづけるビデオカメラ。
そのレンズに映りこむのは、まどろみにたゆたうような、彼女らの”日常の記録”。
キャスト
桜愛美 古賀覇月 郡谷奈穂

以下:雑感

よかったです。

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会場は大名にあるアートギャラリー、“SRギャラリー”
舞台はおおよそ4畳半くらいのスペース。白壁に囲まれて冷たそうな印象。
カミ手奥にドアがあってそこが出ハケ口になっている。
ドアの前に白い直径10センチくらいのポールが立っている。
客席は20~25席くらい。満席だったかな?

真ん中にソファ。クッション、タオルケット。カミ手前の丸椅子にハンディカメラが一つ。舞台を撮り続けてる。
奥の壁にその記録の一部が投影されている。

*****
主人公の女性は自室での自分の日常をハンディカメラで記録し続けている。
ある日、天井と自分との距離が”遠く”感じられた。不安がった彼女は友人の「友子」に電話する。
ホントに遠くなったのか、ビデオカメラを確認すればいいと友子は言うが、彼女は「これは撮る専用だから」と断る。
そして、このビデオカメラの持ち主だったかつてのルームメイトについて語り始める。

*****
「ガスライティング」食らわされてる気分。妄想癖?虚言癖?のある一人の女の日常の記録。
妄想と現実のシャッフルする感覚が新鮮でおぞましく、不思議と心地よい。

どっちともとれるしどっちとも言えない。ふわふわした感触がよく表現されていたなと思います。

不思議な感覚になる30分でした。

謎の中途半端なヌード(生脱ぎ?)はわからなかったな。どんな効果があったんだろうか。
日常感の補強?

キャストさんも三者三様魅力のある俳優さんたちでした。

二本目「偽りのない町」
作:宮園瑠衣子 演出:手島曜
上演時間:約60分
あらすじ
ある夏の日の夕刻。
マンションの自治会室に集められた女たち。
その開かない窓の向こうでは既にある作業は始まっていた。
しかしなかなかやって来ない指示を女たちは静かに待っている・・・
他愛ない話をしながらも。
キャスト
岸田麻佑 月沢友理香 松村来夢

以下:雑感

苦手なテイスト。キャラクターだけで共有してることをコネコネこね回して全然伝わらなかった。
俳優さんもイントネーションとか微妙に拙いし、正直ちょっとツラい時間でした。

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舞台は一本目のソファーなどは全て片付けて、丸椅子が8脚くらいでてきた。
舞台上に円形に配置。形には特に意味はない。

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夏祭りを前日に控えたとある団地(?)での一幕。
女性二人が話している。どうやらAさん(岸田麻佑さん)の旦那さんとBさん(松村来夢さん)が不倫関係にあって、それを言外に責め立ててる感じ。

そこにもう一人女性・Cさん(月沢友理科香さん)がくる。二人の不倫とかは知らないようだ。
Bさんがいる間はCさんのくしゃみが止まらない。

祭りの準備を進めながら、噂と本音と建て前をババ抜きのように出したり引っ込めたりしながら会話は進んでいく。

※キャラクター名は忘れてしまった。

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雰囲気は好きでした。

距離もあってか、俳優さんたちの「目」の芝居が印象に残っている。
それぞれ表面を取り繕いながらも裏で舌を出し合っている感じがハラハラ見れました。

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オチ。

謎にくしゃみを繰り返していたCさんがなんでくしゃみが止まらなかったかというと、
Cさんは「動物アレルギー」で(なんの?)その部屋にはAさんの旦那を寝取った「泥棒猫」のBさんがいたから。

駄洒落やん!!

このじっとりした空気の中でそんな落語オチみたいなもの持ってこられても反応に困る。
しかも火サスのクライマックスくらいの熱量で「この泥棒猫!!」「猫は飼えないの!いちゃいけないのよ!!」と吠えるわけだが、これは笑っていいところ?

シリアスな笑いを狙ったのなら大成功でしたがただただ困惑してしまった。
階下ではなにか事件が起きてたようですが全然印象に残っていない。

“偽りのない”っていうのはなんのことなんだろう。よくわからないまま幕が降りてしまった。

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この企画としては、嘘で出来た一本目と「偽りのない」2本目で、嘘と真の相反するテーマで作っていたのかな?
2本目のテーマは私の主観では読み取れず、全体としての軸もふんわりしてしまった印象。

また、これは個人的な好みの問題だが、
閉幕直後にキャストが切り替えてにこやかに宣伝を始めるのも嫌だったな。
冒頭演出の手島曜さんが言っていたように、繊細な空気の芝居。繊細に締めて欲しかった気もします。

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旗揚げて早速次回公演も決まっているようです。
勢いをつけようという気合を感じます。

次回も観に行きます〜〜。